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私が50代なら、もしくはそれに準じた何らかの知識をもう少し有していたならば、有効なエピソードは多かったんだろうか。どちらかというと名も知らぬ少女に心情が近すぎた。でも妹とのエピソードなど、すっきりよくて、ラストはそれでも清清しかった。
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60年代の学生紛争さなかに、殺人罪に問われた主人公は中国に密航します。当時文明のかけらもない中国の田舎に30年間過ごした彼は、やっと日本に密入して帰ってきます。30年ぶりの日本は変貌を遂げていました。
現在と、中国での生活の様子を織り交ぜ、どんどん読まされていきます。大きな山場があるわけでもないのですが、飽きず最後まで読んでしまいました。結構ページ数の多い本なんですよ。
感想も書きにくいんですが、おもしろいかおもしろくないか・・と聞かれたら、この本は面白いといってもいいでしょう。
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正直、驚いた!これぞ男のハードボイルド!大絶賛したい。
主人公といっしょに時空を超えて渋谷を中心に、駒場、六本木、三軒茶屋、太子堂、白金、汐留と頭の中でさまよう。(何度か言及されるものの、なぜか新宿は出てこない。)
すでに文化会館もない。五島プラネタリウムに最後に行ったのはいつだったろう。大学生のときのデートだったろうか。。。
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3分の1がぐらいで読了。ちょいと時代背景がつかめない感じがして、テンポも今の自分にはゆっくり過ぎた。
また器械があるなら読もう。
図書館で借りた。タイトルだけで選んでしまった。
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2010.04.昔、学生運動で偶然から警官に怪我をさせて殺人未遂で指名手配をされた.そこで、紅衛兵運動に加わるために中国に渡る.しかし、情勢は変わり莫賓へと送られ貧しい農業生活を30年続ける.そして、妻が上海に出て行ったあと、日本に密航する.日本では、一緒に学生運動をした志垣の世話になる.長くて、その割にはあまりって感じ.
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会いたいと思うことはあったが、会いたいと思われていることにはまったく無頓着だった。P473
新しいものに追いやられながら、そこここで生き腐れしてるものの方が、見るたび辛かった。
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とても面白かったけれど、読み手は選ぶと思う。とりあえず渋谷界隈に詳しい人は、知らない人の3割増で楽しめるのではないでしょうか。
最後はどうなるのか正直予想もつかなかったのですが、思った以上に爽やかな読了感でした。
しかし表紙と中身のギャップがあり過ぎてものすごく損をしていると思います。
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大変おもしろく読みました。日本での革命運動と当時の中国のズレ。若者だった主人公が中年になって見た日本。根本的な中国と日本の差。そのあたりがおもしろかった。主人公がだんだんと自分に戻っていく、自分のやりたいことを見出すあたりも、よかった。そして、久々に中国語のアトムの歌を聴きたくなったり、『点子ちゃんとアントン』を読みたくなったり、『猫のゆりかご』を読みたくなったりした。
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まだ消化しきれていないが、居場所についての話。実はそんなものないんじゃないかと思った。ないというか、どこまでも偏在していて、人生とはそれらの点を行き交う旅行みたいなものなんじゃないかと。
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最近ライトノベルズばかり読んできたが、本作はハードボイルドではないが、かなりハードな話だった。三人称小説で、文革時代の中国に密入国した彼が、30年後の東京に密かに帰って来てからの話。文革で倫理も道徳も失った中国人は恐ろしい。
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タイトルと表紙のイメージから、ある種の思い込みを持つと、中身との違いに愕然とする。
30年前に中国に逃亡した男が再び日本の土を踏むという話だが、話自体は地味。
ただし、硬派なハードボイルド小説としての完成度は高いと思う。
事件自体はおこらないが、登場人物の心理描写や過去のエピソードと現在の対比が、独特の雰囲気をかもし出す。
これだけ地味な話なのに、なんでのめり込んだのだろう?っというのが率直な読後感。
後半にでてくる、主人公と30年前に離れ離れになった妹との会話は、結構泣ける。
大人の男の世界を楽しみたい人におススメです!
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タイトルからSFミステリーかと思ったけど全く違った。30年という年月で変貌した日本に戸惑いながらも、ついには自分の居場所を見つけ出した男の物語、かな。今から30年後の日本にいきなり放り出されたら、きっと私も混乱する。
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近未来のSF小説かと思って手に取ったが、内容は全く違った。30年前の日本と現在の日本と中国の内陸部の農村での30年間を行きつもどりつ紅衛兵に志願すべく日本を捨てた男がその妻、義父、妹の思い出をなぞりつつ物語が進む。日本に帰ってきてからの妹との関わり、彼の最後の決断に疑問が残った。
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時代は60年代後半の学生紛争のころ、弾みで殺人未遂を犯した主人公は中国へ逃亡、経済活動とは隔絶された大陸の奥地で農民として暮らし30年という時を経て、浦島太郎のような気分で帰り着いた日本。
そこは正しく漫画で見た未来と記憶の中にある都市の面影の混在する異郷だった。日本に置き去りにして来た幼い妹への悔悟、妹のイメージと重なるように何度も夢に見る中国人妻の記憶、偶然知り合った今どき女子高生との心温まる交流。
昭和を生きた世代にとって、なんとも言えない郷愁を誘う名作だと思う。
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東西に分断された日本国というSF仕立ての発想を持つ『あ・じゃ・ぱん』で、日本の政治を脱構築してみせた作者が、今度は竜宮城ならぬ革命中国から帰還した元学生運動の闘士の目を通して現代日本の姿を「異化」してみせる。現代の日本を動かしているのは、かつて彼がともに戦った同士たちの世代である。彼のいない30年という時間、日本にいた者たちは何をしてきたというのか。革命を夢見て渡った中国で百姓仕事をして過ごした彼の30年は何だったのか。
成り行きで学生運動に引きずり込まれ、警察のガサ入れにあった主人公は屋上にあった金属製のロッカーを機動隊の上に落とすというアクシデントのせいで殺人未遂の罪に問われ指名手配を受ける身の上となる。現地で紅衛兵の運動を見てみませんかという誘いに乗って、革命中国に不法入国を試みた背景には思想的なものだけでなく、せっぱ詰まった事情も働いていた。それから30年。蛇頭の手引きで日本に密入国し、東京に舞い戻った彼を待ち受けていたものは、ルーズソックスをはき、髪を染め、ケータイにかじりつく若者が跋扈する変わり果てた祖国の姿であった。
よど号ハイジャック犯ならずとも、当時、中国や北朝鮮は左翼系学生にとっての理想国家であった。かつて、マルクス主義を報じゲバ棒を振り回していた男たちは、その後掌をかえしたかのように企業や行政の要職に着き、現代日本の資本主義社会を構成している。悪い夢から覚めたような今となってみれば、あの時代の熱狂は何かの冗談めいて感じられる。少し遅れてその時代を経験した者の目にはそう映る。しかし、熱から冷める時期を共有しなかったかつての同士の目には、今の日本はどう見えるのだろうか。
過去が現在を裁くときに陥りがちな過剰な思い入れや激情は抑制され、時に自嘲の翳を帯びるとはいえ主人公の言葉はあくまでも冷静である。「自分の立っているところが祖国だ」という主人公の言葉にコスモポリタン化した傑という若者が共感するのも、どうみてもホームレスかプー太郎にしか見えない主人公の中に変節を変節とも感じない今の日本人には見ることのできない何かを見るからだ。
フィリップ・マーロウをはじめとするハードボイルド小説に登場する探偵の禁欲的な人物像を遍歴の騎士に喩えたのは誰だったろうか。麗しの思い姫に寄せる思慕を胸に秘め、その賞賛の一言だけをたよりにひとり諸国を経巡り戦いに身を窶す。主人公の思い姫は日本に残してきた幼い妹である。妹に贈ったケストナーの本と妹が荷物の中にしのばせたカート・ボネガット・ジュニアの小説が彼にとって祖国と自分をつなぐ唯一の紐帯であった。
矢作俊彦の手になると、三十年間中国の辺境で百姓暮らしをしていた主人公が漂わせる憂い顔の騎士ぶりに薄汚れた都会の闇部を彷徨うハードボイルド小説の探偵像が二重写しになる。当時の世相や映画をはじめとする風俗と現代の東京がカットバックされる描写にいちいちうなずかされる。読者を選ぶ小説かもしれない。すでに過去を過去として葬らしめた者には無縁の書物。過去を引きずっている者にとっては、できかけた瘡蓋を上から掻くような一編かもしれない。