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紙の本
昭和をつくりあげた作家
2003/02/20 02:02
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投稿者:クローニン - この投稿者のレビュー一覧を見る
昭和の映画を見ていると驚く。
たとえばいま、小津安二郎の発見された全シナリオ47本を読み返し、さらに発売されている監督作品35本のすべてを見終わったところだが、戦前には「喜八」に代表される生活者が、戦後には「平山家」に代表される文化人たちの日常が描かれていた。
これはあたかも林芙美子の作品群をなぞるかのようである。
かつて一巻からほぼ時代順に並ぶ、あの悪評高く誤植の多い彼女の全集を読んだことがあるが、その経験から言うと、どんどん彼女は知的になっていく。文章もおとなしくなっていく。逆にいうとつまらなくなっていく。だが、じつはそのパワーは衰えたわけでは決して無い。
彼女のオーラは、昭和の映画に乗り移っていったのだ。大衆を愛し、いや大衆そのものであったひとりの職業婦人である林芙美子は、みごとに映画作品のなかに、出演者として観客として、移植された。媒介者はおもに成瀬巳喜男だが、そのゆえに彼女の人気は昭和40年代前半までは保っていたのである。
そして、ひとつ言っておく。昭和40年代後半以降は、本書の著者、川本三郎のいうように、じつは昭和ではないのである。
そう、西暦なのだ、1970年代なのである。
本書は映画と文学をトランスする昭和文化研究のまさに名著、悪文家の前田愛のなしえなかった、庶民のためのカルチェラル・スタディーズの一冊。
一億総「平山家」の現在、「喜八」を忘れぬためにも、全国民必読の本であることは疑い無い。
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