紙の本
久々に小説とはこういうものだと感じた
2003/05/18 20:45
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:とみきち - この投稿者のレビュー一覧を見る
松子のモノローグから感じ取れるひたむきさ、愛を求める一途さが悲しい。身をすり減らすことでしか人を愛せない愚かさがいとおしい。岐路に立つと、必ずや不幸につながる決断をする運命が切ない。
作者は、最終的に松子の心を救ってはくれない。読み終えて、本を閉じて松子の生涯をしみじみと思い返すと、心が痛いままだ。
しかし、一見、俗にまみれたその生涯と、聖なる心、その無償の愛ゆえに、かかわった男たちにとって永遠の女性、マグダラのマリアとなって、松子は彼らの心に生き続けている。死んでなお松子は、愛の意味、祈り、ゆるす心を、彼らに考えさせる。「嫌われ松子」は聖なる俗女だったのだ。幸不幸を単純にはかれないからこそ、人の一生は生きる価値がある。
一人の人間が必死に生きる、その重さを描ききった小説に出会えた喜びを、今、久し振りに感じている。
投稿元:
レビューを見る
人から貰った。全く期待せずに読み始めたが、以外に面白かった。古くは山岸涼子の天人唐草、最近では東電OLに至る日常からの転落話。でも設定に無理がありすぎ。
救いって何なんでしょうね。
投稿元:
レビューを見る
小説。伯母がいたことさえも知らなかった主人公が、その伯母が殺されたことによって、彼女の人生に興味を抱き、手探りで知ろうとする物語。伯母松子の、悲しいほどに不幸な人生なのに、自身がひたすら前向きなことが胸を打つ。不幸に遭遇したその分岐点で、どんどん転がり落ちていくような様は歯痒さすらあるが、感情とはそんなもの。どこでどう人生は狂うか分からない、そんな重みを感じる一冊。
投稿元:
レビューを見る
人の生きる哀しさが凝縮された読み応えのある一冊。悩み迷っているときに読んだら、さらにつらくなりました。これぞ読書の醍醐味(?)
投稿元:
レビューを見る
あんまり評価良くない様だけど。私は好き。サクサク読めた。
設定に無理がある...とか考えないで読めば「この人アホだなぁ」っていうのの連続なんだけど読み終えて考えたら、ここまで極端な事はないけど自分も結構人生の選択誤ってるトコあるなぁ、って思った。
投稿元:
レビューを見る
まさに不条理小説。が、とても丁寧なつくりで読者に優しい結末となっている。訪ねて来る知人もないアパートの一室で異臭を感じた住人により発見された松子の変死体。その遺体を警察から引取って来るよう母親に命じられ、会ったこともない叔母の遺骨をもって自室に戻る松子の甥。
物語は遺骨を引き取ったことで「存在すら知らなかった叔母」の人物像に興味を持った甥が恋人と共にその生前を知る人物を訪ね歩き、松子の人生の断片を繋いで行くという形で進行する。
人並み以上の才能や容姿、環境を持って生まれてきたのに、
運の悪さと「ここぞ」という時の判断力の甘さで水商売まで身を落とし、持ち前の華やかさと才能で何度も頭角を現すがその都度悪い男に引っかかってはまた落ちる。そうして歳を重ねているうちに気力も美貌も失われ、晩年はひっそり隠れるように暮らしていたにもかかわらず、最期は通り魔的な集団リンチに遭い、たったひとりで死んでいった松子。
物語のおしまいに、甥が叔母の理不尽な死を想い、やるせない気持ちで落ち込んでいると
壷の中で松子の骨がこつんと音をたてる。この「こつん」というのがカタカナでなくひらがなで書かれていることで、読者は「温かい音」という印象を受け、この1行によって読者は救われる。私には松子が「どうってことないわよ」と彼女らしく笑ったように思えた。やるせないけれど温かさのある読後感。そしてもうひとつ、作者は読者に優しい余白を用意している。松子の生涯で最後まで語られない空白の部分があり、
読者はそこで松子が救われていると、そうであって欲しいと想像することができる。自分だけ救われて松子に申し訳ない気持ちになっている読者には最高のプレゼントだ。
投稿元:
レビューを見る
平本でタイトルに「えっ!?」と思わず手に取ってしまいました。映画にもなるそうです。
人生の中にはいくつも選択肢があって、後になって「ああしておけば」と後悔すること多々ありますが、その典型。
本文中の「自己中心的で、場当たり的で」のくだりは、自分にも当てはまるなあと考えさせられました。俺だってやってるよって…、いかん。
投稿元:
レビューを見る
松子と私の共通点は『女』だということ。読みながら常に思っていたのは、自分だって何かの拍子に松子になるってことだ。これは絶対にありえない物語ではない。私の背中合わせに松子がいる。
投稿元:
レビューを見る
美人で頭もいい、更に器用でもあるのに一つの失敗をきっかけに転がり落ちていく女性の物語。前向きで頑張ってるのに幸せになれない。可哀相というより恐ろしくてゾッとした。登場人物ではめぐみが好き。
投稿元:
レビューを見る
内容は、本当に救いようがないくらい波乱万丈の松子の一生の話です。
グイグイと引き込まれてアッとゆう間に読んでしまいました。
ショッキングではあるけれど、精一杯人生を生きた女性のお話です。
投稿元:
レビューを見る
夢中で読んで気がついたら朝になっていた。これを読んだ当時、私は23歳くらい。松子が人生を狂わせた歳と同じくらいだった。松子はなぜこうなったのか。他人の愛に依存しすぎで「自分」というものがなかったから―というのが、自分の中の結論だったけど、こういう心のスキがある人って多いと思う。自分だって…と、いろいろ考えさせられた。ひらがなと漢字のバランスがやわらかくて絶妙。
投稿元:
レビューを見る
たぶん、映画化される前に読んだ本です。ネットで見かけた「俳優さんのおすすめの1冊」ということでどんな内容か気になり「嫌われ松子の一生」なんていうタイトルにもなんで嫌われたんだろう?と興味を持ち読んだ小説です。単行本でかなり厚かったですが、中身も相当なものでした。
主人公の青年が殺された伯母の部屋の遺品整理をすることになり、松子さんがどんな一生を過ごしたのかを調べ知っていくのです。教師だった松子さんが次々に不幸や災難に見舞われ転落していく人生ですが、どんな状況でも前向きに生きていくのです。悲しいです。
松子さんの波乱に富んだ一生を描いていて、読んだ後の爽快感は全くありません。松子さんの一生をずっと見て一緒に歩んできたような気持ちになり、ずっしりと心に響き読了後は少しの間どんよりと落ち込みました。
読了後、映画化されると聞いて驚きました。このとてつもなく暗い小説がどんなふうに映画になるのだろうかと思いましたが、中谷美紀さん主演のコミカルな作品で、監督さんや映画を製作する人ってすごいなあと感じました。もちろん映画も見ました。
(ちなみに、読書のきっかけになった俳優さんがこの作品に出演されているか気になりましたが、出演されてなかったです。)
「BOOK」データベースより
三十年前、松子二十四歳。教職を追われ、故郷から失踪した夏。その時から最期まで転落し続けた彼女が求めたものとは?一人の女性の生涯を通して炙り出される愛と人生の光と影。気鋭作家が書き下ろす、感動ミステリ巨編。
・山田宗樹さんの作品
山田さんの作品は「嫌われ松子の一生」のほかに「黒い春」「ランチブッフェ」を読んでいます。「黒い春」も長編の小説ですが病原菌を扱ったとてもとても怖いストーリーでした。「ランチブッフェ」は短編集でシュールなストーリーもあり、面白かったです。
投稿元:
レビューを見る
今まで存在も知らなかった伯母の足跡を甥がたどっていく物語。松子がどんな人生を送ったのかは「どうしようもない」「一家の面汚し」という言葉から推測されます。家族に迷惑かけて、男にいれあげて、もしかしたら犯罪も起こしたかもしれない。まずは批判的な目で松子を見てしまいます。でも松子は一途で不器用で一生懸命に生きた人でした。父親から愛されなかったと本人は感じてるけど、本当はちゃんと愛されていたんだと思います。ただそれが見えず、愛され方を知らなかった。家族が久美に寄せる関心こそが愛情だと思ってしまった。それを誰が責められるでしょう。男性との付き合いもそうです。ヒモみたいな男に捕まるなんてバカみたいと思うけど、その愚かさを笑えない。自分にとって最悪の日々を思い出すと、一歩間違っていたら私も松子になっていたのだと気付くのです。犯罪のニュースが流れるたび、私たちは安易に犯人を非難してしまうけど、その理由も知らずに裁く権利なんかない。自分がいかに偏見を持っていたかと思い知らされました。笙が松子の一生をたどってくれたこと、それが何よりの供養になったと思いたいです。
投稿元:
レビューを見る
誰かに殺され亡くなった叔母・松子の部屋の後片付けを頼まれた、甥・笙が、松子の生い立ちを調べて行く話と、リアルタイムでの松子の一生が同時進行で進んで行きます。
最初は時代背景が古くて読み辛いかと思ったけど、段々とはまって行き一気に読めました。
投稿元:
レビューを見る
題名からは、悪女がテーマのようなイメージを思い浮かぶが、むしろ、哀れな女性の物語だった。
松子の行動パターンには、?というところが多かった。
いかにも、男性作家らしい視点で女性を見ている感じで。
私は松子には、正直共感できなかった。
松子が最後の方で、何故みんな私を捨てた?というような呪詛のような言葉を吐くところがあるが、
そういう考え方をしてしまう松子自身こそに
全ての要因があったのではないか、
結局、松子の播いた種のように思えてしまった。