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紙の本
優しい世界での強さと自律
2002/11/09 07:06
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投稿者:毛少子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本は、ミステリーとしてはやや弱いかもしれない。謎はそれほどのものではない。だが、この本は、何より小説として、上級なのだ。
主人公の探偵・林晋一郎は、事故で声帯を摘出して、声の出せない少年。その相棒・中垣内真理香は高校中退のフリーター。その、社会的にはマイノリティとも言えるふたりが、しかし、力強く、ふつうの人間として自律心を持って生きていこうとしている。そこに強さを感じる。
そして、彼らが解決する「事件」でも、ただ犯人当てをするだけではなく、その後の関係者の人生にまで踏み込み、アドバイスしたり、面倒をみることもある。彼らは無責任な、興味本位のしろうと探偵とは言えない。
若い人向けに、コミカルに書かれているが、話の中心には、自分の責任で自分の自由を勝ち取ること、すなわち、自律の大切さがきちんと据えられている。若い人だけではなく、さまざまな人に、人生を考え直す上で、読んで欲しい。自分は、責任ある自由を、はたして得ているのか……。
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