紙の本
嘘と証明できなければ真実であるというのは、トンデモ本の常道だけれど、個人の人権を侵害しておいて言論の自由を叫ぶ某週刊誌と、基本はいっしょだね
2004/03/24 21:32
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投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
「なぜ新しくできた地下鉄の駅にあるコンクリートの柱が、何十年も前のもののように汚れているのか。どうして地下鉄の駅には、無駄に思える上り下りがあるのか」。『東京アンダーグラウンド』などの現代歴史秘話ともちょっと違う。どちらかというとトンデモ本に分類したほうがいいのかもしれない。著者の秋庭は1956年生まれの作家・ジャーナリスト。テレビ朝日報道局で社会部、外報部の記者を経て海外特派員の経験もあるという。
序は、国会議事堂付近の地図を並べて、地下鉄の経路図の食い違いなどを教えてくれる「七つの謎」。第一章は、地下鉄丸の内線の設計者が書いた文章と、現実の丸の内線がその言葉どおりに設計されていないことへの疑問「入れ換えられた線路」。第二章は、国会議事堂の設計者について諸説があるということへの疑問から、議事堂や国会図書館などの一等案が実現しなかったことを論じる「一等不採用」。第三章は、頻繁に変更される地下鉄のルート、その真の理由は「知られざる東京の地下」。
第四章は、国会議事堂の設計公募案の一等不採用と、新宿に向う地下鉄の免許「地下は新宿を向いていた」。第五章は、丸の内線の赤坂見附付近で突然現れるヤード単位の線路の曲率について「二〇〇ヤード」。第六章は、戦争前に銀座線以外にも地下鉄の線路が「戦前、ここにも地下鉄が走っていた」。第七章は、行政が決して教えようとしないよう下水道の経路「帝都復興」。最後が、都交通局のOBがいう、先に地下があったの意味「東京の下にはもう一つの東京がある」。それに、あとがきという構成。
読んでいて、章を越えた繰り返しが多く、今一つピリッとしない。それから、一つとして写真を載せようとしないか疑問。出ているのは市販の地図と地下道の断面図だけ。記事については、旧財閥系のT社が地下鉄事業を独占したように書きながら、突然、他の章では日本最大手のK社工事とかいたり、文中で矢印と書きながら、掲載された地図には記号すら載っていなかったり、図面も何もない頁に突然B1、B2と書いたり、不親切極まりない。
論証という割に、いかにも中途半端。たとえば工事を請負った会社の記録、あるいはセメント会社の記録などには、あたった気配もない。科学的な話、例えば、昔のもののように見えるコンクリートの柱については材料的な分析をする気はなさそうである。建築設計をやっている友人というのが、かなり重要な断定を繰り返すけれど、この設計者は構造担当なのだろうか、意匠屋なのだろうか。そういう記事も無い。
しかも、秋庭の発言を押さえつけるかのような行政側の動機が、全く明かされない。例えば、既存のトンネルを利用したことで、工事代金を浮かしたようなことを匂わせるが、その金がどこに消えたかという追跡も、証拠も提示されない。こんないい加減な論証でも、多分わたしたちが知らない地下が東京にはあっただろう、現在もあるだろうとは思う。しかし、この人の記事とは全く関係ない場所と、規模、理由でと思う。
それにしても、前振りが本当に下手な人である。たとえば、地下鉄の日本橋駅と隣接する大手町駅が、なぜ繋がっていないのかとか、同じく三越前と川一つで隔てられているけれど、あれが繋がればどんなに便利だろうとか、書きようは一杯あるはずだ。霞ヶ関みたいな、役人しか利用しない駅を取り上げての発言では、正直、庶民には興味も湧いてこない。
結局、嘘と証明できなければ真実であるというのは、現代マスコミとテレビのノリなんだなあ、と思う。一片でも真実が混じっている可能性があれば何を言ってもいい、そういうマスコミが許される時代は終ったと思うのだが。そう、言論の自由、とさえ叫べば、なにを書いてもいい、動機は金儲けでも言論の自由は絶対! そんな世迷いごとなど聞きたくもない。その気概あるなら天皇制にでも噛み付いてご覧、某文春!
紙の本
かなり面白いと思います
2002/12/10 04:08
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夢男 - この投稿者のレビュー一覧を見る
話の内容としてはとても面白いです。特に毎日の都内に通勤している人には普段自分が通っているここがまさか…という感じで話のネタとしては読む人を飽きさせません。ただ実証部分が弱いことと論証がやや複雑な感は否めません。また「これを公開すると出版差止めになる」というフレーズを散見しましたが、かえって胡散臭さを感じてしまいました。あと、具体的な場所や地名が多いので(結構多いとはいえ)もっとビジュアル的な要素を多用して欲しかったと思います。語られている「秘密」は諸段階あり、どこまで信じるかは読者の判断といったところですが、「本当だったらいろいろな意味ですごい話だなこれは」と思わせるだけの内容は持ち合わせています。大正、昭和初期のレトロな東京が好きな方にもお薦めの本です。不満を言いながらも個人的には今後この話が世間で少しでも盛り上がってはくれまいか、という密かな期待を抱いています。
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鉄っちゃんじゃなくても楽しめる
東京メトロのひそやかな楽しみ
地理に詳しくないと難しいところがあるので、地図を脇にして読むとイイかも
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「戦後の東京の地下を舞台に政府・都・営団地下鉄は秘密を隠蔽しており、今もってそれらは継続されている」と言う大胆かつ大風呂敷な本。 ジャーナリストの書籍としては陰謀や隠蔽に関して少々大げさに過ぎる感があり、また意図的に結論を書くことが避けられている文体は、この本の評価を2分する大きな一因となっているようです。しかし、戦前・戦後の地下鉄開発について資料などから搦め手で推理を展開するさまは民俗学やミステリの様相を呈しており、伏せられた言葉を自らの推理と想像で埋めていく作業は非常に面白いです。 「一枚の地図を見て、じっくりと考え込む」ただそれだけのことがこんなにも楽しいのか、と新たに発見しました。 好き嫌いのはっきりする内容で、真実の程も闇の中なのですけれど「その闇に自ら光を当てる作業そのもの」を愉しんでしまう、というのも一興。
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地図上の矛盾に気がついた事から謎解きが始まり、様々な調査を行った上で「戦前に東京の地下鉄網はかなりの部分が出来上がっていた」という結論に結びつく。著者はテレ朝の元ジャーナリスト。一つ一つの謎を丹念かつ理論的に解いていこうとする内容は、下手な推理小説より遥かに面白い。このテの本にありがちな、明確な結論は出さずに無責任な疑問を投げかけるようなこともなく、読んでいて気持ちがよかった。残念なのは、どうしようもない事ではあるが、私のような地方(北海道)に住んでいる者には、現在の地下鉄網に関する説明をもうちょっと詳しくしてくれないと、イメージを掴み難い箇所がかなりあった。首都圏に住んで日常的に地下鉄を利用している人達には、「なるほど!」と思える部分がかなりあるのだろうと思う。
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「帝都東京・隠された地下網の秘密」タイトルだけでこの本を手にした人は多いと思う。首都東京のミステリーを暴く。
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地図上に浮かんだ矛盾から謎が謎を呼び、徹底した調査の末「戦前に既に東京には地下網ができあがっており、その秘密は今もなお伏せられている」という大胆な結論に達する。内容は非常に興味深いのだが、文章が少しわかりにくいのが残念。
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政府は何かを隠してますナ。言いたいことを言えずに遠回しにせざるを得なかったのか、表現や図表の使い方が的を得てなくて理解に困難。だが、目の付けどころはよいと思う。
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2002東京の中心部の地下鉄の不可解を追究していくという内容。地下鉄駅のように一見均質なものに見えても実は均質でないってのは「面白い」と感じます。
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読んでてぞっとしてきます。東京という街にはまだこのような知られざる部分があったとは。今までの東京の地下鉄感を、地下鉄建設の概念も、何もかも代えてしまいます。………まぁ、真偽の程は、誰にも分からないですが、嘘じゃない気はしますね。
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東京の地下の謎を説明する本。2002年。出版社により地図の一部、とりわけ、地下鉄の路線図に微妙なずれがあるところから、著者の地下に対する謎解きが始まる。千代田線や丸の内線などの地下の線路が形成された背景に、戦争時の作戦が絡んでいることや、いわゆる、未成線といわれる路線が多くあることが言及されていて、なかなか面白い。国によっては地図を明らかにしないこともあるので、地下に多くの謎があってもおかしくは無い。
いろいろと文献を参考にして調べられており、著者の熱心さが伝わる一冊。ただし、本当に謎を解明するには政府や建設会社とのパイプを太くする必要がありそう。
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さもありなんと妙に納得させられてしまう本。トンデモ本の一種で、政府の陰謀隠蔽を指摘している。(国は何事をするにも主権者たる国民に疑いを持たれぬ様公明盛大に事をおこなえ。国民の疑問には何もかも包み隠さず答えなければならないのだ。というのが著者のスタンスのようである)
戦前日本には今の銀座線しか、地下鉄が存在しなかっただろうが、免許と計画があったのだからその残骸(建設途上の遺産)が存在したとしても驚かない。ましてや、戦前では首都の地下網などは国防上の理由で軍機中の軍機であってもおかしくなく、またそれが戦後有効利用されること自体おかしくもない。著者の推測のすべてが当たっているとは思えないまでも、かなり真実をついてはいるだろう。だからといって、それが即政府の陰謀隠蔽に結びつけるのは、世代的なものか。懐疑心をなくしてしまった自分達世代の怠慢か。Sの旦那が都営浅草線の下にトンネルを掘っているという話、東急ストア五反田店の入口(地下階段)が妙に地下鉄の入口ぽいのもこれまた秘密の地下網なのかと疑ってしまいたくなるのも不思議なものである。
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僕の小学生時代からの疑問・仮説・想像を文字にしていただいた感。どこまでが真実でどこまでが真実で無いのか?多分このまま闇に埋もれていくのであろう都市伝説なんだろうな。
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「珈琲豆とうつわ 豆いち」おすすめの一冊
(http://samidare.jp/mameichi/)
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霞ヶ関の地下には核シェルターが、東京には秘密の地下鉄がある。有名な都市伝説だ。この本でもその地下網の姿を追いかけているが残念ながら証拠と言える物はない。数多くの証言が秘密の地下通路の存在をほのめかしているが全て匿名であり、これらもそのまま鵜呑みに出来る物ではない。「ムー」や少年マガジンの「MMR」と信憑性は変わらないと言ってもいいかも知れない。それでも、確かに何かあるのではと思わせる記録が数多く残っている。
1919年利光鶴松が東京高速鉄道を設立し、複数の地下鉄路線を申請。当時地下は私鉄の参入が可能だった。新宿ー大塚間が公布されたがこれは22年に新宿ー小田原間の小田急へと変身した。
1927年早川徳治の東京地下鉄道(銀座線)浅草ー上野開通、34年銀座ー新橋間が開通し全線開通となった。
同じ年設立された2代目の東京高速鉄道は東急の五島慶太が実権を握り38年虎ノ門ー渋谷が開通。免許は渋谷ー丸の内と新宿ー築地だったが新宿線は新宿ー四谷見附まででそこから赤坂見附に連絡船を引き渋谷線へ繋ぐ計画へと変更している。丸ノ内線の新宿ー四ッ谷から半蔵門に延ばし、現在の首都高三宅坂JCを経由して桜田門へ、そこから日比谷線で銀座を経由して築地というのが新宿線の計画路線だった。渋谷線も当初計画では赤坂見附は通らず赤坂へと向かう予定だったが地下鉄としてはかなり異例な急カーブを作ってまで赤坂見附を通っている。
渋谷線の新橋への延伸は将来新宿線への乗り入れを目論む早川が複々線化を条件としたが折り合わず五島の東京地下鉄買い占めに発展する。鉄道省の調停を受け早川が撤退41年帝都高速度鉄道営団が設立し2004年東京メトロに引き継がれる。東京地下鉄の西武軌道線は五島が整備し後に西武新宿線となった。また丸ノ内線は戦後51年に着工し54年に池袋ーお茶の水間が開業59年までには淡路町、東京、銀座、霞ヶ関、新宿と着々と開業し、ついで61年に日比谷線、荻窪線が開業し62年には現在の丸ノ内線が全面開通した。64年日比谷線がわずか3年弱で全面完成、66年東西線、71年千代田線、74年有楽町線、78年半蔵門線と続いた。(この本は時系列についてはまとまっていないのでwikiによる)
首都高速については東京オリンピックに合わせて整備された事が知られているが59年に首都高速公団が設立されこの本で問題になる64年10月1日までに空港西から浜崎橋JCー芝、汐留JCー本町、江戸橋JCー神田橋ー初台、三宅坂JC−霞ヶ関が開通した。(首都高HPの首都高の歴史がわかりやすい)
東京の都市計画は1888(明治21)年に市区改正委員会が発足し、1等1類の道路としては昭和通り(上野ー新橋)、中央通りー外堀通り-日比谷通り(湯島ー丸の内ー日比谷)、内堀通りー桜田通り(竹橋ー大手門から桜田門へ堀の上ー虎ノ門)、総武本線の新日本橋ー馬喰町、東西線ー大江戸線(日本橋ー門前仲町ー勝ちどき)、有楽町線(新富町ー月島)など現在の主要道路や地下鉄などに重なる。ただし10年経っても1本の道路も引かなかったとされている。1908年には下水改良工事が「宮内省」の了解を得て計画され3年後に大部分が未完了のまま終了した。
1915年ロンドンはドイツからの爆撃を受け防��壕の必要性が初めて認識された。1920年東京市は次期総理候補後藤新平を市長に選出した。前年に提出した地下鉄計画が内務省に否定され最初に書いた利光と五島の地下鉄に免許が降りていた。10年前に市電を買収し電気局を発足させた後藤に救いを求めたのは、東京市の原敬内閣への対抗策だった。後藤は東京改造計画「八億円計画」を発表し、1922年鉄道敷設法を骨抜きにすると「虎ノ門ー竹橋」間の地下鉄を翌年申請し4月に辞職している。そして9月に関東大震災が起こる。内相になっていた後藤は帝都復興院の総裁を兼務し「これまでどこに道路があったかは考えなくて良い」とし八億円計画をベースに帝都復興計画を予算化した。この年9月から12月までに地下鉄建設計画が殺到している。1924年の東京市議会では「虎ノ門ー竹橋」地下鉄事業は打ち切りとなった。地下鉄は何も出来ていないにもかかわらず予算は使い切りしかも流用はしていないと電気局が答弁している。3月に東京地下鉄網は閣議決定され、その半年後に史上最大の道路工事が実施された。
この時計画された6路線は以下、立ち消えの計画は実は進んでおり、そしてこれら6路線が追加され戦前に完成していたというのが本書の骨格をなす。
第一線 築地ー日本橋ー浅草橋ー浅草ー押上 都営浅草線の前身でほぼ直線
第二線 戸越ー五反田ー三田ー赤羽橋ー新橋ー銀座ー日本橋ー秋葉原ー上野ー千住大橋 都営浅草線〜日比谷線、昭和通り
第三線 目黒ー恵比寿ー六本木ー虎ノ門ー日比谷ー東京ー神田ー本郷三丁目ー巣鴨ー板橋 日比谷線〜丸ノ内線に重なる部分、目黒ー六本木は五島が免許を持っていたがこの後失効させられている。六本木から日比谷までまっすぐ。
第四線 渋谷ー高樹町ー赤坂見附ー桜田門ー日比谷ー築地ー月島 高樹町ー桜田門ー築地がそれぞれほぼ直線。首都高渋谷線と晴海通りが思い浮かぶ
第五線 新宿ー四谷四丁目ー市ヶ谷ー五番町ー東京駅前ー永代橋ー南砂町 新宿〜市ヶ谷は靖国通りとして五番町ー東京駅前は皇居の真下をまっすぐ横切る。このルートに免許が与えられているのだ。丸ノ内線の東京駅から丸ビルと新丸ビルの間を通る行幸通りを和田倉門を抜けてまっすぐ延長するとほぼ半蔵門駅にあたり、そのまま行くと市ヶ谷の自衛隊に行き着く。
第六線 大塚ー池袋ー目白ー江戸川橋ー飯田橋ー九段下ー大手町ー日本橋ー人形町ー大島町 JRー目白通りー東西線ー都営浅草線ー都営新宿線
細かな謎としては大手2社の地下鉄路線が違い続けている事、丸ノ内線の赤坂見附近くで当時メートル法で設計されていたカーブに1カ所だけ戦前使われていたマイル法が混ざっている事、首都高速公団が最初に建設したのが地下駐車場だった事、建設前の地下鉄の始点と終点に突然センチ単位のポイントが現れる事、あちこちの駅に使われていない階が存在する事、普段使わない地下通路ができていることなど。また2・26事件、5・15事件、マッカーサーに地下道は使われたのかという謎掛けもある。
東京の地下にあった防空壕の多くはその後高層ビルの基礎として処理された。東京オリンピックでも首都高の整備とともに多くの道路工事が行われた。では2020年のオリンピックに向けて東京の地下の秘密の一端は見えるのか?信憑性はともかく非常に面白い。時系列が分かりにくいのが難点で、地図の扱いがいまいちなのでGoogleMapが必要だった。それとあまりにもこじつけが過ぎる部分は捨てた方が信憑性がましてたと思う。
このプロットをダン・ブラウンに渡せばロバート・ラングドン教授が東京の地下を走り回るかも知れない。このオドロオドロシさは荒俣宏の帝都物語のほうが似合っているが。