紙の本
思考実験書としては文句なしに面白い
2003/06/29 21:59
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投稿者:べあとりーちぇ - この投稿者のレビュー一覧を見る
比室アリス。あまりにも危険なそのサヴァン能力のために、地下深く作られた秘密のシェルターに幽閉されて眠り続ける美少女。彼女がその眠りから目覚めて歌い始める時、7年前、60人あまりが犠牲になった「瞭命館パニック」の悲劇がふたたび繰り返される…。
野暮を承知でアナログを想像すると、さしずめ「一般的CPUの処理能力をはるかに超えた質・量のデータを、一種の圧縮コードを使ってムリヤリ食わせたらハングってしまった」というところだろうか。
人間の脳はそう簡単にはリセットできないのだから、これは怖い。物語前半で畳み掛けるように描写される意識の崩壊シーンのイメージは圧倒的である。虚無から湧き上がる白い蝶の大群と虹の乱舞も、美しいだけにぞっとする恐ろしさに満ちている。中井拓志氏独特の文体に違和感のない人ならば、この部分だけで一級のパニックホラーである。
ただ後半に関しては印象が分かれるだろう。
登場人物の口を借りて「言葉により世界が崩壊する」という現象の論理的解説がなされるのだが、その論拠となっているものは言うなれば「擬似脳科学」「擬似認知科学」なのではないだろうか。
その辺を踏まえつつあえて挑戦を受け入れられる人にとっては、ここはまたとない思考実験のチャンスとなる。しかしこの前提に引っかかりを感じる人は、何かしら肩透かしを食ったような未消化なものを感じてしまうかも知れない。
恐らく中井氏としては確信犯的にこういった手法を採っている。だからあえて乗せられてみるのが本書の正しい楽しみ方であると言えよう。だが、ホラーとしての完成度を追求するとすれば、論理的解決はつけずに「なぜアリスの歌が致命的威力を持っているのかは一切不明」でも良かったように思う。
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とにかく 何がなんだかわからない。
読んでいる最中も 読み終えた後も どことも知れぬ空間に裸で放り出されたような頼りなさ 心細さ のようなものに捕らえられ続けている。
それがすべて たった一人の生きているのかどうかさえも定かではない少女によって引き起こされたことなのだ。
文庫の要約の一部を__
――95年8月、東晃大学医学部の研究棟、通称「瞭命館」で60名を超す人間が
――同時に意識障害を起こす惨事が起こった。
――しかし、懸命の調査にもかかわらず、事故原因はつかめないままとなった。
――それから7年――。
比室アリス。それがその少女の名である。
脳の左半球が萎縮した少女。
その萎縮の影響で重篤な精神発達遅滞に陥った少女。
何も「観察」しない少女。
世界を「無視」した少女。
にもかかわらず、突発的に人を惹きつけて離さない異常な「笑顔」を放つ少女。
彼女は 【9.7次元を舞う無限の蝶を捕まえる】 という この世界に生きていると思い込んでいる我々には到底理解し得ない世界観を持っているのだ。
一生懸命理解しようとすればするほど 理解から遠のいていく気分に陥る。
理解できなくてもいい。言葉を使って互いに理解し合えるという幻想に囚われたまま この世界に生きていられるなら 私にはそれでいい。
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角川ホラー文庫から出てるけどこりゃホラーじゃないよなあ(笑)。
でも話は面白いです。アリスという少女が開く全く異なる次元の世界。
目の前に広がる『世界』は同じなのに、それを『認識』する手法が違うと全く別のものになってしまうという不思議さ。
ちなみに電車の中で読んでいたらあまりにも疲れていてすごい睡魔に襲われ、読む側から文章が零れ落ちていくのに、思わず「ああっこれがアリスの異次元!?」とか思ったり(笑)。
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たしかにホラーなのだろうが、理解するのに必死で恐怖感がまったく伝わらなかった。私の頭が悪いだけかも。『9.7フラクタル次元で無限にアゲハ蝶を捕まえる』ん?『逐次処理を行わず法則性を一瞬で見抜いて一気に畳み込む』んん?一つ一つの単語の意味は解らんでもないが(いや、やっぱり解らん)、文章として(さらに)理解できない。しかしながら、理屈っぽい話が大好きな私は、訳が判らないまでも、面白いと感じてしまった。
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99年2月、千葉にある「潜在能力研究所」で「右脳開発セミナー」参加者に集団的な意識障害が発生する。現場に送られた、近くの総合病院の研修医・三國は、患者たちの症状を側頭葉癇癪と診断するが……。
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久しぶりに中井さんのを読み直しました。彼の文章は、好き嫌いが分かれると思います。が、僕は大好きです。
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世界を笑顔ひとつで簡単に壊滅させてしまう能力を持った少女「アリス」(なんてやつだ!!)を巡って大人達が大慌て。
科学用語やらが出てくるので読後はちょっと頭良くなったような気がする作品。
全然ホラーっぽくない。
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実はまだ読み終わっていません。
でも読み応えがあってなかなか面白いです。
評価は読み終えたあと、変更すると思います。
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医学用語が多くて用語の意味が分からず読んでいる部分もあって難しかった。それでも、引き込まれてしまうくらいに面白かった。アリスの世界、大人は全く理解が出来ず死んでまったり混沌の世界から戻って来れないなか、子供は対応しアリスの能力を吸収してしまうという辺りに小さい子を持つ親として引き込まれてしまいました。
子供ってすごい能力を秘めてますよね・・・。
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背表紙にはホラー文庫、とあるが
AKIRAっぽいSF風パニック系?みたいな感じ。
序盤はなんだかわからんが
とにかくアリスって恐ろしい、てことで進んでゆく。
その世界観は面白く
フラクタル次元の概念とか
物事の捉え方みたいなところの解釈は独特。
現実と物語をあやふやに交差させ
一気に引き込んで行く。
が、中盤あたりから雲行き微妙。
とてもとても説明的な会話が延々続き
謎も一気に解決?なことに…
アリスの超人的な力を
科学的に、論理的に説明したかったのか
知らないが
もう、脳の部位やらなんやら
理屈っぽくアレコレと続くサイエンスにウンザリ。
内容は重複してるは
文法おかしいはで
なんですか!と言いたくなる衝動に駆られてしまう。
全体の流れやアリスと
ストーリーの絡み方にも物足りなさが残る。
序盤の感じで言えば
もっと恐ろしく、凄まじく、とんでもないことに!
なる様相だったのだが・・・
残念と言うほかない。
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2007or08に読了したけど、面白かった。
サイエンスホラーって位置づけになっているけど、ホラーというよりも、ちょっと得体知れずで不気味なかんじかな。
謎解きが出てきますし、ミステリ要素もあります。
何より内容が生き生きしてるし、スケールが壮大。
そして・・・中井拓志の終わり方はいつもきれいに納得して終わる。
お気に入りの中のお気に入り。
Life, what is it but a dream?
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9.7次元っていったい何なのさ。たかだか低俗な1次元に生きている私には到底理解できない。……といった感はあるものの、かなり面白く読めた一冊。ホラーとしてはあまり怖くはなかったのだけれど、イメージが非常に美しくて印象的。9.7次元に舞う無限の蝶って、ぜひとも見てみたいなあ。たとえそれでこの世界が崩壊するとしても。
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アリスという一人の少女を巡る物語。幽霊の出てこない科学的ホラー小説です。脳科学に基づく難しい言葉や概念がたくさん出てきますが、理解できないという程ではなく、心地よい程度の小難しさを感じながら読めました。自分が7歳のとき、そして14歳のときは、何を感じて生きていたであろうか・・・それがもううまく思い出せません。
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95年8月、東晃大学医学部の研究棟、通称「瞭命館」で60名を超す人間が同時に意識障害を起こす惨事か起こった。しかし、懸命の調査にもかかわらず、事故の原因は掴めないままそれから7年。国立脳科学研究センターに核シェルター級の施設が建造されていた。そこはアリスという少女を監視・隔離するためのものだった。世界を簡単に崩壊させる彼女のサヴァン能力とは…。
青色サヴァンの誰かもビックリな能力を、脳科学の見地から紐解く壮大なスケールで描く。
アリスの持つ『世界をフラクタル次元で一括処理する能力』の意味とは一体。
後は読んでください。
これはかなり面白い。
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古書購入。
ホラーというよりSF。現代。サヴァン能力と異次元。
読んでいて、つい「夢の樹が接げたなら」を思い出してしまった。
眠り続けさせられた比室アリス。十四歳の少女。7年前、六十人以上を精神障害に叩き落し、二人しかまともな生活に戻ってこれなかったという、惨事を引き起こした化け物。
彼女が笑い、歌うとき、世界は滅び去る。
通常世界が1次元と表される時、アリスが表現する世界は9.7次元。
理解しきれない高次元の言語を押し付けられた者は、「わたし」や「世界」を見失ってしまう。
ある日、アリスは起きだして、笑い、そしてSと呼ばれる現象を引き起こす。
それは歌うこと。ただそれだけ。無限に増えつづける虹色の蝶。
完全防音の巨大ドームから手違いから外へと運び出されたアリスは、夏休み中の住宅地に解き放たれてしまう。
読みやすいけれど、わかりにくい(笑)
でも好きだな、この話。
アリスを閉じ込めておいた権藤という責任者は、かなり良い人。こういう話で、文部省の手先だったりすると、必ず嫌な人だったりするのだが。
そう。嫌な奴、っていうのが出てこなかった。だから読みやすかったのかも。