紙の本
人が大切にされていない
2004/03/08 05:54
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投稿者:未来自由 - この投稿者のレビュー一覧を見る
いま日々の暮らしの中にきこえてくるのは、音をたてて崩れいく日本社会の、地底から噴出してくる不気味な地鳴りの音である。
「はじめに」の冒頭の言葉である。不気味な振動の中に巻き込まれていきそうな恐れを感じている、という。
『豊かさとは何か』を執筆して14年、政治、経済、社会の病理は、ほとんど改善されないまま、強化するやり方で解決されようとしている、と「あとがき」で述べられている。
この「はじめに」と「あとがき」だけでも、著者の現在の社会に対する危機感と怒りがあらわれている。『豊かさとは何か』の読者にはこれだけで著者の想いが伝わるのではないだろうか。
著者は「労働とは何か」をあらためて問う。労働と社会、人間のあり方を今ほど皆が考えなければならない。私もそう考える。
「社会が人間の労働によって成り立っていることは誰でも知っていることだ。どんな社会でも、私達が必要とするものは労働によって作られる」
「私達は労働を通して収入を得るだけではない。自分の能力を発揮することで自己の存在感をたしかめ、社会や人々との関係をひろげ深めることができる。人間にとって労働のあり方ほど大切なものはない」
しかし、現実はどうか?
労働者の立場は不安定で、無権利。こんな「不安定な労働のあり方は、社会全体を不安定にする」まったく同感である。
低賃金、リストラ、フリーター・パートの増大、そしてさらなる賃下げ。そして一方では非人間的な労働時間。
科学・生産力の発展によって生産力が飛躍的に伸びているのに、働くものの生活は少しも楽にならない。ますます苦しくなるのが現状である。
資本主義的生産関係のもとでは、働くものの労働も暮らしも少しも改善されない。
「私はいつも思うのだ。なぜ日本人は連帯し、団結して権利のために闘わないのか、と」
まったくそのとおりだ!
本書は、こうした労働の問題から、教育の問題、社会の問題など、多岐にわたる社会の現実を示しながら、その解決策を提起する。
一部理解できない部分もあるが、日本社会の問題点の指摘に共感する。
著者は最後に言う。「世界の人々と共に生きようとする高い資質の知は、人間とっての真の資本である」と。
人はなぜ学ぶのか。それは単に知識を得るためではない。すべての人々が幸せに生きるための知こそ、真の学問だ。私はそう考える。
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大学のゼミで使用した教科書。
印象に残ったのは、ドイツの教育や福祉に大変感心なさってるということ。
ドイツには親戚が沢山いるので、聞いてみたが、必ずしも本の内容と一致しているわけではなかった。
他にもフリーターやキレる若者などの問題にも触れていたが、これを機に社会問題に関心を持つようになった。
まだあまり知識のない人にも読める新書だと思います
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大学1年生の私にとってこの本は所々面白かったけど、字が細かすぎて最後まで読めなかったです。
けど半分ぐらいまで読んでいくうちにこの世の中は弱肉強食なんだなと思いました。
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[ 内容 ]
効率と競争の追求によって泥沼の不況から抜け出そうとする日本社会。
だが、リストラ、失業、長時間労働、年金破綻など、暮らしの不安は暮るばかりだ。
子どもの世界も閉塞をきわめている。
著者のNGO活動の経験をふまえて、真に豊かな社会をもたらす互助の関係性をいかにして作るかを考える。
前著『豊かさとは何か』の続篇。
[ 目次 ]
第1章 切り裂かれる労働と生活の世界
第2章 不安な社会に生きる子ども達
第3章 なぜ助け合うのか
第4章 NGOの活動と若者達
第5章 支えあう人間の歴史と理論
希望を拓く―終章に代えて
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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安易な教育批判、官僚批判や、愛に溢れただけの保守主義(郷愁主義)が多く、岩波新書にしては学術性に欠けている気がする。
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○経済成長目覚ましいバブル期に「”豊かさ”とは何か」という問題を提起した著者が、バブル崩壊後にふたたび豊かさについて問いかけます。それまでは、競争原理こそが社会の原動力であり、その力で社会が最適化効率化してゆくと信じられてきたのに対して、著者はそこに潜む人間の商品化(失業者、非正規雇用者問題など)、荒んだ子ども同士の関係(いじめ、不登校問題など)といった負の側面を描き出します。
○著者によれば、いま人々にとって必要なのは、競争に代わる社会原理、つまり、互助・互恵や連帯といった助け合いの原理です。就業者と失業者、正規社員と非正規社員、出来る生徒と出来ない生徒。競争は人びとの二極分化をもたらし、他者への想像力を奪います。なぜなら、こうした競争システムは、企業や国家といった組織にとって都合のよい選別の仕組みなのであって、「人間関係に不可欠な助け合いや共感能力、個性を認め合うこと、地球市民としての責任などは軽視されている(p. 86)」からです。
○そこで著者はこの競争原理に代わるものとして「助け合いの原理」を唱えます。助け合いとは、人びとの連帯であり、互助や互恵であり、共感(他者への想像力といってもよいでしょう)という、人間としての相互作用があると言うことです。例えば、失業者同士が連帯することで、解決の糸口を探ったり、社会問題として声を上げることが出来ます。また、「社会には人びとの助け合いが存在している」と人びとが社会を信用できることが安心感をもたらすといいます。その点、教育において道徳を科目化したり「心のノート」を導入して道徳を教えるというのはどこか違和感を覚えますし、正答主義を基軸にしたままの短絡的な解決方法のようにも思えます。このような点から、「根本的な視点を新たにする必要がある」というのが、この本の言いたいことなのではないでしょうか。つまり、連帯や共同、助け合いに「豊かさ」の条件の手がかりを見出しながらも、「それだけで全て解決する」とは言っていない点に注意する必要があると思います。
* 疑問 *
○日本のゆとり教育とは、時間的なゆとりに過ぎなかったのではないか。ドイツの教育カリキュラム、大学の入学、転校制度との比較。
○協同組合(生協、労協など)は、当初はその理念と活動が一致していたが、現在はどうなのか、現在の存在意義とはなにか(生協のスーパー化、労協の弱体化)。
○「公開された中で多様な意見が交わされれば、人々の考え方も豊かになり、よりよい結論に到達できる(p. 231)」とありますが、多様な意見が増えることで、実際上の問題として合意を得るのが難しくなるのではないか(もちろん情報公開は大切ですが)。
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結局豊かさとは何なのか。
互助の先にあるというのもちょっと違う気がする。
もちろん助け合うこと自体は大事だと思うが。
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誰もが感じている経済と豊かさは別物だということ。何で本当の豊かさを訴える政治家が出てこないのか不思議です。
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ユーゴの子どもたちとの交流の話しが心に残った。
実現に向けて多くのハードルを越えたことが感じられ、尊いと思った。
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競争ではなく、助け合う世界、社会にしていく。
日本の教育はこれを実現するためのシステムにはなっていないし、社会そのものが、競争を煽る仕組みになっている。
見習うべきものの、一つは、筆者が知るドイツにおける教育である。
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『豊かさとは何か』(岩波新書)の続編。
前著で著者は、経済成長に邁進してきた日本が本当の「豊かさ」を置き去りにしてきたことを批判していました。本書でも、前著刊行以後の日本においてそれらの問題が一向に解決されることなく、むしろ新自由主義的な政策を望む声が高まるなかでますますひどくなってきていることが、やはり批判的な観点から論じられています。
また本書の後半では、著者自身がかかわったNGO活動と、そこでおこなわれた日本とユーゴスラビアの子どもたちの交流が紹介されており、未来における「共生」への希望が語られています。
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「ピアスや服装に学校は何も干渉しないのでしょうか。学校は子供の個性に対応して教育するところ。ピアスや服装は子供の個性がはっきりわかっていいじゃないか」
「労働者の解雇につながる技術の発達は、資本主義の中でプラスだけなのか」