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みんなのレビュー7件

みんなの評価4.0

評価内訳

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  • 星 1 (0件)
4 件中 1 件~ 4 件を表示

紙の本

楽園は人質生活にあり?!

2003/09/11 11:06

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ぶりゅん - この投稿者のレビュー一覧を見る

オペラが好きなので、題名に惹かれて読んだ。ペルー大使公邸占拠事件をネタに、閉ざされた空間での人間模様を描いた作品。普通なら極限状態に置かれた人間の醜いところ—たとえば、自分だけは生き残ろうとするために媚びたり、仲間を裏切ったりする様子、あるいはメソメソと泣き暮らすさま、それとも、そこに新たな権力構造が生まれて、というような、いずれにしても、平和な日常の行動様式をかなぐりすてた人のもがき苦しむ様相が描かれることを期待するだろう。

しかし、この作品中での人質たちはほとんど悩むことなしに、事件によって生まれた日常業務から隔絶された閉鎖空間と有り余る時間を楽しむようになるのだ。忘れていたささやかな喜びを各国政財界のエリートが発見し、オペラ歌手とソニーを思わせる日本企業の社長さん、社長さんの超有能な通訳氏とインディオ出身のゲリラの少女兵士という2つの恋愛が静かなクライマックスになる。ただし、庭仕事に喜びを感じるようになる副大統領が一番うまく描けていると思う。

悩まないことはゲリラとて同じで、日頃の思想教育はどこへやら、テレビやジェットバスをはじめ屋敷にある贅沢な品々を享受する。指揮官の数人以外はゲリラ兵士は少年と少女ばかりなので、こうした行動に出ても微笑ましい限りである。オペラ歌手とゲリラ少女が髪を梳きあうさまなど、「フィガロの結婚」の伯爵夫人とスザンナにたとえられているが、このあたり迄くると、話を楽しむのにストレスを感じるようになる。

結末はもちろん現実と同様に救出部隊が踏み込みゲリラを射殺、と相成り、ファンタジックな世界に幕が下ろされる。救出部隊突入の描写はもっと研究の余地があるかも(まあ、読者層が違うから構わないか…)。

こんなことがあったらいいな、と思いながら読むのなら十分楽しめる小説であるし、随所で言及されるアリアも楽しい。だが、最後の最後まで、ハッピーエンドにこだわる構成にはどうしても納得がいかない。え、なんでこの二人がいきなり結婚するの?と当惑しない人はいないと思う。どうやら登場人物たちは閉鎖空間に悩まないばかりか、恋人の死もすぐさま克服できる人たちのようだ。これには大時代がかっているといわれるオペラの台本作者たちもびっくりするに違いない。

なお、日本人としては、当然、作中での日本人の描き方に興味をそそられる。かつてのようなステレオタイプからは救われていて、ほっとするが、それでもどこやらぎこちない存在らしく、珍しい生き物の恋愛が扱われているような印象も得た。要するにこれは深く追求しないでも安心できる人のための恋愛小説である。

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紙の本

ペルーの日本大使公邸占拠事件を下敷きとして、破綻なく見事に構成されたレベルの高い虚構作品である。一読の価値ある美しい小説である。PEN/フォークナー賞。だが、しかし…。

2003/06/17 11:03

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:中村びわ(JPIC読書アドバイザー) - この投稿者のレビュー一覧を見る

 南米の発展途上国に起きたテロ事件の顛末を、丹念に描いた小説である。テレビで1996年のペルー日本大使公邸占拠事件の報道を目にした作家が、「劇的な展開にまるでオペラを観ているような気がした」と、強烈な印象を受けた。そのために、オペラをモチーフとして取り入れることにした旨、訳者あとがきに書かれている。
「ああ、これだ」と、読書中の違和感の正体をそこでつかんだ気がした。

 リリック・ソプラノのロクサーヌ・コスによるパーティーでのコンサートが終わるところから物語は始まる。主賓は、日本のエレクトロニクス企業の社長ホソカワ氏。外国からの援助に頼るこの小国が、優良日本企業の工場を誘致せんがため、国力を賭けて最高の接待を用意した夜であったのだ。
 会場は副大統領の官邸。タキシード姿の各国要人たちがカクテルドレスで礼装した夫人と結構なディナーや洒落た会話を楽しみ、奇跡のように美しい歌姫の声に酔い至福の悦びを味わったあと、テロリストたちの乱入という事件に見舞われる。
 テロリストたちの誘拐ターゲットたる要人がたまさかのハプニングでそこに居合わせなかったため、官邸は占拠され人びとは長い幽閉生活に入っていく。
 犠牲者なく人質は無事救出されるのか。どのぐらいの占拠期間のあとで、警察や軍隊はどう突入を図るのか。過去のいくつかの立てこもり事件を考えれば、終末にいくつかの死があるだろうと漠と思い、「展開はどうなる?」「どのような決着を迎える?」と興味を惹きつけられ、400ページ近い物語が退屈なく快調に進んでいくことに満足を覚える。

 ただ、「ついにその瞬間」を待ってテレビ画面を見守るのとは違い、この小説では外部の描写がまったくなく、官邸内部の立場の違う人びとの様子だけが描き出されている。そして、そこに現出される世界は、私たちが普通に想像する幽閉生活の悲惨さから、少しずつ食い違っていく。
 時間がもたらす慣れの働きで拘束の度合いが徐々に解けていくに従い、社会的地位を確立し多忙に日々を過ごしていた要人たちは、人生における安らぎについて感じるところが出てくる。貧村出身の年若きテロリストたちは、知的で洗練された大人の人質たちとの交流で、音楽や語学、料理などへの興味、さらに憧れからくる愛情といったものを引き出されることになる。そこが本来どういう場所であったかを皆に忘れさせてしまう象徴が、オペラ歌手コスの歌声なのである。
 彼女をはじめとして、ホソカワ氏、通訳のゲン、副大統領、テロの指揮官、調停役、若いテロリストたちなど多くの人物たちの性格や言動、思いといったものが繊細に書き込まれているため、彼らが織り成すドラマに大きく心を揺さぶられる。

 だが私には、どこかぽっかり抜け落ちているような感覚がずっとつきまとった。いつかどこかの世界で、このような聖域でのドラマは有り得ないことではなく、立場を越えた根源的な愛の存在も認められる。でもテロというものは、こんなに平和でオペラみたいに展開していくものではない。「相互理解」を厳然として阻むものがあるからこそ世界中が頭を抱えている。テロを描くのなら、作家は根源的な闇の存在にしっかり切り込んで行かなくてはならない。テロを借りて「愛」を語るのは、何か違う。あのフォークナーがノーベル賞の賞金を元に創設した賞であるならば、人間の闇を描くためにもがいた小説こそが顕彰されてほしかった。

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2018/08/09 18:01

投稿元:ブクログ

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2018/12/23 11:52

投稿元:ブクログ

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