紙の本
なにしろ人が死にすぎる
2002/12/08 09:20
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投稿者:のらねこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
黒鉄ヒロシは、ギャグ漫画家としてはベテランといっていいキャリアの持ち主であるのだが、実は、ユーモアのセンスがあまりないのではないか、と個人的には疑っている。
少なくとも、わたしとは、笑いのツボが微妙にズレている感じがするのだ。
変に理知的にすぎるというか、知性を放棄しきれずギャグが「ギャグの絵解き」にしかなっていないように感じるときが多々あり、「いかに常軌を逸するのか」冷静に考えている作者の視線が透けてみえてしまって、かえってシラケてしまうことが多い。
たぶん、黒鉄ヒロシは、ナンセンスに徹するにはモノが見えすぎるのだ。一連の、主として幕末から明治にかけての実在の事件や人物を追った作品群をみるにつれ、そう思えてくる。例えば、この「幕末暗殺」。
暗殺が流行した幕末とは、ようするに「武士の論理」を錦の御旗にふりたてて、些細な思想の違いを実力行使で排除するテロリズムが半ば公然となった時代でもあったが、これがもう、みていると、「思想の違い」どころか、それ以上に些細な、嫉妬や勘違いや利害がらみの私怨やらの個人的な実情、事情を無理にこじつけて「政治的な意匠」を纏わせ、今日の新聞にみたてれば、社会面の事件を無理矢理政治面の事件に仕立て上げたようなものが多い。
人間的、と、いえばいえるが、刀剣という殺傷兵器を日常的に腰に差して携帯していた武士の論理や面目、精神性が、幕末までに如何に形骸化していたか(あるいは、そんなものはハナっからタテマエであって、もともとありはしなかったか)という証左にも思える。
その極めつけが、「戦わずして負けた」最後の将軍、徳川慶喜を描いた一節。この人、同情に値する点は多々あるけど、たしかに日和見で、大局よりは自己の保身に重きをおいた無責任さは目にたつのだ。ある意味では、数百人の人間が斬ったり斬られたりする、この「幕末群像」の掉尾を飾るのに、これ以上ふさわしい人物もいないのかも知れない。
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とにかく取り上げられてる事件と人物の多いこと。私も知らない人とかたくさんでした。
暗殺する側の人物が何人か深めに取り上げられてますがどの人物も意外と愛しい印象。
特に河上彦斎がとても好きです。
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黒鉄 ヒロシさんの漫画も、人物が生き生きと動いていて、それがすごく面白いです。
画面の使い方や、色のひっぱり方など、う〜んむ、うまい!と驚嘆してしまいます。
幕末が好きな方は読めば面白いと思います。
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「坂本龍馬」同様に古本屋で見つけました。これもとてもいい買い物だった。
幕末に残る暗殺を紹介するように描かれています。
印象深かったのは岡田以蔵と河上彦斎。
河上彦斎はるろうに剣心の主人公のモデルとされていますが、うーん…考えや思いの深い人物だったようです。
岡田以蔵は当時まだ作品が少ないので、漫画は貴重だった気がします。今でこそ歴史ブームで描かれるようになりましたが…。
その他にも桜田門外の変や、龍馬暗殺、新撰組関連のものもあります。幕末好きならお勧めな作品です。
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黒鉄ヒロシの劇画漫画シリーズ。
幕末混乱期、あまりの暗殺の多さにブラックジョークにするしか描きようがないと並べた本。これだけ死体が並ぶと壮観。
有名な人斬りの、明治時代になってからのその後の生活などがかなり興味深かった。やはり人を斬っておいて普通の生活は難しい。
**再読後追記**
「言論と情報伝達の未発達な段階においてその時代人が自身の思想を熱烈に主張すれば行動も可激化の一途をたどる。意見の異なるものを我意の下に屈服させんがための手っ取り早い方法は暴力であろう。西南雄藩がそれぞれに権力の中核を占めんとしてその奪取をめざしたために、意思統一は待たされ、途中、多くの暗殺事件が生まれた。
自己の死のイメージの克服を絶対条件とする点で、暗殺者tと他の世俗的な殺人事件とが大いに分かれるところである。行為の代償に自己の清明の喪失を覚悟しなければならない暗殺は、奇妙な殺人方法と言える。」
幕末から明治にかけて、あまりにも多くの暗殺が行われた。
悲劇も行き過ぎると喜劇と化し、喜劇もいつしか悲しみを蓄える。
これほどに命が軽く奪い奪われることが日常茶飯事となると、それを書き記すのはブラックユーモアとして処理せざるを得なかった。
まず冒頭は雪の桜田門外の変。
これがもう、非常に、わかりやすい!
絵で見せるため、周りの地図、誰がどこにいた、誰がここに向って斬り込み…という位置関係が非常にわかりやすい。
実際にこの襲撃はせいぜい2~3分だったとのこと。
時代劇とかで是非このフォーメーションを映像化して欲しいと思っている。今まで見た時代劇での描写って籠の中の井伊直弼目線になっちゃったり、襲撃者と井伊藩士の斬り合いだけを写したりで、全体像が掴めないものばっかり。なんでこの暗殺が成功したの?襲撃者たちはなぜ江戸のど真ん中で大老の首を持ってその場を離れることができたの?ってのは全体像を見てやっとわかってきた。
有名暗殺者としてその人生が取り上げられているのは、岡田以蔵、田中新兵衛、大楽源太郎。中村半次郎(後の桐野利秋)、川上彦斎。
著者は、田中新兵衛は暗殺の打点王、岡田以蔵はホームラン王、打率が良かったのは桐野利秋(中村半次郎)と表現(笑)。
ならば河上彦斎は逆転さよならホームランを放ったというところか?
彼らはノリノリで暗殺していたころはある意味輝いていたのですが、その後は自分も追われたり殺されたり。自分自身は血の匂いからは遠ざかろうとしていた人物いますが、さんざ斬っておいて、あとは安定に暮らしたい…とはさせてもらえまい。
あ、たまに例外。人を斬ってはいたが、日本の初代総理大臣になった人とかいますね…
「暗殺年譜」の章では、あまりにも暗殺事件が多いため「年表漫画」として70ページに渡り40件の暗殺をづらづら~~っとブラックユーモア調で書き綴っています。
途中で「ターゲット本人はともかく、その妻子を20人の男が取り囲んで殺すとは何が大儀だ~~!」などと作者の怒りが現れたり、「(同衾中などにより)真っ裸で暗殺されるのは恥ずかしいよなあ…」などとつぶやきがあったり(笑)
そんなこんなで。
幕末から明治にかけての流れを暗殺という観点から見るという異色歴史劇画ですが、
やはり調べたうえで絵で表現されるので非常にわかりやすい!
時代小説を読んだり時代劇を見るにあたっては虎の巻として置いておきたい。
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黒鉄ヒロシが描く岡田以蔵を読みたくて購入。
「新選組」「坂本龍馬」そして「幕末暗殺」。
3冊とも読むと幕末が立体的になってくる。
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暗殺とは何だったのか
マンガならではの説得力がある
15代将軍 慶喜については知らないことが多かった
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中条新書から。
こういう感じか~。個人的にあまり好きじゃない。読者としては、どういう層が対象なんだろ?詳しい人にとっては、各エピソードが短過ぎて物足りんだろうし、あまり知らない人からすると、ただの羅列にしか見えないという。自分は後者だけど、暗殺っていう刺激的なテーマには興味を引かれるものの、徹頭徹尾それが続くから、正直ダレる。司馬遼太郎の幕末モノを、もう少しかじってみようかな、って気にはなったけど。