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ららら科学の子 みんなのレビュー

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みんなのレビュー41件

みんなの評価3.7

評価内訳

36 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

『アトム世代』が書いた優れた現代小説。装幀も素晴らしい。

2004/09/26 01:21

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ブルース - この投稿者のレビュー一覧を見る

 50歳を越えた世代には、『ららら科学の子』という言葉を聞くと、テレビ放映された手塚治虫の漫画「鉄腕アトム」とその主題歌が憶い浮かんで来る。
もう半世紀も前の昭和30年代テレビ草創期に放送され、主題歌が『ららら科学の子』と歌われていた。この鉄腕アトムの放送は、全国の少年・少女の心を捉え、その主題歌も街のあちこちでよく歌われていた。
本書は、アトムが直接活躍するSF小説ではないのだが、タイトルとなっている『ららら科学の子』という歌詞が作中の何ヶ所かにレフレインのように使われていて、主人公の心象風景や置かれた状況を表わす象徴的な役割を担っている。
心憎いばかりの巧みなタイトルの付け方と言えよう。
 ストーリーは、1968年の大学紛争の最中、警察官を負傷させた主人公が指名手配をされるはめになり、当時文化大革命の渦中にあった中国に渡り紆余曲折の結果30年も奥地の農村に抑留され、闇のルートで日本に帰国すると、その間祖国は大変貌を遂げていた…という一種の浦島譚と言うことができる。この小説の肝は、主人公が脱出する前の日本と30年を経て、目にした日本の変貌ぶりにある。随所に、主人公の戸惑いが時にシリアスにまたある時はユーモラスに描かれている。例えば、主人公が日本を脱出する時に、建築中であった建物が30年後に訪れてみると古びて廃屋同然になっていたシーンや、プロ野球の讀賣ジャイアンツの長嶋選手が、後年監督になってチームを優勝に導いたことに驚くシーンなどは読んでいて過去と現在が混在し、眩暈に似た感触に襲われる。本書は、このように東京という大都会の変貌を描く優れた都市小説として読める一面も有している。
 他方、本書は、ハードボイルド小説の面も持ち合わせていることも言わなくてはならないであろう。冒頭、主人公が中国のマフィアの手引きで日本の伊豆半島沿岸に密航し、隙を見てアウトローたちから逃れる条りは、まるで映画を見ているような緊迫感とリアリティがあり見事である。その後、主人公は東京に出て来て、学生時代の親友に匿われるのだが、この親友も裏稼業に手を染めており、やがて主人公も暗黒世界に巻き込まれていくことになる。もともと、この作家はハードボイルド小説を得意にしていて、冒頭から練達の筆力を感じさせる。
 ハードボイルド小説と言えば、孤独な影を引きずるヒーローに、翳のある女性が登場して翳りのある愛が描かれるものと相場は決まっているが、本書も屈折した恋愛を描いた小説としても読めることも付言しておこう。
ラストで、主人公は、以前に袂を分かった妻との再開を果たそうと決断するのだが、主人公の行く末は読者の想像に委ねられており、深い余韻を残すようになっている。最近の小説は、何もかも描写され尽くされていて、読者が想像を入り込ませる余地が無くなっているものが多いが、本書はそのような無粋な小説とは一線を画している。
 最後に本作の装幀について一言付け加えておきたい。この小説は、カバーの基本色は紫、帯の色は銀色となっている。人目を引く色の組み合わせだが、時制が行き戻りして進み非日常的な世界を描いている小説に相応しい装幀と言える。ユニークなのは、カバーの上から4センチほどのところに、窓のような穴が穿たれていて、そこから鉄腕アトムが飛び立つ漫画の一こまが見えるようになっている。さらに、カバーをめくると、ハードカバーは暗い桃色になっていて、その一面一杯にアトムの漫画が描かれている。よく見ると、漫画の吹き出しが中国語で書かれていて、何とも凝った装幀である。小説のマスターキーとなっているアトムの漫画を上手く用いた優れた装幀に脱帽。
 

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2004/10/12 22:06

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2004/12/19 02:26

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2008/09/26 14:08

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2010/02/05 11:16

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2010/04/26 21:30

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