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大都市を考えるためには、大都市制度だけを対象にするのだけではなく、都市で行われる多様な経済活動を正しく踏まえた上で様々な要素を検討する必要があります。
特に面白かったのは「Ⅵ 東京のリストラクチャリングと『世界都市』の夢再び」、「Ⅶ 世界都市ロンドンのガバナンス」、「Ⅷ 1990年代のニューヨーク地域計画」でした。
Ⅵについては、矢作弘先生の筆力が群を抜いて高く、非常に面白い論考となっています。90年代後半から特に立ち上がった都心部での再開発ラッシュの動向を踏まえた上で、都市の過密化による世界都市から生活都市化への目標変更と、その後の東京の地位低下による再び世界都市を目指す動きなどが非常に参考になりました。
Ⅶについては、ロンドンの都市をガバナンスするのはだれかということで、政府、GLCまたはGLA、基礎自治体など、様々な範囲のアクターが存在する中で、特にGLAに面白い動きが観察されたようです。充実した広域計画の実現には、GLAの税財源が充実していることが必要ですが、現実的にはそうなっていなかったことから、充実を図る動きにつながったようです。
Ⅷについては、ニューヨークの地域計画におけるTIF、BIDなどの将来価値増大を見込んだ費用負担の方法などを再度学ぶことができました。右肩下がりの地域の中で甘い見通しを立てることはできませんが、やはり将来価値増大を見込んだ形の費用負担のあり方は日本でさらに検討されるべきなのだろうと感じました。