- 現在お取り扱いが
できません - ほしい本に追加する
- 予約購入について
-
- 「予約購入する」をクリックすると予約が完了します。
- ご予約いただいた商品は発売日にダウンロード可能となります。
- ご購入金額は、発売日にお客様のクレジットカードにご請求されます。
- 商品の発売日は変更となる可能性がございますので、予めご了承ください。
1 件中 1 件~ 1 件を表示 |
紙の本
超長寿企業を範として現代企業に警鐘
2003/05/20 10:54
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:日経BP社 編集委員 木村功 - この投稿者のレビュー一覧を見る
超長寿企業の永続性の法則を探るのが、本書のテーマであるが、何よりも強く感じられるのは、現在の日本の企業社会に見られる倫理の欠如に対する批判と将来を案じた警鐘である。
京都の漆器専門店「象彦」の家訓と対比させ、「銀行に債務免除をしてもらって自身は私財の提供もせず、知らん顔している経営者や、自らは巨額のストックオプション(自社株購入権)を手にしながら、粉飾の事実を隠して従業員に株を買わせていた経営者に読ませたい」と語る。
アパレル、インテリア用品の「チョーギン」の話の中でこう言う。「悪い情報こそ、速やかに最大漏らさず、トップに上げなければならないのである。よく不祥事が起こると、トップは自分は知らなかったと弁解する。しかし、そういう情報が上がらなかったこと自体が、トップ失格なのだ」。
福田金属箔粉工業のケースから日本の製造業の問題を語る。「もの作りに対する愛情を持たず、四半期ごとの利益や株価ばかりを気にしている経営者、コストを縮減するため何から何までアウトソーシングをして、頭脳は自分たちが担当すると豪語する本部社員、そういう人々が現場のもの作りの力を損ねてきたのである」と。
本書で取り上げる企業は創業数百年、千年以上の超長寿企業40社。実際にその企業を訪れ、事業展開、経営の原則、家訓、家憲などを聞いて話をまとめている。キッコーマン、国分、虎屋、小西酒造、ミツカンなどの企業は一般によく知られているが、風雪に耐え生き延びてきた企業がほかにも数多くあることに読者は新しい発見をするだろう。また規模も零細で、家業に近い長寿企業が現代に通ずるマネジメントの知恵、確固とした経営思想を持っていることに感心するだろう。日本の企業の再生のためには、日本人にとって確かな感じを持つことができる日本古来の思想、倫理観、人間観が必要ではないかという思いにさせられる。
著者は大蔵省(現財務省)のキャリア官僚を長く務め、「日本経済の故郷を歩く」、「あらためて経済の原点を考える」というタイトルの著書があり、日本人の経済倫理、思想などを追い続けてきた。この「新日本永代蔵」も同様の問題意識をベースにしており、長寿企業に直接取材を掛けることにより自らのテーマをさらに深く掘り下げていると言えよう。しかし、何よりも現在の企業の行動や経営幹部に対する批判的な姿勢が、この本を今こそ読むべき本にしている。
1 件中 1 件~ 1 件を表示 |