紙の本
日頃“ホラー”が苦手である人にも是非手にとって欲しい名作である。
2005/09/04 15:25
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:トラキチ - この投稿者のレビュー一覧を見る
『花まんま』で直木賞を受賞された朱川湊人さんの出世作と呼ばれる本作は直木賞の候補にも上がった。
あらためて読み返してみて、本作で直木賞を受賞してもよかったのではないであろうかと感じたのは私だけであろうか。
朱川さんの最も秀でている点はやはりその“語り口”の絶妙さであろう。
朱川さんの場合、ホラーが“ジャンル”ではなくて“題材”だといえそうだ。
ジャンルとしては“郷愁&人情小説”いや“大人のおとぎ話”といった言葉の方が適切であろうか。
だから恐いという先入観を持たれて避けられてる方は是非勇気を出して本作を手にとって欲しいなと思うのである。
全5編からなる短編集であるが個人的には切ない話である「昨日公園」と「月の石」が良かった。
少し背筋がゾクッとなるが哀愁感に満ちた作品のオンパレード。
たとえば個人的にベストだと思う「昨日公園」。
幼い頃、友達と公園でキャッチボールしたシチュエーションが読者の脳裏を横切るだろう。
彼らは今、どうしているのであろうか。
ふと自分の幼少の頃の懐かしい思い出に馳せる。
そういう気持ちを思い起こさせてくれただけでも一読の価値はあると断言したい。
タバコを吸われる方、本数を減らしましょう(笑)
「月の石」の“ほのぼのエンディング”も読者にとっては嬉しい。
読者が自分の人生を見つめなおすきっかけとなる作品だと言えそうだ。
見事な起承転結で描かれた作品で、読者に日頃忘れがちな勇気と自信を取り戻させてくれるのである。
短編集全体の構成面を考慮しても、内容的な面において、この作品をラストにもってきた点は本作における大いなる成功である。
なぜなら、朱川さんの作品を次も是非読みたいなと思って“優しい気持ち”で本を閉じられた方が大半のはずであるから。
普段ホラーやサスペンスをたくさん読まれてる方には「フクロウ男」がオススメ。
個人的には狂気に満ちた(ちょっと言い過ぎかもしれませんが)「アイスマン」と「死者恋」はいまいちだったような気もするが、この2編は読者を選ぶ作品なのかもしれない。
本作はご存知のように、直木賞受賞作『花まんま』より先に刊行された。
読まれた方はお気づきだと思うが、すでにこの時点で“朱川ワールド”を見事に構築しているのである。
次の朱川ワールドを心待ちにしているファンが全国津々浦々にいる。
朱川さんなら期待に応えてくれるであろう。
活字中毒日記
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『セピア』というタイトルが示すとおり、ここにあるのは大人になった「私」が振り返る子供の頃の「僕」の話が多い。特にお薦めは『昨日公園』と『フクロウ男』。『フクロウ男』で、なぜ「僕」が今になって手紙を出そうとしたのか、という理由などは……。短編ならではの味わいを堪能できる作品集でした。
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もっとおどろおどろしい話かと思っていたら、都市伝説を扱ったどこかノスタルジックな切ないホラー。情感もあり、綺麗な仕上がり。上手いね。
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この本読みながら寝たら、不覚にも怖い夢を見て夜中に目が覚めました。世間に出回ってる都市伝説のほとんどは、怖いよりも胡散臭さを楽しむように出来てるように思います。「テケテケ」なんかは想像すると結構笑えてしまいます。この本の都市伝説も、要約してしまえば突っ込みいれながら笑ってしまうんですが、さすがは物語。しんとした闇に包まれてるような雰囲気に圧倒されて、怖い、と思ってしまうのです。ぞわっと胸が毛羽立ち自分が現実に存在していることを確かめたくなるような怖さ。この作家さんは日常に非日常を持ち込む、というスタイルだそうですが、その心理は「フクロウ男」に近いんじゃないかなと思います。
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思ったよりもダークなお話。ホラー好きにはたまらないと思います。レトロなホラーではなく現代の都市伝説なところがリアルでなおコワイ。昨日公園の話が一番良かった!
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ノスタルジックホラーや都市伝説系のホラーもあって1冊ですごく楽しめます。フクロウ男の最後はビックリしました。
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読了後のそっと心を撫でられるような感覚がずっとわすれられない。都市伝説なのにしっかりと世界が作りこまれていて、ほんとに身近で起こるような気がしてきます。
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分類的にはホラーだと思いますが、“ただ怖いだけ”の物語では無いところが良いです。怖くて切ない話だったり、怖くて悲しい話だったり、怖くて不思議な話だったり…その“怖さ”も全て人間の心から生まれたものなんですね。“怖さ”の根源は同じなのに、この一冊で色々な物語が楽しめました。
個人的に一番良かったのは「昨日公園」。主人公の回想シーンに泣き、ラストで明かされた事実に泣き…もうボロ泣きでした。これは結構、心に残ると思います。
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結構前に読んだ傑作揃いの短編集!大好きだった「昨日公園」も予想通り「世にも奇妙な物語」(フジテレビ)で放送され忠実に再現された時は感動しました。
もう一つのお気に入り「フクロウ男」はオチ的に映像化は無理かな;
今は文庫本でも出てるみたいです。
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たかが短編、されど短編。
「昨日公園」は今まで読んだ短編の中で一番心を打たれた。
どんなにみじかい物語にも、思いを込められることに今更ながら気付く。
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「昨日公園」はちょっとせつないというか、やるせない話。「フクロウ男」の「笑ってくれて、いいよ」という言い回しが何故か好き。
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先日読んだ「花まんま」が気に入ったので、読んでみたのですが、この本もまた、不思議な世界へ連れて行ってくれて、私好みの面白い本でした。
口裂け女とかトイレの花子さんのような都市伝説を作り上げようとする「フクロウ男」の話。縁日で見た河童の氷漬けに興味を持つ少年の恐怖や哀愁を描いた「アイスマン」。大切な人の死を予測しながらも、どうすることもできないもどかしさや切なさを描いた「昨日公園」など、どれも、意外な結末が用意されていて、じんわりと心に余韻を残す物語で、読み応えたっぷり。ホラーっぽいので、飽きずに、どんどん読み進められます。
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ホラーだけでなく、その中にも、人間の心の中の切なさ、愛情、憎しみ、欲など、さまざまな感情を見出す事ができる。“昨日公園”と“月の石”が、何ともいえないノスタルジックな気持ちにさせてくれる。
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一つ一つのお話自体が長くないので非常に読みやすいですし。たぶん小さい
頃に、あの手の類の怖い話が好きだった人にはオススメかと。
ちょっと怖いでも知りたいっていう人間の欲求そのものみたいな気がする。
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昨日公園が面白いけど終わり方が綺麗すぎて泣けた。お父さん……
フクロウ男は都市伝説らしくて(当たり前といえば当たり前ですが)結構好きなんですが、最後はそっちにいくのかー……と少し悩みました。