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紙の本
時代に翻弄される小さき者の、大いなる運命
2003/08/25 19:29
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:崇島紫 - この投稿者のレビュー一覧を見る
光の当たらないものに光を当て、目に見えないものを見ようとする。
本書で筆者が投げかけた、小説の試みの一翼を担う「光」と「視線」。
それは、4人の主人公の、運命の『其の一日』の心の動きを哀しく、切なく、照らし出す。
お上のため、お家のため、主のために「良かれ」と企てた貨幣操作の廉で更迭。失脚か、自決かの瀬戸際で、時代に翻弄される男の哀れを清浄な目で描いた『立つ鳥』。夫と遊女の心中ののち、夫の亡骸に口づける養母の姿に、夫と養母の人知れぬ悲恋を知った武家の妻。その心の深淵を書いた『蛙』(夫と心中した亡き遊女の面立ちは養母にうり二つだった……)。堅実な遺戒をのこし、自害して逝った父の真の姿(滑稽本の作者)と実母との悲恋、自らの誕生の秘密を知ってのち慟哭する主人公の、父への深い思慕をしたためた『小の虫』。冬の朝、雪片とともに桜田門外の変に消えた愛人・井伊直弼の数奇な運命を、愛人の女性の目で、溢れ出る叙情とともにとらえた『釜中の魚』。
成功と挫折、生と死、逆境と世嗣、男と女、縁と運命、人の世の表裏、人間の意外性、哀しみと穏やかさ、時代にうねる大小の波、そして、推し量ることのできぬ人々の複雑な心中……。この小説では、江戸に生きる市井の民の、日々遭遇する『運命』が凛とした筆致で凝縮され、歴史小説として昇華している。そして、どれほど時代を経ようが、いかに時を刻もうが、人は時代に翻弄される小さき存在であり、しかし、けれども、その運命は大いなるものであり、自ら運命を自らの手で折り合いをつけようとする人間の、ささやかではありながら真摯な姿に心洗われる思いのする一冊である。
運命の一日に光を当て、人々の心の動きをやさしい眼差しでみつめようとする筆者の澄んだ「目」。芥川龍之介が言うところの「運命は偶然より必然である。 『運命は性格の中にある』という言葉は、けっして等閑に生まれたものではない 」の言葉が蘇る。運命は人であり、宿命は、私たちの世過ぎと生きざまが伏線を敷いているものなのか。
運命の一日。私たちはどうやってその運命に対峙するか。
何よりも、人々の哀しく切ない運命を、瑞々しい心と凛とした筆致で描把した作者の「視線」に感動する。
紙の本
一日が一生ぶん
2003/06/24 10:20
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投稿者:星落秋風五丈原 - この投稿者のレビュー一覧を見る
運命の日は、いつどのようにやってくるか、誰にもわからない。
いきなり苛酷な運命を、ぽいと放り込まれた人もいれば、
じわじわと真綿で首を締められるように、その日を迎えた人もいる。
いずれも終わりの時間に追い立てられ、限りある行く末を、
余裕がない中で、考える。
決意しなければならない事が次から次へとやって来て、心は荒れ狂う海のよう。
まず、やってくるのは、こんな運命を与えられた事への驚き、恨み。
何故私が、私だけが。
そして底知れぬ悲しみ。誰も代わってくれない絶望。
次に彼等は、一体なぜこんな事になったのか、心を旅して答えを探る。
探り当てた答えを手に、思うのは、ただ後悔。
とりかえしのつかない事をした。今ならわかる、あの人の思い。
ああしておけば、ああ言えば、あるいは、今も。
最後の葛藤を潜り抜けた後、彼等はやっと思いを静め、自らの道を決める。
そうして、騒いでいた波は、やがて静かな凪となる。
新井白石に汚名を着せられた勘定奉行・荻原重秀が主人公の「立つ鳥」
不仲だった夫と姑の真実に妻が気づく「蛙」
恋川春町の息子が亡父の死の真実を知る「小の虫」
井伊直弼の運命の日を或る女性の視点から描いた「釜中の魚」
それぞれの、一番長く、濃い一日を描いた時代小説集。
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