紙の本
これが「理系のすべてだ!」とか言われても
2003/08/20 09:32
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投稿者:Snakehole - この投稿者のレビュー一覧を見る
ウチは毎日新聞を購読しているので,1年を越えたこの連載記事もずっと読んでいた。その印象は,最初の頃こそ広く「理系」の問題に目を向けていたが,いつの間にか「理系」イコール「研究者」のことになってしまい,世にある「理系」のヒトビト全般の問題意識からかけ離れて行った,というものだった。……今回こうして一冊にまとめられたものを読んでその印象がかなり正確であったことに残念ながら失望した。
だいたい「研究者」の待遇に限れば理系よりも文系の方が過酷だと思う。理系の「設備」はそれでもカタチがある分予算が付き易い(モノが高価だから十分でないのは同じだが)。オレの出た大学でエジプト史を研究してたセンセ(例の吉村作治さんほどタレント性はなかった)はよく,国から出る研究費では現地に行くどころか文献蒐集もままならないとぼやいていた。首尾よく博士になれても専門を活かせる就職なんか……それこそ理系の研究者がうらやましくなるくらいに「ない」だろう。
つまり文理の別と研究者・非研究者の別がごっちゃになっているのだ。なんというか,オレも技術者のハシクレとして働くニンゲンなんだが,世界を変える研究をしているわけではないし今後もその見込みは無い。だが世間的には「理系」の仕事をしているヒトであり,理系的ネガティブイメージで語られる。そういう市井の「理系のヒト」が読んでると,この本に出て来るヒト達はとても縁遠い存在だという気がするのである。
……こう言えば分かるだろうか。これを作った毎日新聞の記者諸君にお聞きしたい。もし「文系白書」という本が出版されて,開くと大臣にもなるような花形経済学者の話とかマーケティング理論の専門家の話や,源氏物語の文献研究をしている研究者の予算不足についての愚痴や道祖神の分布を調べている女性民族学者が教授にセクハラに遭った話(こんなのこそ文理共通だろ)ばかりが書いてあり,オビには「文系のすべてを浮き彫りにする」とか書かれている。……どんな気がする?
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今関西にある某大学の工学部に在籍してます。これを読んで同じ大学居残るのではなく、外に出てみようと思った。この本のおかげで他大学の院を受ける気になりました。
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この本を読むと、理系の人間にとっては、とても切ない気持ちになります。
工業国である日本を支えている研究者・技術者にも、もっと良い待遇を与えても良いのではないかと叫びたくなる本です。
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研究者って仕事を知ろうと思って読みました。内容は、その名のとおり理系の仕事の実態を調べたもの。理系と文系の比較や、理系学生、大学の研究者、企業の研究者、研究者の待遇などなど。毎日新聞の科学面に連載された記事をまとめたものなんで、新聞の記事、って感じです。全体をまとめると、日本の研究者は恵まれてない、ってことですね。開発等の成果に対する報酬や、特許等の扱いが。そこらへんはアメリカと比べると雲泥の差らしい。青色LEDの中村修二さんの例とかね。まあ研究者自身の意識変化も見られるようだし、企業側の制度も徐々に改善されているようですが。
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理系学生の時に読んだ本。
「そうなんだよなぁ〜」と「そうかなぁ?」が混在する。色々な視点から理系を斬っているのが興味深い。
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ほとんどが理系「研究者」について書かれています。広く技術者までカバーしてほしかった。理系への取っ掛かりとして読むといやになるかも。
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理工系の職種は、生涯年収が5000万円くらい違うらしい。学生時代に勉学で苦労した割りには浮かばれないというのは、その通りかもしれない。外資の導入やベンチャーの促進、社会システムや法律を徐々に変えていくことで、平均化されていくだろう。理工系の学問もなかなか楽しいのだが。
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日本の理系事情について。理系の研究者たちと、彼らの置かれている状況について書かれた本。社会に対して、研究者に対して、学生に対して、いろいろなメッセージを発信している。理系の人にはもちろんのこと、理系ではない人たちにこそ読んでいただきたい。
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副題 「この国を静かに支える人たち」
帯 「理系は報われているか。」
報われているかどうかというのは、個人がそう感じるかどうかによるところが多いと思う。
ただ、他国と比べると表舞台に立つことが少ないってことは確か。
理系人の抱える悩みが「白書」という形で書かれている本です。
白書だから、「こういう現状だ」ということは書かれているけど、「この問題をどう捉え、どう対策を講じていくべきか」ということは、ある程度事例を紹介していながらも、その判断は読者に任せている感じ。
この現状で、将来日本が国際競争力を保っていけるのかどうかは、正直微妙なところなんじゃないかな、と思った。
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理系人間には有名な本。
高学歴ワーキングプアなど後から似たようなほんが出ましたが、これが最も良い。
昔は著者のブログもあったのですが、今は海外にいるらしいです。
どちらかというと、学生のうちの読んでおくと良いような気がしました。
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農学部の売店で発見して衝動買い。
「この国を静かに支える人たち」という副題には、反応してしまう理系学生も多いのではなかろうか。
内容は主に、日本の研究環境の課題とそれに向けての取り組みを中心に書かれている。
時代の変化と共に企業組織の社会的責任が叫ばれる昨今だが、それは研究組織においても同じ。ますます「社会のための研究」という意識が必要とされるようになってくる。
その影響は、経済や社会との結びつきの比較的強い応用研究分野だけでなく、それらとの結びつきが意識されにくい性質を持つ、基礎研究分野にまで波及する。さらには、組織レベルを超え、個人レベルにも波及してくるものである。
そんなわけで、研究者を志すのであれば必読。
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毎日新聞の科学研究部が取材・編集していて、さまざまな視点から理系を捉えていく内容になっている。全体を通してのメッセージは「もっとうまい理系の活かし方があるはずだ」というものだ。研究業界の仕組み、教育現場、文理の縦割り。専門家が報われにくい世の中になっている。
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理系研究者の実態を明らかにしつつその現状についての問題提起を行っており、これから研究者を目指す学生にとって勉学上大いに参考となる資料です。
■横国大附属図書館所蔵データ
http://opac.lib.ynu.ac.jp/cgi-bin/opc/opaclinki.cgi?isxn=4062117118