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紙の本
お帰りなさい、宮部さん。
2003/04/21 00:09
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:3307 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ファンタジーを愛せる時期は過ぎたと思っていました。
それは、「箱庭的」な居心地の良さを与えてくれたRPGたち(具体的には、ドラクエや、FFや、ファイアー・エムブレムなど)と疎遠になったことでも明らかで、楽園から追放されたような気持ちが、いつも燻っていました。
そんな郷愁があるなら、本くらいは読めそうなものですが、一大ブームを巻き起こした、『ハリポタ』も『指輪物語』も、波に乗れずじまい。唯一大事に思い続けているのは、『ナルニア国物語』くらいのものですが、数年前に再読したきりで、「本棚に居てくれればそれで安心できる」存在になっています。
だから、bk1で本書の上下巻の予約を開始した時に、宮部さんの作品ってことでつい予約してしまいましたが、読みこなす自信が無くて一旦キャンセルしてもらいました。
その後、大事に参加させて頂いている某MLで、数人の方が情熱的な感想を寄せているのを拝見したことが縁になり、改めて愛蔵版を予約しました。漠然と、「久しぶりのファンタジーだから、『挿し絵満載版』の方が、とっかかりが出来ていいんじゃないか」なんて考えていたのですが、痛快なほどこの予感が的中しました。
実際に届いた本書を手にして、その重さにたじろぎました。まるで鈍器と呼びたくなるような書物で、紙が木から生まれることを再認識させてくれます。重い分だけ丁寧に仕上げられた装丁は、持ち運びには難があるものの、子供の頃に本を抱えるようにして読みふけった記憶を呼び起こしてくれる、嬉しいおまけつきでした。
挿し絵だけでなく、愛情を注がれた丁寧な装丁も、本書の魅力の一つです。
本書は現実世界とまったく関わりの無い異世界で物語りが完結するのではなく、『ナルニア国物語』的に行って帰って成長する物語になっています。また、ファンタジーでしか伝えられないメッセージをきちんと織り込んであるので、安心して主人公の「旅」につき合うことができます。ファンタジーの王道を行くと言って、過言ではないでしょう。
また、主人公を強く育てすぎない点や、旅の仲間、装備、魔法を増やしすぎない点で、黎明期のドラクエ的な魅力を感じました。
その一方で、日本のファンタジー作品の土壌を鍛えた『ロードス島戦記』と比較すると、「ゲーム性(バランス)」の面で、若干弱いかもしれません。
加えて、『ナルニア国物語』と比較しても、C.S.ルイスの「骨格」であるキリスト教に相当するほど体型化されたものは、宮部さんに無い分、世界観の作り込み度でもまだ改善の余地はあるかもしれません。
しかし、そんな点も含めて、私には心地よい世界でした。失った「精神的な故郷(=RPG的なもの)」を、満喫させてくれたからです。確かに本書には「箱庭的」な居心地の良さがあります。
また、ファンタジー作品としてだけでなく、本書の刊行は一連の宮部作品の流れを思うと、とても嬉しい存在となります。というのは、そもそも私は、『魔術はささやく』で宮部さんの存在に衝撃を受け、『パーフェクト・ブルー』や『ステップファザー・ステップ』(『龍は眠る』も欠かせません)を読むごとに宮部ワールドに夢中になった経緯があります。
そんな私にとって、宮部さんは「少年を生き生きと描ける、数少ない作家」の一人なのです。
だから本書は、ゲームへの強い愛情と、多くの優れた物語を世に送り出したことで獲得した評価をひっさげて、得意な「少年モノ」に帰ってきてくれた「凱旋作品」のように映っています。
宮部さん、少年モノにお帰りなさい!
#いつの間にか失っていたファンタジーへの扉を、
#この作品が開いてくれました。今なら、読めそうな気がするので、
#本書に続いて、子供の頃から気になり続けている
#『ゲド戦記』に挑戦するつもりです。
紙の本
宮部みゆきがファンタジー小説を!!
2003/06/30 16:44
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ヨムヨム - この投稿者のレビュー一覧を見る
宮部みゆきの最新作ということで、なんの心の準備もせずに読み始めた。いつもの宮部作品のひとつだと思っていたのに全然違っていた。これは子どもも読めるファンタジー。ロールプレイングゲームの世界を描いているようだが、今子ども達に大流行のファンタジー小説そのものではないか!
私は現在、小学校で仕事をしているのだが、亘を襲う現実の不幸は今や子ども達にとって特別に珍しいものではない。親の都合で、子ども達が当たり前のように思っていた平和な世界を壊され、子どもも壊れていくということを何度も見てきた。母が自分を置いて出て行くという相談をしているのを小耳に挟んでしまって、毎日、腹痛になり学校へなどとてもいける状態ではなくなってしまったA君。彼は家で母が自分を置いて出て行かないか監視するという仕事をこなさなければならない、学校へなど行ってられないし、本当にお腹が痛くなるのだ。そんな状況の中、周囲の人間は彼に何をしてあげれるだろう。現実を変える力など誰にも無いのだ。亘のように冒険の旅に出て魔法の剣で自分自身で未来を切り開かなければならない。この本をぜひ子ども向けとしても宣伝してほしい。小学校高学年なら充分読めるはずだ。この本が子ども達の魔法の剣になることを願っている。
紙の本
厚くても一気読みしてしまう1冊
2003/06/13 13:36
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投稿者:PNU - この投稿者のレビュー一覧を見る
小学生のワタルは、理屈屋の父と教育ママの間に生まれた一人息子。しかし、彼の家庭にショッキングな事件が起こる。とまどうワタルだが、そのころ学校でも美貌の謎の転校生と、不良グループの間に問題が持ち上がっていた。転校生ミツルに結果的に誘われ、ファンタジーの世界「幻界」に入ったワタルは、たどり着いたならば一つだけ願いを叶えてくれる女神のもとへ旅することになる。
R.P.G.的展開のファンタジーであり、曲がったことが嫌いなよい子のワタルは攻略本の理想コースをたどり、ワタルよりも事情が逼迫したミツルはバッドエンディング目指してひた走る…という物語。こう書くと無味乾燥のようだが、居心地の良い宮部ワールド、キャラクターの魅力に定評ある著者のこと、飽きさせずスリリングに物語を進めてくれる。ゲームとこの作品の違いはというと、〈背負っているものの重さ〉ではないかと思う。いつでもリセット出来るゲームと異なり、命を失うかもしれない旅をする理由があるということ。その理由が無ければ、ただの物見遊山のお気楽な旅となっただろう。そんなのんきな旅を描き、小説的ファンタジーとゲーム世界との違いを誇張してみせて、コメディに仕立てることも可能だったろうが、宮部みゆきはそうしなかった。真剣に物事を受け止める覚悟を持たせるために、上巻の多くのページを割いて、少年たちに現実部分での過酷な体験を負わせているのだろう。
読んでいる途中で、ラストがどうなるかがほの見えてしまい、予定調和に終わったところや少々道徳的過ぎというか、説教ぽいところが残念。しかし、途中まではちゃんとワクワクさせてくれます。とくにファイアードラゴンのジョゾ君が出て来る場面は、どれも非常にユーモラスで大好きです。
町やヒトのネーミングは、これまた和洋折衷という感じで…日本語あり、英語あり、よくわかんないのあり、というか。イケてるのとイケてないのの差があったりします。梨木香歩の「裏庭」でも思ったけど、和製ファンタジーはネーミングに苦労するようです。
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