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企業にとって、紛争を訴訟と和解(話合い)のどちらで解決するのが経済的に得なのかといった、大局的なものの考え方を整理したうえで、送達はどのように行われるか、口頭弁論はどのように行われるかといった実務的な細かい点までをもフォローする素晴らしい本です。
そして、これほどの内容を290ページ程度に簡潔にまとめてしまった構成力・文章力にも敬服しきりです。
裁判所へ納める印紙・弁護士に支払う報酬、社内経費を含めた訴訟の遂行費用の見積り方と勝訴金額や企業の名誉確保等の非金銭的メリットの比較の仕方をこれほど具体的に示している本は、日本には例をみないでしょう。
「日本においては、訴訟や和解を一つの経営オプションとして戦略的に考える経営者や法務担当者は少なかった−」
著者は元裁判官のキャリアを持つ弁護士です。本の中のこの一言に表現されているように、裁判官の立場で原告・被告となる企業やその法務担当者を見ていると、「こんな無駄な争いを続けてるんだったら早く和解した方がいいのに。」と思ってしまうシーンが多々あったのだと思います。
学生の方や、法務担当者になったばかりの方は、この本を片手に実際の裁判を見学されると、裁判の全容がつかめ、民事訴訟法の理解がスムースになるものと思います。