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紙の本
2002/04/21朝刊
2002/05/08 22:15
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投稿者:日本経済新聞 - この投稿者のレビュー一覧を見る
武蔵坊弁慶は、京都・五条大橋で牛若丸(源義経)と対決した説話などで親しまれてきた。しかし、その実像を裏付ける史料は意外に少ない。本書は文学や芸能を通じて形成された弁慶像から、日本人の心性の変化を探っている。
弁慶は『平家物語』では、義経の一家臣として名を連ねる程度の存在だった。描写が躍動し始めるのは主君源義経の生涯を描く『義経記』からだ。著者は、平家を追い落とした京の英雄から一転、兄頼朝との対立で悲運の人となる義経への同情が、鎌倉時代末期に幕府から迫害された後醍醐天皇皇子の大塔宮を下敷きにしていることに着目。この物語が成立した室町中期の民衆の感情が、野性味あふれ、力強く主君を支える剛の者という弁慶像を生んだとみる。
野生児、知者、道化者と変容する弁慶のイメージを、本書は御伽(おとぎ)草子、謡曲、浄瑠璃といった芸能を通して追跡している。歌舞伎の『勧進帳』については、忠僕として描かれた弁慶像を「痩せ細った」と酷評する。
「痩せ細った」弁慶には、世のしがらみの中で身動きがとれず、ただ歯車のように生きる今の日本人の姿が二重写しにされている。著者は神話にまでさかのぼり、物事にとらわれず、おおらかに振る舞う弁慶の原像を探している。「時代を活気づかせる太った弁慶」待望論には、自由かったつだった日本人の精神を取り戻してほしいという著者の願いが込められているのだろう。
(C) 日本経済新聞社 1997-2001
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