私にとってはルーツにも当たる一冊。
2004/12/19 22:22
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投稿者:Yumikoit - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本とのもともとの出会いは、小学1年生の頃だかにさかのぼる。当時は「家なき少女」というタイトルであったから、本書のあとがきから推察するに須藤鐘一訳のものであったのかもしれない。
翌年か翌々年にやっぱり出会った訳が、「家なき娘」恐らくは津田穣氏の訳のものであっただろう。
いずれも親が古本屋で十把ひとからげに子供向けに用意した本の中にあったものだったようだがいずれも既に手元にない。
こちらは、前訳に比べて 原文にもっと忠実に、そしてもう少し年長向けに訳されてあったと思う。
私が気に入っていたのはこちらの訳で、何度も読み返した。
その後、アニメ化されて「ペリーヌ物語」として放映された。こちらは見た人も多いであろう。
今回購入して読んだ本書は、「完訳版」とタイトルに並べて書いてある。
面白いのは先2作の訳とは違って、冒頭からまったく「ペリーヌがパンダヴォアーヌの孫」という部分はまったく触れられていず、ペリーヌは「フランス北部の街にいる親戚の家に行こうとしている」だけである。更に興味深いのは、ペリーヌがパンダヴォアーヌの孫とわかった後のシーンでもなぜか?ペリーヌが自分の本当の名前がペリーヌだと告白する、あるいはそのことを調査報告したファブリによって訂正されるシーンがまったくないままなのである。なぜだっ?
全体としてはそれぞれの版の訳やアニメ版などと比べてキャラクターの性格の違いや描写などが少しずつ違っていて面白かった。
ファブリとの関係はこの版が一番クールで、その分無理はない。タルエルや二人の甥たちはより攻撃的で、特にタルエルはエドモンが帰りにくくなるような工作すらしていたと示唆するくだりすらある。
ペリーヌの父エドモンにしても完全無欠の人物とはいえなさそうで、若い時に浪費と散財の末にパンダヴォアーヌを怒らせてインドに行かされた経緯などがあって「へぇ」とか思ってしまった。
心躍るストーリー
2002/04/01 15:34
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投稿者:Pasta - この投稿者のレビュー一覧を見る
親戚の家のある街についたペリーヌは、まず様子をみようと、工場に働きにでます。時代は産業の機械化が始まり、労働者にとってはなんの保障もない過酷な時代でした。
劣悪な宿の環境に、耐えかねたペリーヌは一人、森の小屋にこっそり住むことにしました。自然の中で、何もかも手作りの生活。その創意工夫は、貧しい生活にもかかわらず心躍ります。なんと靴まで自分で作ってしまうのですから。
そして、転機が訪れます。工場で、通訳の人が急に必要になり、英語が分かるペリーヌに白羽の矢が立つのです。ペリーヌの聡明さ、誠実さが人々の目に留まります。そしてそもそも何故ペリーヌは英語が使えるのか?
これ以上はどうぞ、本書をお読み下さい。
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孫であることを隠し、おじいさんの工場で働くペリーヌ。やがてフランス語と英語の両方を操れるペリーヌは、技師との通訳、手紙の翻訳などの仕事を任され、おじいさんからの信頼を得るようになりました。でも、でもおじいさんは、結婚を反対された為に出て行ってしまったペリーヌのお父さんを未だ許してはいないようで、それを考えるとペリーヌはどうしても自分が孫であることを打ち明けることをためらってしまうのでした。
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小さな小屋でのサバイバル生活が終わるので、ちょっと楽しみが薄れた。でも、すっかり少女を応援する気になっていたので、きちんとした終わりに導いてもらえてうれしい。後半は、人間関係を泳ぎ抜く、また別のサバイバル生活のような気もする。
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おじいさんが息子の葬儀に会社の人間が誰も来てくれなかったことに腹を立てて、自分も会社の人に病院なりきれいな集合住宅を作りたくないと主人公にもらしたら、主人公は他人が自分にしてくれなくても自分が人と同じことをしなくてもいい、自分が人に何かをしてほしかったら、まず自分が人に与えないといけないと諭したところは何事にも通じるものがあると思った。
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10歳未満のお子さんなら、アニメから入るのが自然かもしれません。
10歳くらいになるまで、アニメの家なき娘を見ていないのなら、文庫を先に読むのがお勧めです。
文庫を読んだ上で、なぜ、アニメでは、まとめてしまったかを考えるのもよいかもしれません。
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物語として面白いのはもちろんなんだけど、大人になって読み返すと細かい所まで面白い。工場での人間関係などが現代からみてもあるあるな人間達の思惑が錯綜している所。自分がその火の粉を被らず、自分の正しいと思うところを捨てずに乗り切るかという危機に瀕する所。前半の肉体的な苦痛とはまた違ったものに対してペリーヌが対処していくところが頼もしい。(正確には工場での絶対権力者の信頼を勝ち得たから乗り越えられたが)
そして雑学的な所ではジュートの色でものの良し悪しを判断している場面(インドといえばスパイスとか茶ではなくジュートというのも)、とてもいい先生が出てくるが体格が良くベローヌという名前のままだから都会での先生として売れず田舎に残ってるとか(女性を蔑視しているわけではなくて聡明で使命感のある女性として登場している)、その先生がペリーヌの賢さを綴りは未熟であるがペリーヌが泥炭地の説明をした時の洞察力、観察力に感嘆したこと等。所謂叩き上げで工場内の事柄は全て掌握していて、言葉は流暢で丁寧なタルエルが実は根本を押さえてないとか。流石啓蒙思想が盛んであったフランスの小説だからか、ペリーヌが成し遂げた功績として工場の福利厚生があるとか。
そして子供の時は幸福に本を閉じたけれど、ペリーヌの今後はまだ一波ふた波ありそうにも思えるのだった。ペリーヌの存在だけで大叔母達が黙っていられるのか、ペリーヌに相応しい夫たりえる人が現れるのかとかね。
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1978年のアニメ『ペリーヌ物語』原作の完訳版。フランス人を父に、インド人を母に持つ、聡明で強い意志を持つ少女が、苦難と悲運を乗り越えながら父の故郷を目指し、幸せをつかむまでの物語。
序盤のペリーヌに降りかかる不幸(母の死・貧困)は、『レ・ミゼラブル』のコゼットの境遇を彷彿とさせる。しかし、作者はペリーヌに鋼の意思と思慮深さを与え、逆境をものともしない逞しさで運命を切り開いていく少女に仕立て上げた。
読んでいて楽しいのは、不衛生で息苦しい女工の木賃宿を抜け出して、近くの沼沢地の小島でのサバイバル生活。手作りのエスパドリーユは誰か再現してほしい。
母の遺言「幸せになるんですよ」を実現するために、ペリーヌは一歩ずつ確実に、今ある状況に不平を漏らすことなく、目的に近づいていく。理不尽な言葉に何度も反論したい気持ちを呑み込むペリーヌには、身につまされるお勤め人の方も多いのではないだろうか。
物語は祖父の営む繊維会社で通訳として働くことになってからは、小気味よい展開に。しかし、思わぬ伏兵がペリーヌの前に立ちはだかる・・・!
最後は涙涙の大団円。巻末には訳者によるエクトール・マロ―の簡単な評伝、いくつか登場する馬車の図版、そして、訳者が尋ねたマロクールのモデルとなったフランス北西部のかつての繊維工業地帯の短い紀行文も添えられて、物語のイメージを膨らますのに一役買っている。
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(上巻感想の続き、ほとんどアニメ版との比較)
下巻はほとんどアニメと同じなのだけど原作はロザリーの父親がいなかったりファブリの役目が違ったり女性の家庭教師がかなり重要で、どれも本筋やテーマは変えてないけれどベローム先生はアニメにも出してほしかった。あとヴュルフランの誕生日のやって欲しかったなあ。
アニメではペリーヌがファブリさんと気が合いそうでいつか結婚するのでは?と思ったけれど原作でも描かれるのはペリーヌの少女期だけだった。とりあえず原作を読んでよかった。ほんとうにドラマチックな名作だと思う。
おじいさまの「しあわせに暮らそうね…家族で」という柔らかい言葉が好き。
それにくわえて解説もかなり興味深い内容で、作者のマロが入念な取材を繰り返し、ペリーヌをうみだしたことがわかって面白かった。そして訳者の二宮フサさんが撮ったモデルとなった工場と屋敷の写真!小さなモノクロだけれどアニメで描かれてた工場と屋敷そっくりで感激した。アニメ版好きなひとにもおすすめです。
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途中まで岩波文庫の旧字体で読んでいましたが断念し現代語訳で読み直し。現代語の方が文章がすいすい入ってきて純粋に物語を楽しめました。
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これは違う翻訳者、出版社でも読んでみたい。思慮深く、忍耐強く、そして分からない事は聞く。私には全てにおいてもっていない性格で、母親と孫娘を批判し会う必要もないと言われた時も辛抱強く、全否定するのではなくもしかしたらいい人かも。会えば考え方が変わるかもと周りの大人のへりくだる態度ではなくもしかしたら出ていけと言われるかも知れないのにちゃんと自分の意見を言えるのはすごい。そして自分の母親を悪く言っているし、もしかしたら自分が孫娘だと知ったら放り出されるのを承知で正しいと思える事をいう勇気と強さは多分何度読んでも感動すると思う。
書いていて手元にもっていたい一冊となってきた。