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グラフィティ・アーティストのルーディ・パスコ―憎悪と鬱屈を抱えたこの若者は、吸血鬼によって恐るべき力を手に入れていた。しかし彼はその傲慢さゆえに、ニューヨークという大都市で生きていく狡猾さを学ばずに、その魔力に酔い痴れるまま殺戮を続けていた。そして起こるニューヨーク地下鉄での連続猟奇殺人。暴走するルーディを狩るため彼を知る者たちが集結、“ヴァンパイア狩り”を開始する……。
ストーリーは単純明快。吸血鬼となったルーディvs人間たちのバトル、それだけだ。「スプラッタ・パンク」ムーブメントの提唱者でもあるこの著者コンビの処女作でもある今作ということで、残虐な殺戮シーンには事欠かないけれども、吸血鬼の特徴は「十字架に弱い」「聖水に弱い」「日光に弱い」と、ブラム・ストーカーの産んだドラキュラの特徴をそのまま継承していて、特に目新しさもない。
しかし、ルーディを狩るという目的の下に集まった人間たち―メッセンジャー会社のジョーゼフとイアン、ルーディの友人スティーヴンやダニー、ルーディの元恋人ジョサリン―その他皆、何かしらの「おたく」なのである(そう聞くと何やらおたくならではのディープな知識を活かした戦略で、なんて展開になりそうだが、その点はさほどでもない)。だがそのおたくぶりが個々の人物造形に面白い色づけとなって、彼等が集結しルーディを狩るために行動を開始してからのスピード感も相俟って、一気に読ませる。
タイトルはクライマックスでその意味がよく分かる。
「エンターテインメントなホラー小説」の好例であると同時に、「典型的な吸血鬼」を用いて成功した最後の作品ではないかとも思える。