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みんなのレビュー15件

みんなの評価4.2

評価内訳

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  • 星 1 (0件)
15 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

生きるのと死ぬのとではどちらがたやすいか

2003/08/03 09:02

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:星落秋風五丈原 - この投稿者のレビュー一覧を見る

宮城谷昌光氏の小説に「月下の彦士」がある。
有力貴族が、時の帝に怖れられ、無実の罪で一族皆殺しの危機に見舞われる。貴族と交流していた、彼とは血縁関係にない二人の男が、
たった一人残された彼の息子を守ろうとする。その時、一方がもう一方に言う。
「孤児を守り立てる(生きる)のと、死ぬのとではどちらがたやすい」。
すると片方が答える。
「死ぬ方がたやすい。孤児を守り立てるほうが難しいに決まっている」。
「死んだ彼とのつきあいの長さから、あなたには難しい方を引き受けてもらう」と問うた側は言い、果たして彼は、偽者の赤ん坊を抱き、自分と共に殺させることで、本当の跡継ぎの命を救う。
生き延びた方は、その真実を信頼した人以外誰にも告げず、
ある人達には裏切り者と思われても、それをじっと耐え、子供を成人まで育て抜く。
この短篇もまた、生き抜く事の難しさを描いた作品だと思う。

確かに、いつもいつも「生きていく方がたやすい」と言い切れる事情ばかりではない。過ぎてみれば、「生きてきた」の一言で片づけられる人生でも、そこには本当に切り立った崖も、底なし沼も、迷路もある。
それなのに、なぜ人間は、生きる事を選ぶのか。
藩衰亡を防ぐため追腹を禁じられた石田又右衛門の、来し方行く末を辿る事によって、この問いへの答えが淡々と書かれる。
又右衛門に対して、人間達は周囲の事情に左右され、態度を変えるが、ただ一つ、変わらないものがある。自然である。
表題作では、菖蒲。「安穏河原」では、川。そして「早梅記」では、梅。変わらぬ営みを続ける自然と、変わり続ける人間の対比。節目節目に現れ、人間達を見つめる自然の眼差しは、神の視点なのだろうか。
いずれも現在→過去→現在に映る視点で描かれた短篇を読んで、ふとそんな事を考えた。

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紙の本

支えになるもの

2002/09/04 20:32

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:岸本真澄 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 順調だった人生が崩れ、不幸の波が押し寄せる。けれども最後に救いがあり、味わい深い。久しぶりに読後の余韻に浸った。

 第127回直木賞に選ばれた乙川優三郎(おとかわ・ゆうざぶろう)氏の「生きる」(文芸春秋刊)。3つの時代小説が収められているが、その表題作を紹介したい。

 藩主の恩に報いるために「追腹(おいばら)」(=殉死)をせねばと覚悟していた男が、家老と密約を結んだために思いとどまる。事情を知らない人々にさげすまれ、その影響は家族にも及び、息子や娘の夫が自殺してしまう。体が弱かった妻も苦労の果てに亡くなる。娘は夫を失ったショックで気が触れてしまい、行方不明になる。

 男は愚直なまでに密約を守るが、一方で次々に見舞われる不幸や周囲からの誹謗(ひぼう)中傷におののく。強く生きてゆく自信や気概が失せ、ついには病に伏せる。

 〈どうせ恥辱に塗れたまま死ぬのだから、恨みつらみを吐き出してやろう〉。男は密約を迫った家老に宛てて手紙を書き始める。が、そうするうちに見えてきたのは自分の弱さだった。〈何もせず、ただ恐れ立ち尽くし、嵐が去るのを待っていただけではないか〉。男は尊厳を取り戻し、胸を張って生きるようになる。しかしその後も、男に対する中傷はやまなかった…。

 物語は感動的な結末を迎える。その始まりと終わりを菖蒲(あやめ)が暗示する。

 菖蒲は男の家で、幸運をもたらす花とされていた。その生育が例年になく遅れていることに、男は不吉な予感を持つ。果たして悲劇が始まる。結末近くでは、雨上がりの庭で、男が菖蒲を眺める。

 メリハリに満ちているわけではない。1人の男の生きざまが淡々と描かれている。決して格好良くはない。それがかえって、さもありなんと思わせる。

 現代に追腹はないけれど、理不尽と思えることに耐えなければならない局面はある。そんなとき、人は何を支えに生きてゆけばよいのか。示唆に富む秀作である。

※レビュー筆者のメールマガジンがあります。関心を持った方はバックナンバーをご覧ください↓
http://www.melma.com/mag/74/m00044374

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紙の本

好きな作家の新刊とはいえ、このタイトルにはやや照れた。しかし、苦境を生きる現代人にとって、なつかしき日本的経営を貫いた精神に通ずるこの時代小説の潔さは見逃せない。

2002/03/22 13:00

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:中村びわ(JPIC読書アドバイザー) - この投稿者のレビュー一覧を見る

 コストパフォーマンスの高い本でもあると思う。長い歳月にわたり練られた構想のもと、「畢生の大作」と力を注がれ書かれた小説が最近目立つ。緻密なプロットや多彩な道具立て、旺盛な取材に基づく情報に洗われたあとで、結局ここに書かれた人の生き様を述べるのに、こうまでページを尽くす必要はあるか、この定価設定は? …と思わせられることもある。
 1200円ぐらいが妥当と思っていた単行本は、まあ1500円ぐらいならばと枠を押し上げられ、2000円〜3000円が当たり前になってきた。「畢生の買物」という感じで身がぼろぼろになる。当然のこと、消費行動を見直すことになる。消費不況の根は深い。それに比べると、この『生きる』の税別1286円、234ページの満足度は相当に高いという気がする。

 消費不況を考えるにつけ、グローバルスタンダードに踊らされる前の「日本的経営」をなつかしく思い出す。経営の主体は、利益追求の企業のみに留まらない。内閣や党、学校に病院、行政単位などとありとあらゆる組織を覆っていた日本的なるもののうち、悪しき因習とともに好ましい特徴も、この社会は一緒に葬ってしまったという気がしてならない。「思いやり」「助け合い」が損なこと、ださいことになってしまい、それが組織のねばりをなくしたという分析も可能ではないかと思う。

 甘いノスタルジアと感じる人もいると思うが、時代小説のなかに描かれる人の道や人情といったものは、今や現代人という故郷喪失者たちにとって、いつか戻りたい故郷であり、いつか辿り着きたい約束の土地であると思う。乙川さんの書かれる小説には、説教臭がなくおめでたさもなく、上記のような問題意識が根にしっかり張っていることを意識させられ、尚且つあり余る優しさがある。それが今回は、「生きる」という思い切った言葉に結晶せられた。

 3篇の小説が収められているが、いずれも武家の心得が強く意識されている。男も女も、年寄りも親も子どもも、ここに出てくる人たちは皆、武家社会に普遍的であった倫理に縛られ、疑問を感じることもあるが、ときにそれを遵守することに喜びを見いだし、まっとうする自分や家族を誇りに思ったりもするのである。「美学」という気負ったイメージではなく、肌になじんだ着物のように、登場人物たちはさらりこの倫理観をまとっている。

 表題作「生きる」は、主君の死に先立ち、家老から追腹を禁じられた年配の寵臣の苦悩を描く。当然のこととして殉死を腹に決めていた又右衛門は、忠義ゆえ跡を追う者が多くては藩が立ち行かない、死んだつもりで生きてくれ。追腹は禁制にする…という家老の命に従うのであるが、いざ主君が亡くなると、生き恥をさらしているという白い眼で見られる。若い士官たちへの説得も及ばず、あろうことか娘婿がまず殉死したため娘から義絶を言い渡され、続いて跡取り息子にも先立たれて針のむしろ状態になる。
 「安穏河原」は、遊女になった武家の娘と、娘を売った父の両方と親しくなった浪人が目にした父娘の武家としての覚悟を描く。「早梅記」は、出世のために添い遂げることができなかった下士の娘の潔い身の引き方をなつかしむ引退した家老の話。
 何が足りなくなってしまったかが沁みるようにわかる作品集。

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2010/03/04 08:32

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2012/04/22 15:24

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2013/03/26 18:00

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2013/05/14 13:34

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2013/08/24 17:31

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2015/05/19 22:47

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2015/10/18 22:40

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2016/04/16 17:50

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2018/05/31 18:19

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2019/01/15 01:20

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