紙の本
「ちゃんと読む」ことから逃げない
2007/02/12 02:51
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:tsumei - この投稿者のレビュー一覧を見る
大学の英語の授業というと、まあたいていは退屈なもので、「あんなだから日本人は英語ができないんだ」という言い訳に使われているのが関の山です。しかし考えてみれば、まともに読めなければ聞き取れない、聞き取れなければしゃべれないわけで、逃げてないでちゃんと読む力をつけましょうという主旨の本です。
第1章は日本人と英語について、あるいは現在の英語教育についての筆者の考え方。簡単に言うと、日本人は会話力が弱いとかいうけど、読むほうだってアバウトでろくに読めてないじゃないか、というような話です。第2章は、じゃあ読む力をつけるにはどうすればいいかということで、筆者は比較的やさしいものを多読することを薦めてます。
本書のキモというべきは次の第3章、第4章で、英文を読む際のヒントが、具体的な例とともに豊富に解説されています。言っていることは、自動詞と他動詞をちゃんと区別しろとかとか、文脈から判断しろとか、いわば当たり前のことなのですが、特に「文法なんていい加減でいい、とにかく慣れろ」などという言葉の甘い誘惑に毒されたいい加減な学習者にはそれがなかなかできない。本書では、実際に出版されている本の誤訳を指摘しつつ、正確に読むということがいかに大事かを説きます。このあたりは、その人のレベルにもよりますが、英語をまじめに読みたい人にはかなり有益なのではないかと思います。
全体の5分の2を占める第5章は、長文を4つ解説付きで。コンラート・ローレンツとかル=グインとか、選ばれている文章は確かに面白いんですが、肝心の注は、大学の英語のリーダーのような、イディオムの訳を中心としたもので、第3、4章のように、もう少し踏み込んだ解説を付けてくれればさらに良かったと思います。
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お手軽な英語学習論とは真逆。丁寧でしっかりした英文解釈こそが理解を深めると、真っ向から説く。とっつきは悪いが、説得力は凄まじい。かなり突き放した論調だが、非常に興味深い。
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小谷野敦氏推薦。氏は「大学院で行方先生の授業に出席して、初めて目から鱗が落ちるように英語の読み方が分かったのである。」(『評論家入門』138頁)
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第一章:日本人と英語の関係→いままで読んだ中で日本人の英語へのツッコミが最も激しい。
第二章:基本となる英語力をどのように向上させるか→retold版を多読しろ
第三章(本の中核):英文を正しく理解するための12のヒント。
1.気軽に辞書をひけ
2.文脈、前後関係
3.一般常識、勘、想像力
4.描出話法の扱い
5.仮定法への配慮
6.時制の重視
7.イディオムに注目
8.自動詞と他動詞、比較級の否定など
9.文と文の関係
10.筆者の姿勢と文の調子
11.論理的な整合性
12.深く読む楽しみ
第四章(未読):翻訳術入門
第五章:長い、まとまった中身の濃い文章4篇。
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ある程度、自信をつけてから取り組まないと後半がきつい。
読み物としてなら楽しむだけならまだしも、この本を通して成長するには事前に相応のレベルが求められる。
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最後の長文の説明が欲しかったと思う。20161101再度、読んだが長文の部分をほとんど覚えていなかった。
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分かりやすかった。長文読解に本の後半を費やしてあって、でもこれがなかなかに面白く、久しぶりに学生時代の教科書に触れた気分を経験。当時の自分ならどれくらい読めたのか、調べようがないんだけど、とても気になった。
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東大の名誉教授で「翻訳と英語教育のベテラン」(カバー袖)である著者が、正しい英文解釈のために有効な勉強法、実際の英文を読む際のポイント、なぜ誤訳が生じるか、良い訳とはどんな訳かを指南してくれる本。最後にはローレンツの訳本からの抜粋「ハイイロガンの春夏秋冬」、「水門で」という短編、ゲド戦記の著者による『イシ』という本の序文、サマセット・モームの「サミング・アップ」の抜粋という4つの長文が載っており、注釈・翻訳付きで読める。
特に第4章の「英文解釈から翻訳へ」という部分を読むと、結構自分の英語力が診断できるかもしれない。いくつかの「誤訳」が載っているが、まずそれが「誤訳」と見抜けるのかという問題があり、そしてなぜそのような誤訳が生じ、どうやったら防げるのかということについて考えることができる。正直、結構「この訳の何が悪いんだろう」と思ってしまい、解説を読んで、ああそうかと思うところばっかりだった。大学生の時からずっと思っているけど、ほんと正しい英文解釈というのはとても難しいし、圧倒的な英語の読書量を達成した人だけが達することができる領域だろうと思う。「英文法の基礎力もない訳者、勘を働かせる能力のない訳者が相当存在していると考えざるをえない。」(p.123)、そして「結論からいうと、日本では英語を専門とする人びとの中にも、真の英語力を持っていない者が少なくないという嘆かわしい事実を認めなくてはならない」(同)ということで、おれも教科書とか模試や入試の英文をひたすら読むくらいでは全然及ばないということをあらためて感じた。サマセット・モームなんか自分は読んだことがないので、行方先生の訳本を横に置いて、原文を楽しんでみたいと思った。最後の4つの長文については、そのモームを除いては、そこまでの章で扱われた英文よりは若干簡単だった気がして、高2くらいの生徒でもなんとか読めるかもしれない。特に「水門で」という短編の物語は、高校生が読むのにちょうど良い気がする。モームは優秀な高3生くらいと読むのが良いかもしれない。
英語について、言われてみて気づいたことは、まずI should thinkという表現。「I thinkをshould thinkとすると、断定を避け、控え目な表現になる。日本語なら『思うけどね』というような感じ。shoud have thoughtは過去になり『思ったんだけど』くらい。」(p.76)というのは、高校生くらいだったら普通に誤訳しそうだと思う。「初めに一回過去完了形を用いれば、そこから話が過去よりもっと前の大過去に及ぶという合図になり、その次の文からは過去形にすればよい」(p.81)というのは、あまり学校で教えない気がする。あと分詞構文でfollowing...と続けば、それは「大体afterと同じ意味の前置詞と取ってよい」(p.155)し、followed by...と続けば「次に~が続く」(p.159)というのは結構便利な知識だと思った。(19/07/07)