紙の本
科学哲学の概要をおさらいできる
2006/07/16 14:26
8人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:萬寿生 - この投稿者のレビュー一覧を見る
疑似科学と科学を区別する基準は何か?。その線引きをするのは科学哲学である。自然科学、社会科学、人文科学、と科学という名前の付いた異なった分野がある。それらについて科学と呼ばれる根拠となる共通項は何か?。これまでの科学哲学者たちによる科学の定義や判定基準にてらして、創造科学と進化論、占星術と天文学、深層心理学と超心理学、現代医学と代替医療、とを比べて、線引き問題について検討している。
禿頭の定義というのが出てくる。仮定(1):髪の毛が1万本ある人はハゲではない。仮定(2):ハゲではない人から髪の毛を一本抜いてもハゲにはならない。この2つの仮定から帰納法により、髪の毛が0本の人はハゲではない、という結論が論理的に導かれる。論理的にはハゲでない人とハゲの人との差はないことになるが、現実にはハゲでないのとハゲとの違いは明瞭である。
この禿頭の事例と同様、これまでの科学哲学における科学の定義や条件では、疑似科学と正統科学を線引きする絶対的基準がない。哲学者が区別できないことでも、常識的には区別できる場合もある。個々の基準や条件では明瞭に区別できなくとも、過去に蓄積された科学哲学の研究成果を総動員すれば、小さな程度の差異を積み重ねることによって、総合的には区別できるようになる。これが著者の主張である。
科学哲学の概要をおさらいするようで、科学哲学の全体的像、歴史、論点、などが頭のなかで分類整理でき、理解できた。クーンやポパーなどのこれまで読んだ科学哲学について、自分なりのまとまりがついた。もちろん科学や学問は常に進歩発展し、過去の業績や成果を乗り越えていくものである。著者自身も軽々しい結論は出していない。
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哲学書のわりにやけに売れたというカヴァの素敵な一冊。全般的にカヴァに力がはいっているというのは内容に期待が持てるのだ。「進化論vs.創造論」から始まり「占星術」「錬金術」「超心理学」「代替医療」などの科学性に言及しており非常にためになります。否定的な証明を遂行することのほうが肯定的な証明を遂行することよりも格段に難しいものなのねということがひしひしと感じられたりして、この手の線引き問題には学問的な態度とはどういうものか、あるいはそういった態度はいかにして形成したらよいのかということを考えさせられるのでした。冬の夜長に月を見上げつつ炬燵で蜜柑でも食しながら悩みたいものですねという楽しい一冊。
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科学の線引きをテーマにした一冊。
普段何気なく科学と認知しているものでも、どうしてそれが科学と呼べるのか。そもそも「科学」とは何か。
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また読まないとね。難しいけど良書。
科学=妥当性・単純性・汎用性
成績はけっきょく良でした。
パラダイム論が好きです。
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科学のありかたと考え方について書かれた本。
第1章は推論の方法が書かれており、
私が読んだ本の中で、
帰納と演繹について1番わかりやすく書かれた本。
第5章の統計についての考え方は、
統計を用いるすべての研究に言える事である。
半年以上前に読んだ本なので、
記憶がアイマイかも。
【キーワード】
帰納、演繹、反証、論理、通訳不可能性、
科学、科学社会学、科学哲学、相対主義
伊勢田哲治、内井惣七、カール・ポパー
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M.ガードナーやカール・セーガンとは異なるアプローチのスケプティクス本。
論理学と倫理学から、詰めてゆく本です。
論理選択方法を列挙し「さ、結論はあなたがどうぞ」な纏めかたなので“決め打ち大好き1行トリビア”派には不向き。
今回期せずして伊勢田さんの本を2冊続けて読みましたが、初心者向けの説明がとても丁寧です。期待効用の説明文などもすんなり入れます。
余談ですがリンク先Amazonのユーザーレビュー内「これは、巧妙な政治的著書である」がナナメ上でちょっと笑えます。
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科学的思考というものを歴史を踏まえつつ要素に分解して説明した入門向け良書。他人の批判、自分への言い訳の妥当性基準にも応用できるはずで、すべての人に読んでもらいたい。
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疑似科学入門がおもしろかったのでこれも読んでみた
疑似科学は歴史的にも論争があったものが多く
宗教的な問題で進化論の攻防が問題だった時期があったようだ
当時の進化論はいまでもどうかと思う点があるものの
いろいろな疑似科学(的な?)ものの例があげてある
自分は統計が苦手なこともありベイズがでてきたりで
やになってしまった
統計のうわつらだけでなくじっくりと勉強するのもいいかも
気力があるときにもういちど読んでみたい
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ferminさん (http://booklog.jp/users/fermin) にこの本を教えてもらったのはもう2年前。やっと読んだ。
とても面白かった。普通に科学を勉強しているだけだと、考えもしない切り口がいっぱい。考えるための武器もいっぱい与えてくれるけど、その武器は僕には重く、使い方も複雑だ。この本を読んだからといって、僕の「科学」と「疑似科学」に対する態度はなんら変わらなかったかもしれない。でも、考えることは大切で。。。
第3章くらいまでは楽しく読めたんだけど、第4章くらいから頭がおっつかねー。でも、第5章のベイズ統計の話は専門の本を読むよりも分かりやすいんじゃないだろうか。読んだことないけど。で、最終的にベイズ主義によって「線を引かずに線引き問題を解決」するというのが結論としてあるので、意外なところに着地した感じ。
ちなみにタイトルは、『「疑似科学と科学」の哲学』ですね。『「疑似科学」と「科学の哲学」』ではないと気づいたのは読み終わって改めて表紙を見てからだ。
文章はとても読みやすい。ジョーク交じりで楽しい。
この本の中ではたくさんの本が紹介されていて、読みたいと思ったものも多かったけど、その中でもいくつかだけメモ。
谷岡一郎『社会調査のウソ』
金森修『サイエンス・ウォーズ』
ロイ・ウォリス編『排除される知』
西村肇 他『水俣病の科学』
チャルディーニ『影響力の武器』
内井惣七『科学哲学入門』
(2011.11.29)
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代替医療については,昔読んだこの本で「えー,こんなのあるんだ!」とびっくりしたのを覚えている。この本は擬似科学について哲学的に面白く学べておすすめ。代替医療以外にもいろいろな擬似科学が紹介されている。
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著者、いちいち人間臭い書き方が持ち味か。
p.149 (原理的なレベルで意見が食い違ってしまっている場合に)「哲学というのはそういう場面で議論を整理してなにがしかのことを言う能力と責任のある学問」
ポパーの方法論的反証主義
補助仮説の後付けad hocの変更。
クワイン「どんな仮説でもどんな観察からも支持される」
決定実験の不可能性。過小決定。underdetermination
観察の理論負荷性。通約不可能性。パラダイム。通常科学。アノマリー。パズル解決。異常科学。科学革命。
「ある科学者集団が共有しているものがパラダイムである」クーン
専門母体disciplinary matrix 世界観や問題設定などいくつかの要素を含んだ広い意味でのパラダイム
見本例exemplar パラダイムの核心となる模範となる回答例
「パズル解決によるアノマリーの解消」という「通常科学」の営みがなければ科学ではない。クーン
ラカトシュのリサーチ・プログラム論。固い核。防御帯。新奇な予言、新しい現象の予測。前進的プログラム:防御帯の変更がどんどん新しい予言につながり、それを成功させていくプログラム。
観察と実験
成熟した科学の理論は近似的に真である。
オッカムの剃刀って切れ味がよすぎるんじゃないの? ベッカムの髭剃りくらいでいいと思う。
日本の科学哲学者は原発、放射能、低線量被曝について語ってるのかな?何を語れるのか興味ある。
工学的設計は科学理論ほど抽象度が高くないので、ひとつの人工物のなかに異なるパラダイムを混在させることも可能だろう。疎結合なサブシステム群として。
ロバート・マートン、コロンビア学派。
科学知識社会学。
標本サイズが大きいと、弱い相関でも有意な結果が出やすい。バイアスの疑いも高まる。
線引き問題で、成功した科学、近代科学(≠機械論的世界観)に分類するかどうかを問題にしている。再現性・操作性の高さにより特徴づけられる。
線引き問題って植民地の「被支配者の屈折した同一化欲望」と「支配者による疎外」の綱引きみたいな問題に似てるなーと思った。
「進歩主義的な結論にするためにはポパーやヒュームを否定して帰納主義を採用する必要があった」という印象の議論。「近代科学の成功は、知的価値において前進してるから成功なのだ」というのが、知的価値=善という補助命題(前提)を置いていて、ぼくから見るとトートロジーな感じもする。
「疑似科学」(あんなやつら)を「科学」の仲間にしたら、科学が「前進」(進歩)してないことになってしまう。だから仲間に入れてやんない。といってるように見える。
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科学と疑似科学の境界設定問題(demarcation problem)を題材に、科学の本質についてたいへん分かりやすく説明している本。科学哲学の入門書の中でも良書だと思う。
本書で扱われている話題は次の通り。第1章は、創造科学と進化論の境界設定を手引きに、帰納法に対するヒュームの批判、仮説演繹法、ポパーの反証主義などの科学的方法論が第2章は、占星術と天文学の境界設定を手引きに、クーンのパラダイム論、Ⅰ・ラカトシュのリサーチ・プログラム論、L・ラウダンのリサーチ・トラディション論が、第3章は、超能力に関する研究を題材に、科学的実在論と反実在論との対立が、それぞれ取り上げられている。
第4章は、代替医療の立場からの機械論的世界観に対する批判を紹介した上で、科学と社会との関係にまつわる諸問題を扱っている。ここでは、マートンの科学社会学、ファイヤーアーベントの認識論的アナーキズム、エディンバラ学派などの社会的構成主義が紹介されているだけでなく、科学に関する政策決定の問題も考察の対象とされている。
第5章の主題はベイジアニズムである。あくまで入門書である本書は、数学的な説明に立ち入ることは避けつつも、仮説の確からしさを扱うベイジアニズムの立場によって、ラカトシュのリサーチ・プログラム論のアイディアを定量的な形で生かすことができることを分かりやすく解説している。
ベイジアニズムに関する話題は京都大学系の科学哲学者の十八番という印象があるが、本書も入門書であるにも関わらず著者自身の立場としてベイジアニズムが前面に押し出されている。さらに科学と疑似科学の境界設定に関しても、「程度」の観点を導入することで、それぞれの疑似科学がどの程度科学的でどの程度非科学的なのかを総合的に判定することが可能だと著者は主張している。
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これは面白い。「科学と擬似科学の間に明確な線引きは可能だろうか?」という問いを中心に置きながら、20世紀における科学哲学の論点を整理していくことで科学的なものの在り方がどの様に変遷していったのかを理解する事ができる。また各章の冒頭に創造科学や占星術、代替医療といった疑似科学を例に挙げられているためか、常に具体例との対比で考えさせる構成になっているためか教科書的な退屈さは全く感じられなかった。あとがきで述べられている「健全な懐疑主義」、まっとうに疑う姿勢とその技術の必要性については心の底から同意したい。
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*****
「科学的」とは何かを哲学的に考える、その探索の過程として「疑似科学」と呼ばれるものを問う。
統計学という探索手法によって担保する、ということがいかに科学のカバー領域を広げることに貢献したかが突き刺さった一冊。
*****
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読書録「疑似科学と科学の哲学」3
著者 伊勢田哲治
出版 名古屋大学出版会
p145より引用
“超能力という目に見えないものの存在を主
張するなら,せめて超能力の実用化につなが
るレシピを示せ,とこういう答えである。”
目次から抜粋引用
“科学の正しいやり方とは?
科学は昔から科学だったのか?
目に見えないものも存在するのか?
科学と疑似科学と社会
「程度」の問題”
哲学博士である著者による、科学と疑似科
学を区別する境界を探る手法を記した一冊。
帰納法から統計的手法まで、科学的に正し
く判断する方法を、具体例をあげて記されて
います。
上記の引用は、超能力と介入実在論につい
て書かれた一文。一部の人だけが使えるだけ
だと、その他の人にとっては脅威になりかね
ないでしょうから、積極的に誰にでも使える
ようになる方法を示してほしいものです。
そういう事が出来る世界を舞台にした、ライ
トノベルがありますね。
物事をしっかりと見つめて、何が本当で何
が間違っているか、慌てること無く対処でき
るようになりたいものです。
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