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大量殺戮兵器を持った狂信者たち ニューテロリズムの衝撃 みんなのレビュー
- ウォルター・ラカー (著), 帆足 真理子 (訳)
- 税込価格:2,090円(19pt)
- 出版社:朝日新聞社
- 発行年月:2002.2
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紙の本
テロリストが核兵器や細菌兵器を持つ日の恐怖
2002/04/09 22:15
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投稿者:藤崎康 - この投稿者のレビュー一覧を見る
テロルとは、大辞林によれば、「あらゆる暴力的手段を行使し、またその脅威に訴えることによって、政治的に対立するものを威嚇すること」である。いきおい、科学技術時代のこんにち、テロル(ニューテロリズム)が行使する「あらゆる暴力的手段」には、本書のメイン・テーマである「大量殺戮兵器」、すなわち各種の高性能爆弾や、生物化学兵器、そして最悪の可能性としては、核兵器が含まれることになる。しかし、本書が巷にあふれた兵器の分析本や危機管理本と一線を画すのは、著者のウォルター・ラカーの視線が、テロリストたちの心理的動機や、「劇場テロ」などと呼ばれもする現代のテロのメディア性にまで、およんでいる点だ。
たとえばラカーによれば、宗教上の狂信には精神障害、とくにパラノイアの要素が大きいという。むろん、パラノイアの多くはテロリストではないが、テロリストはおしなべて被害妄想の持主であり、彼らは姿の見えない悪魔の軍隊と戦っており、それに関わるすべての人間を滅ぼさなければならないと考えている──このラカーの主張は、9・11事件の首謀者や実行犯にそのまま当てはまるとは考えにくい。が、オウムのサリン・テロや「爆弾魔」ユナ・ボマーの犯行や、あるいは白人至上主義者ティモシイ・マクベイによるオクラホマシティ連邦ビル爆破などを解明する上では、有効な仮説となるだろう。
じじつラカーは、アメリカの極右グループが大量殺戮兵器を獲得し使用する可能性は増大している、と警告しつつ、次の例を上げる。……1995年、ミネソタの「パトリオット」がリシンを備蓄していたとして逮捕され、さらに、アイダホの「アーリア民族軍」のシンパは腺ペスト菌を入手しようとしたし、アーカンソーの住民は白人至上主義者、生存主義者(サヴァイバー)の集団と連携してカナダからリシンを密輸入したため告発された……。それにしても、「劣等者」を滅ぼすべきだという、彼らの選民的・終末論的理想がキリスト教らしくなく、エッダ(ラグナレク)などの北欧神話や、「ニーベルングの指輪」にまで遡及しうるというのは、おもしろい。(ラカーは触れていないが、米炭そ菌事件の犯人が極右だという報道の真偽はどうなったのだろう?)
またラカーが、巨大な破壊願望にとり憑かれた妄想狂の原型を、過去のSF小説に見ているのは興味深い。ラカーによれば、ジュール・ベルヌの『インド王妃の遺産』でドイツ人科学者がつくりだしたのは、人工25万の架空都市「フランスヴィル」の全住民を殺すに足るガスを満たした砲弾だった。そして、二十世紀による兵器技術の発達は、かつてのSF作家の想像力に追いつき、追い越してしまったのである。ちなみに、敵に対して毒ガスを使用するという発想は、ロンドンの下院で毒ガスを散布しようとした、1870年代のフェニアン団の例が最初だという。まったく、人間の観念のエネルギーはおそろしい。 (bk1ブックナビゲーター:藤崎康/現代文化論・映画批評 2002.04.10)
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