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紙の本
「少しちがうこと」
2003/07/14 05:22
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投稿者:ヨネ - この投稿者のレビュー一覧を見る
にがい終わり方です.ここには,べたな成長物語のようでいて「成長」なんて考えの平板さからズレるところがあります.「自分探し」でもありません.そういうのとは少しちがうこと.七華がいう
「みんながのぞんでいるのはあの子であって私ではないわ 」
ってセリフが,その一端です.
ご存知でない方に紹介すると,これはいわゆる多重人格(の通念)を仕掛けにつかった物語です.主人公の霧里七華があるとき6歳の人格とのスイッチがおこって,さてそれから…,という話.
「あの子」=「ななか(6歳)」の人格は,素直でみんなに好かれていて,「七華(17歳)」の人格とはまるで正反対だけれど,「七華」当人にしてみれば,「ななか」はかつてそうだった自分なのだし,またいま現在はじぶんと入れ替わっていて,みんなにとっての霧里七華は「ななか」だったりする.だから,「七華」にしてみれば,「ななか」は,かつてそうであったし・そうでありうるはずの人格という近しさをもっている.
だけど,「七華」は,じぶんが絶対的に「ななか」じゃないってことを知ってる.そして,好きな稔二が気にしているのは「ななか」で,自分は稔二に選ばれない.クラスのみんなに受け入れられているのも「ななか」.その「ななか」が消えてしまうとき,だからみんなが求めている「ななか」を演じてもみるけれど,それもちがうってことになる.
ここで七華がおかれている立場を前もって示していたのが,七華の義理の母親の立場です.七華の父親=自分の夫や七華が,いまでも前の妻・前の母親を忘れられずにいること,「母親」や「妻」としては同じだけど自分はその代わりになれないってことを,彼女は知っています.
「私はそれを承知で霧里五十鈴になったのよ」
そのうえで,七華に「お母さん」と呼んでもらえるかどうかわかんないけれど,でも,みとめられるかどうかっていう立場にたつこと.「私はできればあなたたちの中にいるお母さんとも仲良くしていきたいの 」──これって,さいごに七華のおもむく立場と同じです.「ななか」が消えてゆくのがはっきりしたとき,稔二は
「あいつ 〔=ななか〕はおまえに…おまえの中に帰るんだ 」
と言うけれど,そんなのはぜんぜんちがうって七華はわかってる.だから,そのすぐあとのコマで泣くんですよね.
『ななか6/17』は,ハートフルな和みものっぽいかんじではじまったけれど,「ななか」という萌えキャラ(!)の解決のされ方がすごくビターです.この「少しちがうこと」に,このシリーズのよさがあります.
garden B
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