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バリ島芸術をつくった男 ヴァルター・シュピースの魔術的人生 みんなのレビュー

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8 件中 1 件~ 8 件を表示

紙の本

異邦人・芸術家・民族学者という立場を超えて

2003/02/26 21:01

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ヲナキ - この投稿者のレビュー一覧を見る

 ヴァルター・シュピースというドイツ人画家の生涯にすっかり魅せられてしまいました。評伝を読んで興奮をおぼえたのは久しぶりのことです。それは、彼がケチャ・ダンスというバリ古来の伝統芸能と思われがちな文化を創出した立役者であったという業績や、数々の著名な文化人をもてなしたホスピタリティ、日本軍の爆撃によって命を落としたという悲劇的なラストのせいばかりではなく、彼が<いま>を味わい尽くした人間だからであり、バリという土地に心酔したその思い入れの深さに心打たれたのです。もしこんなに素晴らしい本が未読であるなら勿体ない。バリ島へ旅行される方にとっては、ガイドブック以前に読んでおくべき必読書です。

 シュピースが抱くこの島への深い愛情は、ミード&ベイトソン夫婦と次第に決別していくエピソードに如実に表れている。民族学者たちは、自らの存在が調査・研究対象に影響を与えぬよう現地民とのプライベートな接触を極力避けようとする。そんな科学者としての傲慢でクールな身振りが鼻についたのかもしれない。対照的に、シュピースはバリの人々に西洋絵画の技法を教えたり、伝統舞踊に手を加えていくなど、自分が居住する社会に深くコミットしていくことで生じる有機的反応を楽しむ芸術家としての立場に終始する(とはいえ、彼が遺した写真や手紙から察するに卓越した民族学者としての技量も持ち合わせていたに違いない)。異邦人としてその半生をバリ島に捧げ、地霊と互いに共振しあいながら重層的な文化を再生成していったシュピースの天晴れな身の振り方に、羨望にも近い賞賛の念がこみあげてくる。

 彼はバリ島というエネルギッシュな自然のなかに自らの魂を合一化させる手段(触媒)として絵を画いていたのではないかと思う。バリ人にとっての祝祭・舞踏がそうであるように。決して後世に残すための記録として絵を画いていたのではないはずだ(現にシュピースの絵はほとんど現存していないそうだ)。<生>のダイナミズムへ参与するためのアクションとして絵画をはじめとする創作活動があったのだろう。伊藤氏の精緻な叙述と隙のない分析を読んでしまった後では、その考察の痕跡をなぞるような仕方でしか感想を述べることができないけれど、稀有な芸術家の存在を詳らかにしてくれた本書に対する讃辞として、せめてもここに拙劣な書評を残しておくことにしました。

 本文中にも参照されているヴィキィ・バウムの小説『バリ島物語』をあわせて読むと一層楽しめること請け合い。ストーリーそのものも面白いが、なによりバリ人気質を理解する一助となるはず。

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紙の本

バリ島芸術への素敵なオマージュ

2002/02/14 12:59

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:小田中直樹 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 中世ヨーロッパ絵画の傑作の誉れ高い「ベリー公のいとも豪華なる祈祷書」。たしか税関吏で、素人画家と呼ばれたアンリ・ルソーの絵。仏教美術の到達点を示す曼荼羅。そして、この本の本当の主人公であるバリ島が育んだ絵画。ついでに、突然タヒチに行ってしまったポール・ゴーギャンの絵を付け加えてもいい。僕は美術の素人だけど、こういった、多分「細密画」って呼ばれる類いの絵からは、どこか共通した印象を受ける。そう、細部はリアルだけど、全体を見るとどこか現実離れしてるのだ。そして、構図は素人っぽいけど、なぜか奇妙な迫力で迫ってくるのだ。どうしてだろうか。

 話はちょっと変わるけど、一時バリ島がブームになって、地方空港からも直行便が出てたことがある。アジア人のくせにアジアに全く関心がない僕は、バリ島はおろかインドネシアにも行く気はしなかったけど、イスラーム文化圏のインドネシアでバリ島だけはヒンドゥー文化が残ってるとか、ケチャっていう迫力満点の伝統舞踊が残ってるとかってことを耳学問した。それにしても、何であんなブームになったんだろうか。

 そんなことを考えながら、僕はこの本を読んだ。この本の著者の伊藤さんは、バリ島文化の紹介と発展に尽くしたドイツ人芸術家シュピーツの生涯をたどりながら、彼とバリ島の出会いが生んだ「双方向的な関係のネットワーク」(二〇二頁)を共感を込めて描き出し、「創造と陶酔の新しい次元を考える」(一四頁)ことを試みた。

 画家だったシュピーツは、人工的な都市文明に飽き足らず、一九二三年、生命の衝動や自然回帰の機会を求めてインドネシアに渡った。そして、「アガマ・ヒンズー」(二〇頁)と呼ばれる宇宙観や宗教観をたたえたバリ島芸術に出会った。バリ島から「新しい生命の流動性」(四三頁)を得たシュピーツの創作活動は、どんな展開をみせたか。シュピーツがもたらしたヨーロッパ芸術の息吹に対して、バリ島芸術はどのように反応したか。両者はどんなビジョンを共有し、どんな文化を共創造したか。そんな問題が論じられる。

 僕にとって、この本のメリットは次の二点。

 第一、バリ絵画の特徴は、画家と対象が「あっち」と「こっち」に分かれてないっていう、「反パノラマ的知覚」(九六頁)にあるって示したこと。最初に書いたように「細密画」から僕が受ける奇妙な印象は、きっとこの特徴から来てるんだろう。さらに、伊藤さんによれば、この特徴の背景には、例の「アガマ・ヒンズー」があるらしい。ということは、バリ島芸術だけじゃなくて、同じような絵画を持つ仏教文化圏や中世ヨーロッパにも、なにか僕の想像もつかない宇宙観とか宗教観があったのかもしれない。この本からは、こんなふうに色々と想像を膨らませることができる。

 第二、伝統舞踊と思われてるケチャがじつは七〇年の歴史しかないことからわかるように、伝統は創造され、再創造されるものだってことを具体的に解き明かしたこと。この問題の理論的な考察としてはホブズボーム他『創られた伝統』(紀伊國屋書店)って名著があるけど、やっぱり具体的なほうがわかりやすい。

 不満を一つ。バリ島の人々は儀礼や祝祭にものすごくお金をかけるけど、彼らはどうやって生活してるんだろうか。この点を考えるヒントとして、この本にはバリ島を植民地化したオランダがバリ島を観光地として売り出したって指摘があるけど、それ以上の議論がないのが残念。ここだけ見ると、バリ島は一種のテーマパークだって印象を受けるけど、そんなものなんだろうか。バリ島では宗教と芸術と生活は一体化してるそうだから、経済とか日常生活について、もう少し論じる必要があるだろう。[ご意見はここに]

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2005/08/15 17:01

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2007/02/21 02:00

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