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16 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

「身体の欲望」が「生命のよろこび」を掠奪している。

2003/10/27 13:57

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ソネアキラ - この投稿者のレビュー一覧を見る

痛みは麻酔で、寒さや暑さはエアコンディショナーで、糞便は水洗トイレで、死は病院で、死体は火葬場で、ゴミは所定の曜日・場所に置けば、いつの間にか清掃局が片づけてくれる。かように、現代は、「快適」「心地良い」「アメニティ」の類の言葉で構築された「無痛文明」社会である。

「苦しみ」や「つらさ」や哀しみ、不快なものは、ことごとく隠蔽され、あるいはスポイルされてきた。

しかし、無痛文明を享受しているのは、いわゆる先進諸国の一握りの人々であり、−もちろん、ぼくも含まれているが−、それを支えているのは、圧倒的な多数の人々の犠牲によるものである。

あたかも、洋上を渡る豪華な客船の推進力が、暗い船底で櫓を懸命に漕いでいるあまたの奴隷であるように、そう、思えてならない。

人間を道具と同じように、役に立たなくなったら切り捨てたり、強者−弱者、勝ち組−負け組という単純な対位法がまかり通っているのも、無痛文明が生んだデバイドの一つといえよう。

作者は、情け容赦なく無痛文明を糾弾する。さらに、現代人を蝕んでいる無痛文明病の症例をこと細かに説明し、治癒の仕方まで伝授している。しかし、この病はヘビードラッグや癌細胞のように、いや、それ以上に厄介。なぜなら、痛みよりも快楽を感じさせ、一度罹ると、治りにくく、禁断症状も猛烈に表われるからだ。

人間は「人工的環境のもとで」「自己家畜化してきた」。作者は物質社会の根底を成しているものを「身体の欲望」と呼んでいる。そしてこれが「人間自身から、『生命のよろこび』を奪っている」と。「生命のよろこび」とは、「達成感や高揚感」ではない。「外部からの誘導や教示ではなく、みずからの意志と必然性によって、みずから忠実に自己変容したときに、予期せぬ形でおとずれるものこそが『生命のよろこび』なのである」。エロスとアガペーの違いのようなものか。

また、この「生命のよろこび」を得るためには、「絶対孤独」を貫かなければならないと。要するに、愛なんて幻想で、絶対孤独であることをごまかすためのものだと。自己と他者の心が通じ合うなんてことは、あり得ない(ほんとは、みんな、そう思ってるんだけど)。「死にいたる病」ではないが、絶対孤独を確立できてこそ、自分の死への恐怖も克服でき、無痛文明を凌駕できると。ひょっとして、出家しろとでもいいたいのだろうか。

島田裕巳の『オウム なぜ宗教はテロリズムを生んだのか』に引用されている村上春樹の言説を孫引きする。「(アメリカの連続爆弾犯)ユナ・ボマーは、高度管理社会に生きる人間は『自律的に目標を達成できるパワープロセスを破壊され、システムが押しつける他律的パワープロセス』に組み込まれている」

そういうことなんじゃないかな。

反論の術は、いまのところ、ない。「あんたは、そんなことをするために、生まれてきたんじゃないだろう」と、作者から鋭い切っ先を突き立てられたような気分だ。

この本は、森岡生命学の集大成であり、まさに、それは、精神の踏み絵である。

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紙の本

絶対孤独のアジテーター

2003/10/20 11:02

5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:栗山光司 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 映画『マトリックス』はメガ・コンピュータの支配の外に飛び出したところは、もっと酷い世界であることを示唆している。無痛文明の中に閉じ込められ脳化社会であろうと、自己家畜化であろうと、誰かがこの世界に責任を持ち操作しようが不安に苛まれるよりマシではないか。『自由からの逃走』は古典的な常識である。「現実界の砂漠へようこそ」と笑える人は強い人であり尊敬に値するが、いざ自分を指させば痛いのも嫌い美味しいものを食べたい楽したいと、その自堕落振りを受け入れる世界が虚妄であろうと手放す度胸がない。億単位の人々が廃墟の中で生きていようが繭の中の微睡みは、超越的な存在が作動している限り安泰だ。誰かによって仕組まれた虚構の世界におかれ常時監視されている方が安心であり快適ですらある。監視という付加価値を付けてデベロッパーが住宅を売り出す営業が好調だと聞く。
 
 それでいいのか? そんなヴァーチャルな安穏さで、人は幸せを感じる事が出来るのか? そんな問いは大概な人が保っている。だが答はノーコメント。「生き方を問うな」。既得権を手放し、自己解体も受け入れて、キレイサッパリと何にもないところから、発信すれば、聞耳を立てよう。
 「私が私である」自同律の不快をぶら下げて永久革命を唱えながら、そのピリオドのなさが逃げ場となって、蒲団にくるまり、時には銀座で一杯やって、未完の大作をものにした哲学者も、最早、この国の各分野の動脈を握っている団塊の世代から未だにリスペクトされている野次馬であることに誇りを持つ思想家も、市民運動を立ち上げて市民を葵の御紋で思考停止した活動家も、政治家も、神頼み、仏、尊師に信を置いて何かに縋る人も、癒しも、お呼びでないと絶対孤独の立ち位置で森岡正博は吠える。

 一体、彼が拒否する無痛文明とは何か。冒頭でこの言葉を思いついたのは、ある看護婦さんの話を聞いた時の事だと記す。彼女の受け持つ集中治療室に意識の混濁した患者が運ばれて来た。「すやすや眠っている」状態である。適切な治療と看護を施しているから患者はとても幸せそうである。恐らく再び目覚める事はないであろう。点滴を受け彼女のケアによって身体は清潔に保たれ温度は快適に管理された部屋の中で安らかな表情で眠り続ける人間。悩み事も痛みも不安も恐怖もない。快適な眠りの中に居続ける。「結局、現代文明が作り出そうとしているのは、こういう人間の姿なのではないか」、彼女の疑問から派生すると記す。
 ただ、誤解されやすいが、既存の言説で権力構造を中心に置いたシステムをマッピングしたニ項対立、管理/自由、帝国/マルチチュード(ネグリとハートの)、と同次元の構図を提示しているわけでなく、恐らく脱構築という言葉さえ嫌う、著者の非常に私小説的な告白から降り立った一人の人間が、内も外も無痛奔流に浸されて自分の影との戦い似たものにならざるを得ない負け続ける遠い道のりだと覚悟しているということである。
 
 ペネトレイターに貫かれて自己形成する「この私」の繋がりが森岡正博なのであり、影も又、神出鬼没である。あらゆるジャンルに触手を伸ばし縦横無尽に語る彼の言説は複雑怪奇かも知れぬが、結局、たった一つのことしか彼は発信していない。予測不可能な一回切りの生命の欲望に中心軸で耳傾け、かけがえのない生を生き抜くこと。そのためには、この無痛文明に対してノンと拒否する。「死ぬのは怖くない、ただ痛いのは困る」と、そんな至福より自堕落な眠りが心地よい人にとっては、この本は単なる紙屑だ。オール・オア・ナッシングなのだ。この本の書評は不可能である。ただ、受け入れるか、拒否するかどちらかなのだ。

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