投稿元:
レビューを見る
ホスピスとか在宅看護とか、イメージがよくつかめなかったけれども、この本を読んで、なんとなくわかった。
著者は日本の開業ナースの先駆者として、在宅での看取りに取り組む村松静子氏。
本書は著者の在宅看護師としての経験を振り返って、その理念と技術をコンパクトにまとめたもの。
そんな派手な内容はないけれでも、なかなか得がたい本。ジワジワくるものがあります。
ここ取りあげられている個々の事例を読むと、看護師というのは、とても大変な仕事だと思う。1人1人での在宅での死に立ち会っているのだが、とても大変で、しかし、やはり崇高な職業である。
著者の若い頃のエピソードとして、
その後生まれ育った故郷に戻った私は、秋田県立脳血管研究センターの開設当初のナースとして勤務しました。「このニワトリ!」 手術後の包帯交換時、手が震えてすばやくガーゼが渡せない私に向かって、医師が発した言葉です。悔しかった私は、それからの二年間、夜昼なく、必死に一つ一つの技術を磨くことに専念しました。
(p224)
ひええ。場面を、想像しただけでめまいがしそうになる。先生もすごいが、やっぱり看護師さんというのはすごいや。わたしにはとてもできません。
前書きは永六輔氏。
私はこの人のことがなんとなく嫌いなのだが、この前書きはとてもすばらしい。これを読めただけでもこの本を買った価値があったと思う。
永氏は奥さんが亡くなる前に自宅に引き取り、著者のチームから在宅看護を受けたということのようだ。
看護師がどうあるべきかということを述べているわけだが、厳しくて暖かい言葉。
看護師の人たちはこの文章を読んでどう思うのだろうか。
皆、そうだそうだと思ってくれれば、われわれが将来お世話になるとき、なんの心配も要らないわけですが。