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鏡の国の孫悟空 西遊補 みんなのレビュー
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高い評価の役に立ったレビュー
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
2002/08/11 20:42
理知的な幻想文学
投稿者:ごんだぬき - この投稿者のレビュー一覧を見る
素晴らしい小説が翻訳された。原文は非常に難解で、種種雑多で博学な知識が所狭しと散りばめられている。それだけでも読み解くにはつらいのに、作者はわざと意図的に複雑な構造を作り上げている。あたかも「迷宮」のように。まるで、読者に「どうだ、俺の考えていることが全部分かるか」と謎かけをしているかの如き作品である。
それだけに、日本語訳がここまで読みやすく楽しく身近になるとは、正直想像できなかった。一読して驚愕した。初心者には優しく、普通に楽しめるように、またマニア?には納得のいくように、時にはニヤリとさせることのできる内容。
惜しむらくは東洋文庫だけに、もっと注釈を多くつけてほしかった。そうすれば、興味ある読者に対してもっともっと親切になったのではないだろうか。何気ない一文に見えるそこかしこに、深い洞察と博い知識が秘められているのだから、ぜひともそれらを注釈として紹介してほしかった。返す返すも残念である。
もし再版することがあれば、その辺り、考慮していただけないでしょうかね、平凡社さん?
低い評価の役に立ったレビュー
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
2002/05/29 18:15
孫悟空は鏡の国で何を見たか
投稿者:守屋淳 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書の著者は、筒井康隆氏の250年前の前世だったのではないか——
思わずそんなことを夢想してしまうような、東洋風ファンタジーの傑作だ。
主人公は、言わずと知れた孫悟空。『西遊記』をダイジェスト版などで読まれた方なら記憶にあるかもしれないが、三蔵法師一行が苦心惨憺して火焔山を通り過ぎた所から話は始まる。万里の長城や焚書坑儒で名高い秦の始皇帝が持っていた「駆山鐸」という鳴らすと山が崩れてしまう大きい鈴を、孫悟空が手に入れようと動き回るのが本書の骨子だが、話は一筋縄では進まない。フィリップ・K・ディックや筒井康隆氏のSFを思わせる仕掛けによって、孫悟空は過去や未来といった時空間を自在に飛びまわり、虞美人や西施、項羽、秦檜といった中国の歴史上の有名人たちと機知にあふれた会話をかわしたり、ドタバタ喜劇を繰り広げて行く。ただしこれらの人名は、日本人にとっては中国史の知識がないとチンプンカンプンの恐れが大きい。そこで、ここでは本書が無理なく読めるように、ポイントとなる歴史上の人名マメ知識を、以下箇条書きでご説明しておきたい。これさえ押さえておけば、このチャイニーズ・ファンタジー、なかなか楽しめます。
太上老君——老荘思想で有名な老子の別称。老子の思想の一部は、時代を経て民間思想と混じりあい、道教という宗教になった。そこで、老子は神様扱いされ、太上老君と呼ばれた。孫悟空が活躍する世界でも、神様の一人として登場。
虞美人——学生時代、漢文の授業で「四面楚歌」を習った方は多いかもしれないが、そこに出て来る項羽の愛姫。中国の代表的美人の一人。虞美人草の名前の由来でもある。
西施——やはり中国の代表的美人の一人。今から約二千五百年前の春秋時代、「臥薪嘗胆」の故事で有名な呉と越というライバル国同士の戦いがあった。そのとき、越が呉の王を骨抜きにするために送った美女。呉が滅んだ後、范蠡という人物に嫁いだという伝説もある。
項羽——始皇帝で有名な秦王朝が崩壊した後、劉邦と天下を争った武将。一時期、ライバルの劉邦を田舎に押し込めて天下を握り、「西楚の覇王」と名乗った。
秦檜——中国では、現在でも売国奴の代名詞となっている人物。中国の宋王朝は、異民族の金によって、長江以南まで押し込められた。これを南宋という。南宋では、金を武力で追い払い国土を取り戻そうとする者と、金と和解してひとまず平和を得ようという者に別れた。秦檜は後者の代表で講話を結ぼうとする。ところが、岳飛という将軍(中国では今でも国民的英雄)が思わぬ活躍を見せ、金軍を破竹の勢いで破って行く。岳飛の存在が金との講話には邪魔と見た秦檜は、無実の罪をでっちあげて岳飛を殺してしまった。 (守屋淳/著述・翻訳業)
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紙の本
理知的な幻想文学
2002/08/11 20:42
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投稿者:ごんだぬき - この投稿者のレビュー一覧を見る
素晴らしい小説が翻訳された。原文は非常に難解で、種種雑多で博学な知識が所狭しと散りばめられている。それだけでも読み解くにはつらいのに、作者はわざと意図的に複雑な構造を作り上げている。あたかも「迷宮」のように。まるで、読者に「どうだ、俺の考えていることが全部分かるか」と謎かけをしているかの如き作品である。
それだけに、日本語訳がここまで読みやすく楽しく身近になるとは、正直想像できなかった。一読して驚愕した。初心者には優しく、普通に楽しめるように、またマニア?には納得のいくように、時にはニヤリとさせることのできる内容。
惜しむらくは東洋文庫だけに、もっと注釈を多くつけてほしかった。そうすれば、興味ある読者に対してもっともっと親切になったのではないだろうか。何気ない一文に見えるそこかしこに、深い洞察と博い知識が秘められているのだから、ぜひともそれらを注釈として紹介してほしかった。返す返すも残念である。
もし再版することがあれば、その辺り、考慮していただけないでしょうかね、平凡社さん?
紙の本
孫悟空は鏡の国で何を見たか
2002/05/29 18:15
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投稿者:守屋淳 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書の著者は、筒井康隆氏の250年前の前世だったのではないか——
思わずそんなことを夢想してしまうような、東洋風ファンタジーの傑作だ。
主人公は、言わずと知れた孫悟空。『西遊記』をダイジェスト版などで読まれた方なら記憶にあるかもしれないが、三蔵法師一行が苦心惨憺して火焔山を通り過ぎた所から話は始まる。万里の長城や焚書坑儒で名高い秦の始皇帝が持っていた「駆山鐸」という鳴らすと山が崩れてしまう大きい鈴を、孫悟空が手に入れようと動き回るのが本書の骨子だが、話は一筋縄では進まない。フィリップ・K・ディックや筒井康隆氏のSFを思わせる仕掛けによって、孫悟空は過去や未来といった時空間を自在に飛びまわり、虞美人や西施、項羽、秦檜といった中国の歴史上の有名人たちと機知にあふれた会話をかわしたり、ドタバタ喜劇を繰り広げて行く。ただしこれらの人名は、日本人にとっては中国史の知識がないとチンプンカンプンの恐れが大きい。そこで、ここでは本書が無理なく読めるように、ポイントとなる歴史上の人名マメ知識を、以下箇条書きでご説明しておきたい。これさえ押さえておけば、このチャイニーズ・ファンタジー、なかなか楽しめます。
太上老君——老荘思想で有名な老子の別称。老子の思想の一部は、時代を経て民間思想と混じりあい、道教という宗教になった。そこで、老子は神様扱いされ、太上老君と呼ばれた。孫悟空が活躍する世界でも、神様の一人として登場。
虞美人——学生時代、漢文の授業で「四面楚歌」を習った方は多いかもしれないが、そこに出て来る項羽の愛姫。中国の代表的美人の一人。虞美人草の名前の由来でもある。
西施——やはり中国の代表的美人の一人。今から約二千五百年前の春秋時代、「臥薪嘗胆」の故事で有名な呉と越というライバル国同士の戦いがあった。そのとき、越が呉の王を骨抜きにするために送った美女。呉が滅んだ後、范蠡という人物に嫁いだという伝説もある。
項羽——始皇帝で有名な秦王朝が崩壊した後、劉邦と天下を争った武将。一時期、ライバルの劉邦を田舎に押し込めて天下を握り、「西楚の覇王」と名乗った。
秦檜——中国では、現在でも売国奴の代名詞となっている人物。中国の宋王朝は、異民族の金によって、長江以南まで押し込められた。これを南宋という。南宋では、金を武力で追い払い国土を取り戻そうとする者と、金と和解してひとまず平和を得ようという者に別れた。秦檜は後者の代表で講話を結ぼうとする。ところが、岳飛という将軍(中国では今でも国民的英雄)が思わぬ活躍を見せ、金軍を破竹の勢いで破って行く。岳飛の存在が金との講話には邪魔と見た秦檜は、無実の罪をでっちあげて岳飛を殺してしまった。 (守屋淳/著述・翻訳業)
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