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不思議な展開で先の読めぬ物語世界が綴られる。作者の頭の中はどうなっているのだろう?
見捨てられた醜怪な王子にして稀代の魔術師が、憎しみ蔑みつつも焦がれ愛した蛇の魔人に1000年掛けて復讐する話。白く生まれたエチオピアの少年が、育ての一族に認められたいが為、また復讐せんが為魔術師となり、野望を抱く話。忘れられた王家の正当な継承者が、一目惚れだけを理由に王座を奪還せんとする話。この三人のエピソードが、1000年の時に跨って語られる、またその時点の状況(ナポレオンに侵略されつつあるエジプト、マムルーク朝終焉の様子)もまた物語の一部である。奴隷は主人を騙し、語り手は聞き手を騙し、そしてまた著者は読者を騙す……。
一冊の本を読み終え、その内容を全てその身に叩き込んだならば、読者はその本と一体となる。その本そのものになる。なんと魅力的なアイデアだろう。しかし、その書物の名前は「災厄の書」。夜の種族によって語られたその物語……読み終えた今、私は一体何者であるのだろうか。
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夜の種族ズームルットが語る、官能と破滅のアラビアンナイト。魔術師、アルビノ、盗賊の息子。三人の主人公がそれぞれの運命に翻弄されやがて邂逅していく・・・。聞き手のアイユーブが果てに見たものとは・・・?
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読むものを狂気に導くという一冊の本。
それは、迫りくるナポレオン艦隊への
最後の武器となり得るのか?
一冊で二度美味しい。
帯の紹介文は、京極夏彦と桐野夏生。
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面白かった。
無署名の英語版からの翻訳である、という設定のために訳注が付いていますが、本文に対する介入具合が中途半端な気がするので、「粉飾的な日本語化」に徹するか、それとももっと大胆に著者が介入する仕掛けを作っても良かったのではとも思います。
ミロラド・パヴィチの『ハザール事典』を楽しんだ方にはこちらもよろしいかと。
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太田さんオススメの本。
「災厄の書」。それを読んだものは、書物の魔力に囚われ(書物と「特別な関係」になり)、食べることも眠ることもせず物語を読んでしまい、やがてその身を滅ぼす。
そんな前提をして語られる「災厄の書」、その物語。1夜2夜3夜、、、と読み進めるうちに、ページをめくるペースは速まり、一度に読む量は増え、私は本当に食事も睡眠も忘れてしまうところだった。
最高のファンタジーがそこにはあった。
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この本を端緒に古川世界に惹かれてしまうのだ。イスラームの世界って、なんか魅かれる。大著にして名著。でもまだ初版本だ。こういう本が売れてほしい。
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ミステリにするかファンタジーにするか迷ったのだけど、日本推理作家協会賞受賞作だし、結末はなるほどそうだな。な、終わり方だしで、ミステリに入れてみた。
ただし、はっきり言って”推理小説”を期待して読んだら肩透かしに合う。
どこがどう推理作家協会賞なのかは、読み出してすぐに判ってしまうものの、妙に無垢でそれゆえにむしろ貴族的とも感じられる淫猥さ満載のファンタジー部分と、怒涛のごとく歴史の波に飲み込まれようとしている13世紀のエジプトを舞台とした歴史小説部分の対比が非常に面白かった。amazonのレビューを読んでみると評価がはっきり分かれている所も面白い。
日本SF大賞受賞作でもあるらしい。
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語られるのは、存在しない物語。13世紀エジプトを舞台とした奇書の登場!
聴きたい者の前に、物語は姿を見せる。ナポレオンのエジプト侵攻をくい止めるため、
奴隷アイユーブが探しだした「災厄の書」。そして、物語が現実を浸食し始める−−
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語られるのは、存在しない物語。13世紀エジプトを舞台とした奇書の登場!
聴きたい者の前に、物語は姿を見せる。ナポレオンのエジプト侵攻をくい止めるため、奴隷アイユーブが探しだした「災厄の書」。そして、物語が現実を浸食し始める--。
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●図書館で一度お借り上げするも、あまりのクソ忙しさに読んでる途中で挫折し、あらためて挫折地点から読み直したと言う私にしてはめずらしい経緯を辿った本。
こんなに面白いのに、途中で放り出すなんて、当時はそれほど忙しかったったことか??
ともかく、この小説のスゴくておステキなところは、地下迷宮の描写。
めくるめくとか絢爛豪華とか、ああもうそないな陳腐な語句じゃみじんこほども表現できまへーん!! 体言止めと反復を多用した文章も、抜群の幻惑効果をもたらしていると言えるでしょう。
●そして忘れちゃいかん美形主人公の二人! サフィアーンとファラー!! ここ数年バカ明るい主人公を好む私といたしましては、サフィアーン派なんでございますが、ファラーもいいっすよっ。
まさか、そんなオチになろうとは・・・没想到。●クーラーの効いた快適な部屋で、冷珈琲などを用意しつつ、時間を気にせずにダラダラと読むのが吉。
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アラブ社会に攻め込んできたナポレオン、圧倒的戦力差、それに対抗すべく一冊の書物が紡がれた。人間を狂わせるその奇書―その全容を古川日出男が綴る。面白くないわけがない。
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読み終わった後、「読んだどー!」と心の内で叫んだ。こんなに分厚い本を読んだのは、とても久しぶり…加えて、そもそも海外文学が大の苦手で、現代日本が舞台の小説ばかり読み耽っていた自分にとって、この1冊はかなりのチャレンジ本でした。しかし、いろんな意味で面白い本だった…こんなに集中して読書したのは、久しぶり。途中で何回も、ものすごく物語に引き込まれるというか、入り込んでしまう「ヤマ」のようなものを体験しました。物語の場景もしくは情景が幾度も目に浮かんだ。美しい青少年達がたくさん活躍、という点も飽きずに読めたポイントの1つかもしれない…。
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4月11日読了。2003年の「このミステリーはすごい!」12位の作品。ナポレオンの時代のアラビアを舞台(?)にした、夢幻に彩られた夜の語り手たちの物語。これは面白い!著者の他の作品ではクセが強すぎると感じた語り口も、精霊と魔法・鬼神と美女が絢爛乱舞する、日本的なものとは程遠いこの世界観にマッチしている。読むものに現実感を失わせる「災厄の書」が、存在する・ということ自体が虚偽。物語の舞台も虚偽?物語の主人公たちも虚実の狭間に消え。さてこの書物を読む私は・・・?
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めくるめく、物語の渦に巻き込まれて溺れる快感を堪能。
今にもナポレオンが侵攻して来ようとしているエジプト・カイロで、この最強の侵略者を退けるために「数々の有力者たちがその面白さゆえに読んでいるうちに身を滅ぼした」と伝えられる伝説の書「厄災の書」を甦らせ献上するという計画が立てられ、その物語を語り継ぐ語り部とそれを書き留める筆記者とのやり取り・現世のターンと、3人の主人公たちの物語のターンを交互に読ませる形式を取っています。これが蜘蛛の巣のように読者を絡め取るシェヘラザード。読んでいるうちに、筆記者と一緒に物語の続きを渇望する自分に気付きますがこの渇きがまた気持ちイイ。小説でなく「物語」にどっぷりになれる気持ちよさを味わえる一冊です。
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一言で言って、壮大かつ娯楽性に富んだグレイト・クロニクル。
読み終えた後に、“一大スペクタクル映画を観た時のような”などといった修辞句で飾られる名作は多いと思うが、そんな表現すらも届かないと感じられた一冊。
公営放送の大河ドラマもその冠名の重みに耐え切れずに裸足で逃げ出すのではないかと思われる巨大な流れに乗ったストーリーはもちろん、何と言ってもその文体がとても流麗かつ詩的。
著者の常人離れした鋭敏な言語感覚をこれでもかと総身に感じることができる。
中世のイスラム世界という、我々21世紀に生きる日本人にとっては決して身近とは言えない時空を舞台としていながら、ズームルッド、アイユーブ、ファラー、サフィアーン、アーダム…といった、まさに血と肉を有し目の前で発声している姿がありありと脳裏に思い浮かぶかのごときリアルでヴィヴィッドな登場人物たちの息吹によって、それは十二分に鮮やかな色彩を持った仮想現実として我々のそばにある。
単行本の帯に記された「推薦はしません。感謝と、賛辞をこの本に-。」という京極夏彦氏の言葉が読後にはとてつもない実感を持つことに気が付く。