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白川氏らしい洞察もありながら、独断的に感じる部分や、あまり興味をそそられない部分もあり。評価が難しい一冊。
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私にはこの本を読むための前提となる知識が欠けているようだ。それでもともかく読んでみた。著者の漢字論と同じく人麻呂のころの呪術的な世界観を説いていく。大化の改新前後、天智・天武や壬申の乱ところの歴史の知識を仕入れたくなった。
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漢字や古代中国文学の研究家というイメージの白川静であるが、万葉について考説を試みることは、素願の一つであるということ。万葉を理解するために、万葉仮名、それを理解するために漢字のなりたちみたいなルートで遡っていった。
その成果を万葉に当てはめた、とくに詩経との比較文学的な方法論をとったということのようで、この取り組みのあまりの壮大さに愕然としてしまう。
内容は、難しくて、というか、そもそも万葉集を読んでいないので、なにが議論されているかもよくわからない。
それでも、古代においては、まだ作者という概念はなく、自然を純粋に描写するような概念もない。とても呪歌、言葉の魔力によって、神、魂、死者に働きかけようとする試みだとする。
それを具体的な歌の分析で示していくところが鬼気迫るものがある。
さて、こうした歌の性格は、古代が残る初期万葉で、後期には急速に変化していくとのこと。それは、ある意味、律令国家という、ある種の法治国家の整理によって、呪術的なものが失われていくこととつながっていく。
そういう古代性の衰退が、個人という意識を生み出し、それが歌として表現されるようになったということかな?