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平壌の水槽 北朝鮮地獄の強制収容所 みんなのレビュー

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みんなのレビュー3件

みんなの評価4.7

評価内訳

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紙の本

1960年代より日本から北朝鮮に帰国した在日朝鮮人たち10万人のうち1割以上が、いわれのない罪で粛清されたという。家族で収監された強制収容所の日々を告発した本。

2003/11/12 23:53

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:中村びわ(JPIC読書アドバイザー) - この投稿者のレビュー一覧を見る

「北朝鮮の強制収容所」に関するノンフィクションということで、想像を絶するものがありそうだと恐る恐る手に取る。おそらく、真っ当な考えをもつ知識人が思想犯の烙印を押されて検挙され、収容所で強制労働に従事させられ時に拷問を受ける。解放後、運のめぐり合わせによって北から南へ逃れた——というような流れを漠然と考えていたのだが、違った。事実はさらに重苦しいものだった。
 著者の祖父母や父親は、日本でかなりの財を蓄え裕福に暮らしていたという。それが、1959年の金日成の呼びかけに応じた。米国の傀儡政権である南朝鮮を断罪し、北による再統一で民族自立を成し遂げようというものだ。日本での差別に悩む在日朝鮮人たちは、祖国でのユートピア実現に力を貸したいと夢を描き、帰国の船に乗ったのである。
 ところが1963年、祖父母や父たちがいざ現地に着いてみると、先着の元在日朝鮮人たちに「手紙を出して来るなと警告しておいたのに…」と出迎えられる。生活に必要な物資や設備が不足し、日々の暮らしはままならない。日本から運んだ自家用車ボルボは没収される。
 ようやく、祖母が政治的な名誉職を与えられ、祖父も平壌の商品供給を司る役所にポストを得て、帰国から5年後の1968年に著者が生まれる。国内では比較的恵まれた暮らしがしばらくはつづく。しかし、一家に染み込んでいた日本的なものは反民族的として蔑視され、家族は告発されないようにと息をひそめて過ごす。
 著者9歳のとき、突然に祖父が失跡する。まもなく家宅捜索が入り、罪人の家族だということで一家は「耀徳(ヨドク)」という強制収容所へ送られる。だが、著者の母親は祖国の英雄の一族であったため、家族との同行を求めたのに拒否され、国家の裁定で離婚させられ決別を余儀なくされる。以降、著者は10代のほとんどすべてを、無意味な教育と過重な労働に縛りつけられ、そこで過ごすのである。

 本書の6分の1である収監までの経緯を長々要約してみたのは、このあまりの理不尽さに絶句したからである。そして、日本と関わりが深かった人たちの身にこのような歴史的事実があったと初めて知り、非常なショックを受けたからである。
 ユートピア作りに協力してほしいという甘言に勧誘され、意気に感じて海を渡った人もいただろう。祖国の再建を夢見た在日の人たちは、結局その財力を狙われたのである。単に財産を収奪されただけでなく、収容所において人権を蹂躙された。
 おそらくこの国には、その種の私たちの知らない非道な行為に苦しめられている人びとがまだまだ沢山いるのだろう。私たちは今、この国との間に横たわる大きな問題に直面しており、同様の理不尽さに対し忸怩たる思いで様々な報道に触れる。海のこちらとあちらに切り裂かれた家族は、このままでは来るお正月も一家揃って過ごせそうにない。どうすればいいのか分からないが、こうして批判の声を絶やさないようにする必要があるのではないか。
 大変な思いをして「北」を逃れた人たち、密偵によって今なお生命の危機にさらされる可能性のある人たちが告発する実状は、あまりにもむごい。ここに書かれた収容所での出来事には、正直何回か吐き気を催し苦痛を感じた。けれども、同時代人として知っておくべき事実、考えていくべき事実を何とか受け止めることが求められているのだと思う。

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2006/09/29 00:51

投稿元:ブクログ

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2018/02/24 21:33

投稿元:ブクログ

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