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紙の本
後編:知られざるヴェトナムの歴史と変遷が明快に語られる
2002/05/22 22:15
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投稿者:今村楯夫 - この投稿者のレビュー一覧を見る
<書評後編>
たとえば第10章、「最後の王朝の残影—孤城フエ」。1802年から1945年までヴェトナムの首都はフエにあった。グエン氏の支配による。1968年の旧正月、いわゆる「テト攻勢」を著者は次のように語る。「北ヴェトナム軍と南ヴェトナム民族解放戦線武装勢力の一斉攻勢で、王宮は占拠された。すさまじい攻防で、わたしも南側セクターの一角で、破壊されたある住居の部屋で、手投げ弾24個入りの箱を枕に寝たこともある。攻撃してきたらこれを投げてくれといわれたが、投げることもなく朝が来た」と。すらすらと何の誇張も力みもなく、著者自身の体験がここには塗り込められているが、投げることがあったら、そのときには著者はすでにこの世にいなかったであろう。小倉貞男氏はかつて、戦時中、読売新聞社のサイゴン特派員だったのだ。
フエ王宮跡は世界文化遺産に指定され、少しずつ修復されつつあるが、テト攻勢で北ヴェトナム正規軍が王城に立てこもった際に、米軍の砲弾は王宮の大半を壊滅的に破壊したのだ。フエの町を訪れたことのある人は、おそらく町の中央を流れるフェン河(香河)の南側から王宮を眺め、そこに聳え立つ正面の太和殿を見て、その偉容に圧倒されるだろう。しかし、近づき、さらに門をくぐり抜けると、目前には破壊し尽くされた王宮の残骸を目にすることになる。その王宮を小倉氏は「王宮はいまはかなり修復された」と語っている。破壊される前とその直後を知る者として、彼の目には破壊跡よりも修復の痕跡に目がいくのであろう。
北から南への旅でもあるこの書の最後は、メコンデルタに向かう長距離バスの旅となる。戦時中はたえず地雷に脅えて移動したというこの旅にはそうした恐怖はない。メコンデルタの網の目のように張り巡らされた運河を早朝には移動する小舟の市場が点在し、豊かな自然の恵みである種々様々な果物が満載されている。
ヴェトナムをすでに旅したことのある人にとっては、旅先で体験し、見聞したことの意味を再確認できよう。これから旅をする人にとっては実に格好な案内書であり、これだけの知識を前もってもっていたら、ずいぶん、ヴェトナムの本当の姿が見えてくるだろう。もう一度、改めてヴェトナムを旅してみたくなった。あのメコンの夕陽も。
なお、書評には直接関係ないが、ヴェトナムの旅を考えている人は http://www.sinhcafevn.com をご利用あれ。いわゆるシンカフェという若者たちのヴェンチャー企業のような活気のある、格安料金で旅を楽しませてくれる旅行代理店。 (bk1ブックナビゲーター:今村楯夫/東京女子大学教授 2002.05.23)
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