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紙の本
書評
2003/03/17 17:26
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投稿者:東京工業大学大学院非常勤講師 丸山正明 - この投稿者のレビュー一覧を見る
知的財産が最近、なぜ重要視されているのかを、理工系で学ぶ大学生・大学院生向けにやさしく解説する入門書。
現時点では、多くの大学は特許などの知的財産について、体系立てて教えるプログラムを持っていない。その一方で、理工系の学生は卒業し製造業に就職すると、すぐに特許の明細書の書き方を教え込まれる。こうした知的財産についての知識のギャップを埋める分かりやすい入門書である。
大競争時代に入り、日欧米の先進国は特許や著作権などの知的財産を重視するプロパテント政策に軸足を移した。グローバルな製品開発競争は激しくなるばかりで、研究開発コストが高騰し、従来のように事業の単純なビジネスプランでは採算がとれなくなっているためだ。日本の総合電機メーカーは、結構性能のいい高付加価値製品を販売しながらも、事業利益を上げることができす、赤字を出し続けている企業が多い。
例えば、DVD(デジタル他用途ディスク)プレーヤーは、かなり廉価な製品がすぐに出現し、事業収益を上げられずにいる。製品開発の研究開発には成功したが、事業化のための戦略構築には失敗したためと推論されている。こうした事態を避けるには、特許出願などの知的財産マネジメント戦略が重要になってきている。本書は、この知的財産マネジメント戦略の重要さをしっかりやさしく教える教科書である。
本来、モノづくり企業は、廉価で品質のいい製品・サービスを供給することを目標とし、事業化を展開している。世界の工場となりつつある中国や東南アジアは技術力をつけ、日本に比べて10分1以下の安い人件費でかつ優れた技能スキルによって、単純な製品では日本のモノづくり企業は太刀打ちできなくなっている。
日本は、高性能・高品質な高付加価値製品に活路を見出すしかない。しかし、高付加価値品はハイテクノロジーの塊となっており、簡単には開発できず、それだけの研究開発コストがかかる。やっと入手した研究開発の成果を真似されないためには特許などの知的財産として権利化し、ライバル企業が簡単に追従できないようにしないと、事業で採算がとれなくなる可能性がますます高まっている。事業で採算がとれなければ、次世代の製品・サービスを研究開発する資金が無くなる厳しい時代を迎えている。
このため、日欧米の先進国は知的財産を重視する知財国家戦略を立て、体制整備を続けている。日本は、知的財産について教える教育プログラムがほとんど無かったため、実は教える人材も不足している。このため、本書の著者5人は、2000年から知的財産マネジメント研究会という私塾をつくり、毎月1回土曜日に勉強会を続けてきた。知的財産にかかわる人材育成を目的とした勉強会である。
本書は、この研究会で講演・議論された内容を基に書かれた。一度口答で説明した内容だけに、やさしく語りかける平易な文章になっており、読みやすい。また、研究開発者が特許を出す意味などを実務に即して解説する内容など、実務で直面する内容に答える構成になっており、この点でも知的財産にかかわる一連の実務を理解することができる入門書に仕上がっている。これまで日本では「技術移転」という知的財産の受け渡しをきちんと理解しないまま、企業は事業を展開してきた。この技術移転とは何か、なぜ大事なのかがしっかりと説明されている。この点で、知的財産に直接かかわる方ばかりでなく、研究開発や事業戦略を練る方々にもお奨めしたい1冊である。
丸山正明:東京工業大学大学院非常勤講師
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