たしかに「忘れられない傑作」だけど…
2003/08/25 10:26
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投稿者:MIZU - この投稿者のレビュー一覧を見る
たしかに「忘れられない傑作」かもしれません。でも、私には、「90年代ベスト1」の小説とは思えませんでした。
まず、一見して家族小説でありながら、そうではないということ。解説の北上次郎さんの言葉通り、99%は家族小説でありながら、残り1%がそうではない。この作りは、ある意味で読者の期待を根底からくつがえすものとなっていて、それが人によっては高い評価の理由なのかもしませんが、私にはバランスを崩しているように感じました。
そして、この「残り1%」です。私には、とても納得のゆかない、受け入れられないものでした。この長い小説、全体の9割以上にもなる、家族の努力、家族のきずな、すべてがかすんでしまうのです。それが現実なのだということかもしれませんが、ある意味で作者の悪意のようなものを感じたといったら、言い過ぎでしょうか。もしかすると、何か宗教的なものがあって、はじめて受け入れ可能なものかもしれません。
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翻訳ものだし 少し宗教観が入るので
まどろっこしい部分が歩けど どんどん小説の世界に入る事が出来ました。
スティービィの苦しみが辛いです。
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すーっごくおもしろかった。
タイトルからただのミステリーだと思ってよみはじめたんだけど、実のところ、夫婦の、家族の物語でした。
あと、主人公がフリーのプログラマーで。
1983年ころのコンピューター業界を舞台にした話。アタリショックのころ。
今だったらiPhoneアプリの世界になるんだろうなー、みたいな感じ。
コモドール64、彼の職場でのトラブル、契約をめぐるごたごたなんかは、この業界の人にとってはいろいろ楽しめます。
こんなセリフも。
上P18
もっとひどいことになっていたかもしれないのだ。たとえばアップルでプログラムの仕事にありつくとか。
下p22
「あなたは間違っています、ディッキー。そのうちかならずIBMが市場を制覇して、IBMこそ唯一の市場というときがきますよ。」
「アップルを除けば」グラスが言った。「あのがらくた会社は、自分のところのコンピューターがいくら役立たずでもぜったいに消えてなくならないでしょうね」
あと、著者がモルモン教ということもあって、モルモン教の世界がいろいろと書かれていて、それも面白かった。
ごめん、オースン・スコット・カードなめてました。
最後はぼろぼろに泣けました。
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美しいが汚くもあり、希望はあるものの非常に重たい家族小説。とことん健気なスティーヴィに涙。ゲームデザイナー(プログラマ)を主人公に据えた数少ない小説のひとつでもある。
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父親のステップが転職し、フレッチャー一家はノースカロライナのストゥベンに越してきた。
ステップはハッカー・スナックというパズルゲームをヒットさせたことのある才能あるプログラマ。
これまでは、自宅での仕事と、歴史の博士号を取る研究という自由な立場でやって来た。
今度の会社ではマニュアルを書くだけが仕事と言い渡され、驚き苛立つが、当面は仕方がない。直属の上司はいやみな男だったが、実はプログラムに関しては無能らしい。
妻のディアンヌは心の温かい母親で主婦だが、3人の子供を抱えて、さらに妊娠中、めまぐるしく過ごしている。
二男のロビーは無邪気だがやんちゃな盛り。
まだ赤ちゃんのベッツィははいはいをする手がかかる盛り。
8歳の長男のスティーヴィは大人しく頭がいい。学校で友達が出来ないらしく、引っ越したのが気に入らないのではと両親は気にはなっているのだったが…
裏庭で友達と遊んでいると言い出したのが、姿の見えない空想の友達なので、胸を痛めることに。
モルモン教徒の一家という特殊性もあり、今度の教会での役割や人間関係も大きな問題に。
ここにも嫌な女性がいて、ディアンヌはへこまされるのだが、親切な隣人にも恵まれる。そして…?
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オースン・スコット・カードの消えた少年たちを読みました。この本の最初の4分の3までは、モルモン教徒の夫婦と子供たちの必ずしも幸せとはいえない生活が描写されます。私としてはこの部分はそれほど面白くはありませんでした。この作者が悪いのか、訳者が悪いのか、モルモン教徒の生活が悪いのか、アメリカと言う国が悪いのか、途中で読むのをやめてしまおうと何度も思いました。
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要は幽霊小説。
クリスマスイブのラストシーンは号泣でした。
物語はどんどん進んでいくけれど、どこに物語が進んでいくのか?という思いが結末まで続きました。
(逆にそれがなかなか明かされなかったので、読んでいて疲れました)
SEの父親って子供との時間を作りにくいのか…他人ごとではないなと思いつつ読みました。
また、1984年頃の本なので、情報技術はまだまだでしたね。
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カードのキング風私小説
表紙 6点影山 徹 小尾 芙佐訳
展開 9点1992年著作
文章 8点
内容 930点
合計 953点
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ラストは衝撃でした。いろんな出来事や人間関係に悩まされながらも、懸命に生きる家族の姿も良かったです。信仰が生活の中心にある家族なのですが、宗教に懐疑的な立場からの指摘もあったりで、とても丁寧に書かれた本だと思いました。
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タイトルと表紙から鑑みるに、複数の少年が消えてしまう話と思われる。
序章替わりの「ぼうず」という章で、なんとなく誰かが少年たちをさらう話だということがわかる。
しかし、本編ではまだ、誰も姿を消してはいない…と思う。
怪しいのは、主人公一家の長男であるスティーヴィ。
ベストセラーのパソコンゲームをデザインしたことのある父が、今や日々の生活にも事欠くほど収入が減ってしまったため、アメリカ南部の片田舎の学校に転校することになった。
元々繊細で大人しいスティーヴィは、南部なまりを聞き取ることができなかったためにクラスメイトと担任の先生にいじめられ、学校に行きたくないと思っている。
東部育ちで標準語を話すスティーヴィに対して、南部なまりのコンプレックスから子どもたちにいじめを奨励する、そして自らも徹底的にスティーヴィを無視したり貶めたりする担任の先生の仕打ちが本当にひどくて、読むのが辛くてしょうがなかった。
父親も、パソコンのことなどほとんど知らない上司に権利と時間を搾取され、家族との団欒など考えられないような生活を送らされる。
会社の誰をも全く信用できない中で、孤立無援の日々を送っている。
さて、日本ではあまりなじみがないが、スティーヴィの両親は敬虔なモルモン教徒である。
私も詳しくはよくわからないけれど、禁酒禁煙のストイックな生活を送る彼らは、独自の教会活動があり、スティーヴィの両親は熱心に教会活動に参加し、そのうえ善きモルモン教徒であろうと努力をする。
家庭を守り、他者に悪意を持たず、神の御心を疑うことなく過ごそうと努力するも、スティーヴィだけではなく、父(ステップ)の会社の人や、教会関係者たちの悪意に蝕まれていく彼ら家族の話は、細かな部分もしっかり描写されることによって、次のページが気になってしまうこと間違いない。
というか、消えた少年たちの話であると思うのだけど、ほぼほぼステップの会社の人たちの悪意ある嫌がらせに目が行ってしまって、最後の方になるまでスティーヴィを気にかけながらも、そこまで辛い目に合っていたとは想像していなかった。
善意の塊のような一家に一体何が起きるのか。
上巻だけでは全然わからない。
上巻が1冊にまとまった単行本で読めばよかったと後悔することしきり。
一体どういう結末が待ち受けているのか。
どうか哀しい話じゃありませんように。
スティーヴィの弟・4歳のロビーがまたいい子なのだ。
兄のことが大好きで、そのことをいつも大っぴらに表明し、まだ手のかかる妹(2歳のベッツィ)の面倒をよく見る、明るくて優しいいたずらっ子。
ロビーの存在が、この不穏な作品の中の希望の灯りなのだ。(私にとって)
どうか最後まで、ロビーの笑顔が失われませんように。