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紙の本
はっきりいって、天才中の天才中の天才だぜ
2002/12/13 22:45
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投稿者:でぶ海 - この投稿者のレビュー一覧を見る
チェスの如き、場合分けの少ないゲームがコンピュータに敗北するのは、感覚として分かる。しかし、将棋という世界に冠たるあの複雑にして融通無碍なる可能性を秘めたゲームが、コンピュータ如きに負けるものか……そう信じたいのである。
将棋のプロというものをご存じか。
全国に、天才児というものはある。将棋の駒の動かし方を覚えて1年で、アマチュア2段になり、その後2年で、4段、5段になったという天才児である。彼は小学生である。アマチュアの4段といえば、詰将棋なら十一手詰めの難問を数十秒で解いてしまう天才である。将棋を覚えて数年でそこまでいくのは一つの都道府県で一人いるかいないかの数である。その天才児たちがプロ棋士を目指して、奨励会というところを受験しに集まる。
四十数名の天才児たちが一同に会して将棋を指す。そこで圧倒的な成績を残した数名が奨励会への入会を許される。数にして数名である。天才児中の天才児である。その彼は6級から始めて、先輩奨励会員たちと月に2回ある例会で対局し、9勝2敗などの恐るべき成績を残した時のみ、5級に昇級できる。そうこうして3段になるのである。奨励会3段は天才児中の天才児のこれまた一握りの天才である。ある奨励会員が、将棋の世界での先行きの不安を覚えて、受験勉強も平行してやったら、簡単に東大に通ったという話もある。その3段になった彼らが数十名での半年にわたるリーグ戦を戦って、優勝者と準優勝者のみが、4段になれるのである。それがプロである。めちゃくちゃ、強いのである。
三十一手詰の詰め将棋ならひとにらみで解ける超能力者なのである。
「こうして、ああされて、こうして」というような牛歩の読みではなく、頭の中の将棋盤の駒が自動的にカタカタと何十手先までも勝手に動いていくような頭脳を彼らは持っているのだ。そういった直線的な頭脳だけでなく、局面を絵画的にとらえる大局観というものもプロ棋士には備わっている。大局観というものは駒の損得や自玉の守りの堅さだけで数値化できる概念ではない。人間対人間という泥臭い勝武術もそこにはあるのだ。
所詮二進法に過ぎないコンピュータ如きが、この人智を超えた天才たちに勝てるはずがない。
著者の飯田弘之氏はプロ棋士である。プロ棋士活動を休止して、コンピュータのゲーム理論を研究している学者でもある。凡百の書き手とはもの違う天才なのである。
だからこそ、本書には注目せざるを得なかった。
数年前まで、アマチュア初段位の棋力だったコンピュータソフトが、年を経るごとに実力を上げているという。いまの将棋のコンピュータソフトはアマチュアの4段はあるというのだ。この間の開発者たちの新しいアルゴリズムの発想の競争は、本書を読めば、「ああ、ここにも天才たちがいたのだ」と胸を打つ感動がある。
天才中の天才がしのぎを削って、王将や棋聖や棋王や王座といったタイトルを争い、チャンピオンとして君臨する。その中でも、竜王と並んで、価値が高いタイトルが「名人」である。その名人にコンピュータが勝てるのか? 本書を読んで愕然とした。
飯田氏はいたってクールに論述している。
私などは、決して信じたくない結果を。
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