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時代とともに科学は進歩し、神の存在を否定しようとするが、その度にまた新たな壁が現れ、神が現れる…
科学vs宗教、これほどドラマチックに、かつ真面目で正確に描けるとは。
世の中の全てを科学で解明しようとする科学者を、神を地上から追放する悪魔に喩えるセンスが素晴らしい。
"私たちがまだまだ無知であることを謙虚に学ぶためには、歴史を読み直すことが一番である。"
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MEMO:
p3
なぜ、このような美しい法則がなぜ成立しているのか、自然の絶妙な仕組みがどのように準備されたかをふと考えるとき、それを神の御技と考える人はいる。
p129
核エネルギーの莫大な破壊力は、地球の論理とはなじまない。地球上で起こっているすべては、原子の世界の出来事である。原子力の利用とは、化学反応による1000度の技術で、1000万度に相当する核反応を制御しようというもの。
p135、p143
カオス:複雑系
ストレンジ・アトラクター:カオスの中にある法則性
p170
人間原理:宇宙の構造すべてが人間の存在を保証するようになっている、という考え方
p173
これまでに地球上に現れた生物の種の99%は絶滅しており、その平均寿命は400万年と推定されている。人間の先祖のホモ・エレクトスから数えて、300万年になるから、そろそろ種としての寿命がきているかも知れない。
p192
対称性が高すぎると、美しさも消えてしまう。
ある種の対称性を備えながら、その一部が破れている場合の方が、私たちの感覚に刺激を与えて印象に残るのではないだろうか。
p195
完全な対称性とは何もないこと(「無」)に通じる
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永久機関の話が面白かった。文系にもそこそこわかりやすいけど要するに簡単にわかった気になるのは禁物というお話らしい
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<無と有 偶然と必然 有限と無限に挑む。>
古来、物理学は何を明らかにしようとし、何に躓き、何がわかってきたのか。
永久機関、宇宙論、パラドックス、量子力学、対称性の破れといった話題を、物理学と神という視点で説く。
物理はHowを語る学問であってWhyを取り扱ってはいない。
例えば宇宙の始まりが「どのようにして」とは言えても「どうして」とは言えない。この視点はなるほどと興味深かった。
その他、個々の話題としては、以下を興味深く読んだ:
・アインシュタイン方程式で記述できる宇宙は「プランク時間」(約5.391x10の-44乗)。それ以前の時間は虚数時間とされている(*この辺、式で理解できないのが悲しい・・・)
・ニュートン力学で記述される運動の中にもカオス現象的なものが含まれる。例えば葉が舞い落ちる場合など。
・カオス現象の中にストレンジ・アトラクターという誘引体があり、軌道にゆらぎがあっても必ずそこを通るという点がある。それとフラクタルが関係しているようなのだが、この辺、もっと知りたいのならば別の本を当たるべきなのだろう(読めるかどうかはまた別だが)
・アインシュタイン方程式に付け加えられた宇宙項は恣意的なもの。宇宙の組成のうち、観測可能なものが5%、ダークマターが25%、宇宙項が担うのは70%である。著者はこれを「危うい科学」と言っている。宇宙になぜ我々が存在するのか』(図書館の順番待ち中)でこの辺、どう解説されているのか、楽しみにしておこう(しかし、ちゃんと読めるかは少々不安・・・)
雑誌連載に加筆したものであり、体系的というよりは、ざっくりエッセイ的である。
*いろんな話題はおもしろかったのであるが。
現代の(あるいは当時の)物理では解決できない「壁」にぶちあたったとき、その理論体系では説明がつかなかった、というだけではなぜいけないのか、個人的にはそこが飲み込めず、いらいらしがちだった。
自分が物理をあまり知らないせいもあるのだと思うのだが。
「へぇ、それおもしろいじゃないですか、じゃあ真面目に考えよう」と思うといきなり神が出てきてしまったりして、何だかそのたび足元を掬われるというか、煙に巻かれるというか。「え、そこで神だ悪魔だって何!?」と何とも居心地が悪く、落ち着いて考えられない。
著者が楽しく書いているのだなというのは感じるが、私はこの路線はちょっと抵抗がある。
それも引っくるめて自分の力不足というところか。残念。
*さらに蛇足だけれど。あとがきで、著者は神を「節回し」にして物理学を語ったと言っている。これは「狂言回し」と言った方がしっくりくると思うのだが。・・・あれ? もしかして、ここでも煙に巻かれてる・・・?
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信仰が物理の見方にかかわり、物理法則の発見が信仰に打撃を与え、両社は深くかかわっているんだけど、あまりにもさらっと書かれすぎ。本全体の印象としては物理史コンパクト版で、「物理と神」について深く考察したとは言い難い。
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http://books.shueisha.co.jp/CGI/search/syousai_put.cgi?isbn_cd=4-08-720174-0&mode=1
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西洋の神は人間を困らせ挑発し翻弄する存在である。人間は自らの無力さを知りつつも、神に対抗しようと身構え反応する。それに応じてさまざまな物語が編み出されていくことになる アインシュタイン:神はサイコロ遊びをしない 中国の古代文献によれば、宇宙の「宇」は空間を意味し「宙」は時間を意味する 二十世紀に入って、太陽系は銀河系の中心ではなく端っこにあることが明らかになってきた
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各章確かに「神」を取り上げているが,それぞれの角度はかなり違うものであるため,とりとめない印象を受ける.一貫した内容ではないということである.
また,各章の興味深さは章によりけりであり,ばらつきが大きい.
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物理学と神の関わりを通して、物理学史を語る本書。
”つまり原子力の利用とは、化学反応による1000度の技術で、1000万度に相当する核反応を制御しようとするものなのだ。そもそも、化学反応の一万倍ものエネルギーをもつ核反応は、生命活動とは本質的に矛盾するものである"
現代物理学は一見神から自由になったかに見えるが、地球における核エネルギーの利用は、そういう意味で神への冒涜なのかもしれない。
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宇宙論と神と内容の重複がないとは言えないが、フラクタルやカオス、対称性のみだれの話がなかなか面白い。対称性は完全無欠を表すが、宗教的象徴が対称性のみだれを持っているのは人間味を持たせるため。完全無欠な対称性を持つのは無の状態。
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東京大学出版会のPR誌『UP』に連載された記事をまとめた本で、物理学の歴史と現代の物理学がとりくんでいる諸問題について、一般の読者向けにわかりやすく解説している本です。
「あとがき」には、「物理学の歴史をたどりながら、それぞれの時代において物理学者が神の名を使って何を表現しようとしたかを提示してみようと考えた」と述べられており、さらに本書ももう一つのねらいとして、「難解そうに見える物理法則の特徴を神の性格に仮託して語ること」があると述べられています。前者の問題について、科学史的なアプローチにもとづいてもうすこしくわしい解説がなされているのではないかと期待したのですが、その点にかんしてはやや期待はずれだったように思います。