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紙の本
少年犯罪、死刑問題などアクチュアルなモティーフを織り込んだサスペンス
2002/04/26 22:15
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投稿者:里見孫壱 - この投稿者のレビュー一覧を見る
社会では暴力はマイナスのものとして捉えられている。それが、防衛のためであっても。ならば、暴力そのものはどこから来るのか。もちろん、人間の内なるものからだ。暴力を抱えた人間が構成する社会は、一個人に対して暴力を行使することもある。永瀬隼介の『デッドウォーター』は、まさに個人と社会の暴力に焦点をあてた小説である。
しかし、そうした現実を突きつけられると嫌な気分になってくる。正直なところ、この小説の中に出てくる、いかにも実際にありそうなエピソードには気が滅入った。
中国残留孤児の3世が組織するグループと、ヤクザとの覚醒剤取引、うだつがあがらないノンフィクション・ライターの家庭内不和……。
愉快な話ではない。では、見ざる聞かざるで、放っておいていいのか? それは、私たちが今まで見過ごしてきたものではないのか。目の前にある現実を、ないようなふりをして。その結果が今の日本社会に与えている影響は大きい。ノンフィクション・ライターとしても活躍している著者は、そのことに目を瞑っていられなかったのに違いない。
中国残留孤児3世の村越亮介はプロボクシングのチャンピオンを目指し、日夜練習とバイトに精を出す日々を送っている。ある日、残留孤児の不良少年グループ「ブラッディ・ドラゴン」のメンバーがバイト先の牛丼屋にやってきた。「ヘッドが会いたがっている」。ヘッドの正春は亮介の幼馴染みだった。亮介もかつては「ブラッディ・ドラゴン」のメンバーだったが、正春についていけなくなって辞めたのだ。
事件を追うことが専門のフリーライター加瀬は、死刑確定直前の殺人犯穂積と拘置所で面会する。穂積は未成年ながら、5人の女性を犯して殺していた。加瀬は穂積の内面を暴いたノンフィクションを出版して名を挙げようと野心を燃やしていた。
穂積が入っている拘置所に刑務官として勤めている白井は、死刑執行に立ち会うことに不安を覚えていた。先輩の刑務官の話を聞いたりもするが、心の中は晴れなかった。そして、ついにその日が廻ってくる。
社会の底辺で生きる者たちが織り成す物語──と思いきや、途中から、思いもよらない展開になっていく。その意外さに読者は驚くだろう。
登場人物たちが抱えている問題は、物語の最後に至っても、すべてがすっきりと解決されるわけではない。しかし、逆にそのことが、この世の中心にあるのはデッドウォーター(よどみ水)であることを証明している。 (bk1ブックナビゲーター:里見孫壱/ライター)
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