サイト内検索

詳細検索

ヘルプ

セーフサーチについて

性的・暴力的に過激な表現が含まれる作品の表示を調整できる機能です。
ご利用当初は「セーフサーチ」が「ON」に設定されており、性的・暴力的に過激な表現が含まれる作品の表示が制限されています。
全ての作品を表示するためには「OFF」にしてご覧ください。
※セーフサーチを「OFF」にすると、アダルト認証ページで「はい」を選択した状態になります。
※セーフサーチを「OFF」から「ON」に戻すと、次ページの表示もしくはページ更新後に認証が入ります。

e-hon連携キャンペーン ~5/31

hontoレビュー

ほしい本の一覧を見る

藤田嗣治「異邦人」の生涯 みんなのレビュー

第34回大宅壮一ノンフィクション賞 受賞作品

予約購入について
  • 「予約購入する」をクリックすると予約が完了します。
  • ご予約いただいた商品は発売日にダウンロード可能となります。
  • ご購入金額は、発売日にお客様のクレジットカードにご請求されます。
  • 商品の発売日は変更となる可能性がございますので、予めご了承ください。

みんなのレビュー6件

みんなの評価4.7

評価内訳

  • 星 5 (4件)
  • 星 4 (2件)
  • 星 3 (0件)
  • 星 2 (0件)
  • 星 1 (0件)
6 件中 1 件~ 6 件を表示

紙の本

日本という国について深く考えさせられる本

2003/03/03 14:41

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:塩津計 - この投稿者のレビュー一覧を見る

皆さんは藤田嗣治という画家をご存知だろうか。私は幸運にも
高校の担任が東京芸大卒の美術担当で、その先生から彼の名前
を聞かされていたのでたまたま知っていた(別の人が担任だった
ら今も彼の名前すら知らなかっただろう)。彼の風貌が与える
インパクトの強さもあって藤田はずっと気になる存在であり
続けた。しかし本書を読むまで彼の人生の全貌を知る機会は
ついぞなかった。一言でいうと彼は西欧社会で高く評価された
おそらく日本美術史上唯一にして最高の画家なのである。最近
でこそ少なくなったが、かつてパリは全日本人にとって憧れ
の街であった。しかし荻原朔太郎が書いたように「ふらんすに
行きたしと思えどもふらんすはあまりに遠し」であった。
ましてそのフランスで高く評価されるなぞ、思いもよらない
文字通り高嶺の花だった。その憧れの的である花の都パリで
名声と賞賛を欲しいままにするという離れ業を藤田は軽々と
行ってしまった。空前にしておそらく絶後の成功を絵画の世界
でやってのけた藤田に対し、しかし日本の画壇、美術界は冷淡
だった。彼の華やかな女性遍歴を指弾し、彼の怪異な風貌を
目立ちたがり屋の自己宣伝と非難した。フランス人が賞賛して
やまない彼の絵画に何の価値も認めようとしなかった。なぜか。
私はこれを日本人の嫉妬だと考えている。自分達が逆立ちしても
手に入れられない名声を手に入れる人物を見ると、日本人は
喝采を送らずに嫉妬する。難癖をつけて排斥しようとする。
しかもその非難排斥は執拗を極め、決して日本画壇は藤田を
受け入れようとしなかった。今日でも藤田はまだ日本に受け入れ
られてはいないのだろう。ここに日本の重大な欠点があると私
には思えてならない。日本人は身内の和を重視する余り、その
規格の外にある存在を徹底的に排斥すると言う重大な欠点を
持っている。カルテルを維持するためにカルテルの内側での
結束は強く強固だが、公正で開かれた競争とは程遠いことを
やろうとする。これは部外者には極めて閉鎖的でとっつき難い
国となる。こういう欠点を直さないと日本という国は経済が
衰えたら本当に何のとりえも無い国になってしまうのではないか
と思えてくる。藤田が自己の最高傑作と認める「アッツ島玉砕」
と「サイパン島陥落」は米軍戦利品の無期限貸与の扱いで
所有権もないまま今も日本近代美術館の倉庫に眠っている。
この絵画は「近隣諸国を刺激する」という名目の下、常設
展示はなされないままとなって今日に至っている。ある意味で
藤田の戦争画が常設展示となったとき、藤田は初めて日本の
社会に受け入れられた事になるのではないか。それにしても
あのオカッパ頭が、実はお金がなくて貧乏のどん底にあった
修行時代の苦労を忘れないという藤田独特の「初心忘れる
べからず」という戒めの象徴であったとは知らなかった。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本

読んだあと、私は室生犀星の「小景異情」を思い出していた。

2003/11/11 07:32

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:いばちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る

真ん丸めがねにオカッパ頭の絵描き・藤田嗣治。大学生の時、絵の好きな親戚のおばさんと一緒に行った美術館で初めてフジタのことを知った。「パリでは最も有名な日本人なのよぉ」と言っていて、なんで美術の教科書や歴史の教科書には載ってなかったんだろうとふと思ったのを思い出した。私のように知らない人は知っておいたほうがいい。知っている人は、この本でより深く理解したほうがいい、と私は思う。

モディリアニ、キスリング、などと共にエコール・ド・パリの芸術家としてゆるぎない名声を得たフジタは、当時の黒田清輝の外光派が主流だった日本芸術界からは冷遇され、その風変わりな容貌と女性関係の華やかさのために国辱とまでいわれた。帰国後も戦争画を書いた日本美術界の責任をフジタひとりで取る形で厳しく非難され、アメリカへ渡り、後に再びフランスへ移り住む。フランスに帰化し、キリスト教に改宗したほどの日本嫌いといわれるフジタであるが、夫人君代さんの協力のもと著者の10年にもわたる取材活動の結果のこの一冊でフジタの日本に対する想いを垣間見ることができる。

読んだあと、私は室生犀星の「小景異情」を思い出していた。

“ふるさとは遠きにありて思ふもの
 そして悲しくうたふもの
 よしや
 うらぶれて異土の乞食になるとても
 帰るところにあるまじや”
              
アップダウンの激しい、壮絶な想いをしてきているフジタも最後は案外、そんなもんかもしれない。それにしても、教科書って何なんだろう。家永さんが長いこと教科書検定やってたけど、少し実感が湧いてきた。情報なんて、国の力でいくらでも操作できる。恐ろしい。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本

演戯することの優しさ、そして哀しさ

2003/12/01 23:56

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:すなねずみ - この投稿者のレビュー一覧を見る

「ギャラリー・フェイク」という漫画が好きだったことと(主人公の名前がフジタ)、ヘミングウェイやらフィッツジェラルドやらが好きで(どちらが好きかと言われれば断然フィッツジェラルド)、20年代のパリにどこか憧れているところがあって、軽い気持ちで読んだ本がこれ。

たとえば、こんな言葉が印象に残っている。

「人間は一人ではどんな天才でも貧しくなるばかりだ。本当の孤独は人間を駄目にする」

オカッパ頭にロイド眼鏡、鼻の下には可愛くチョビ髭、あちゃらか芸人そのままに、洒落たシャツ着て夜毎カフェーで乱痴気騒ぎ。ベル・エポック、1920年代パリを生きた日本人画家フジタの言葉。

その言葉が、どこまで彼の本音を語っているのかはよくわからない。質問者へのリップサービスも入っているのかもしれないし、質問者の言葉に自らの乱痴気騒ぎを諫める声音を聴いて、心の中で舌を出しながらちょっと言い訳をしてみたのかもしれない。

そこに、もうひとつの言葉が響いてくる。

「偽りが嫌いだ。人を疑いたくもない。しかし益々時勢が変化して、人を疑わねばならなくなって来た。偽りと本当の真実を見分けなければならなくなった。いやな時勢になった」

晩年のフジタが人に会うのを避けて、制作に没頭する日々に語ったとされる言葉。

表現者たちは、それぞれに切実な「違和感」を抱いて生きて(=表現して)いる。戦争の世紀を生き、ふたつの国(日本とフランス)を行き来するなかで、その違和感を痛々しいまでに体現せざるを得なかった男。それがフジタであるのかもしれない。

あまり深刻ぶるのはやめよう。とても優しいひとりの男が、真摯に絵を描き続けた。その生涯を優しく真摯に辿ったドキュメント。それがこの本である。そして僕たちには、フジタが描いた多くの絵が残されている。

(蛇足ですが、なんだか、フジタという人が中原中也とダブって見えてしまうんです。とんでもない勘違いかもしれませんが……)

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本

日本に捨てられた西洋で最も評価された日本人画家の生涯が、今明かされる!

2003/03/19 20:53

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:hybird - この投稿者のレビュー一覧を見る

 ピカソ、マティス、シャガール、モディリアニ、コクトー、ヘミングウェイ——様々な芸術家が集まった1920年代のパリで、彼らと同等の評価を得ていた日本人画家・藤田嗣治。
 なぜ彼は日本で知られていないのか? なぜ彼は日本で評価を得ることができなかったのか? 西洋で日本人画家として最高の評価を得ていながら、「私が日本を捨てたのではない。日本に捨てられたのだ」と語ったフジタの生涯の謎に迫った作品がコレ。
 これだけ聞いただけでも、読みたくなる人も多いのでは?
 読む前は「日本には新しいものを受け入れる土壌がない」「日本社会は妬み社会」などという常套の勘ぐりで読み始めたが、読み進んでいくと、2つの大戦を芸術家として生きたフジタを取り巻く当時の状況が大きな要因となり、日本での不遇な評価に繋がっていったことが赤裸々に明かされていく。
 西洋で評価を得るためのフジタの姿勢などは、現在の日本人に置き換えても通用する部分があり、そのことに関しては、日本のあまり変わっていない現状が垣間見えて悲しくもなるが……
 ピカソをして天才と言わしめた日本人画家!という程度の知識で読み始めたが、読後は、揺れ動く時代に生きた一芸術家の生涯やその置かれた状況について、長い年数を掛けて、よくぞここまで調べ上げたものだ、と感心しきり。
 面白いです。ドウゾ。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

2012/05/07 12:58

投稿元:ブクログ

レビューを見る

2012/06/13 12:57

投稿元:ブクログ

レビューを見る

6 件中 1 件~ 6 件を表示
×

hontoからおトクな情報をお届けします!

割引きクーポンや人気の特集ページ、ほしい本の値下げ情報などをプッシュ通知でいち早くお届けします。