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紙の本

現場の強さが国の力

2002/07/04 16:01

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投稿者:荻野勝彦 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 著者は、旧通産省出身の研究者で、もっぱら製造業を中心とする中小企業のフィールドワークの蓄積によって、中小企業研究に独自の地位を築いている。その持論は「中小企業は日本のまごころ世界の宝」である。一見まことにエモーショナルなこのフレーズは、実は非常に根本的な本質をついている。著者はモノづくりの基本は「ねばりと頑張り、まごころと辛抱」だという。従業員全員が、顧客の時には無理とも思えるオーダーやニーズに精一杯応えようと努力するところに、よい製品が生まれる。それには従業員がお互いに譲り合い、助け合わなければならない。時には目的のために自分を殺さなければならない。それが「ねばりと頑張り、まごころと辛抱」だ。著者によれば、それはこれまで日本企業(とりわけ中小企業)にだけ優れて見られるものであった。それゆえ、中小企業は日本が世界に誇るべき「日本のまごころ、世界の宝」だというわけだ。
 その基本を、著者は日本企業の「現場主義」に求めている。日本では現場が大事にされることでコミュニケーションが良くなり、現場の働きやすい設計が行われ、現場の知恵が出るようになった。エンジニアと現場の作業者とが所得も含めてきわめて公平で、それによってお互い譲り合い、辛抱するために不可欠な「心のゆとり」が生まれたのだという。これはこれまで、ほぼ日本にだけ見られる特質であった(中国が近年めざましい発展をとげたのは、文化大革命によって労働者とエンジニアの階級差がなくなったからだというのが著者の説である)。
 今、日本の中小企業はかつてない苦境の中にあると言っていいだろう。この本は書名を見ても明らかなように、中小企業へのエールである。著者はその膨大なフィールドワークを通じて、日本の中小企業は依然として強いとの確信を語り、さらに強くなるための道筋を、成功している経営の共通点という形で描き出している。特に、ITの「ツール」としての活用に関しては、一章を設けて述べられている。全巻を通じて紹介される幾多の事例は、どれも強い共感を呼ばずにいないものであり、まことに説得力に富む。
 「町工場が滅びたら日本も滅びる」というメッセージは、なにを意味しているのだろう。私はこれは、一握りのエリートやリーダーだけがいくら大活躍しても国は滅びる、大多数を占める「普通の」無名の人々が、それぞれ優れた働きをして、日々レベルアップしていくのでなければ国は繁栄しない、という意味なのではないかと思う。百歩譲って、金融や情報産業のような世界では、あるいは一握りの天才が活躍すればそれでいいのかも知れない。しかし、モノづくりの世界ではそうはいかない。そして、日本がモノづくりなしで立国できる可能性はきわめて低い。
 われわれ労務屋、人事屋も、こうした観点からものごとを考えていかなければならないのだと思う。圧倒的多数の普通の人々が、ねばりと頑張り、まごころと辛抱、そして心のゆとりを持ちつづけることができるような人事管理とはどのようなものだろう。それは少なくとも、著者も言うとおり、周囲を顧みずに「成果」をあげた少数の人間が優遇され、目立たぬ仕事に地道に取り組んだ多数の人々が割を喰うような「成果主義」ではないことは間違いあるまい。あるいは、働く人が腰を落ち着けて技能を磨くこともチームワークを高めることもできなくなるような「労働力の流動化」でないことも確実だろう。
 たしかに、この本のものの見方は、世間で流行のものとはかなり違っている。しかし、流行、多数が常に正しいとは限らない。ことによると、こうした見方に立ってさまざまな施策を考え直して見ることが、今日の閉塞感を打ち破る起爆剤になるのかも知れない。[荻野勝彦]

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