紙の本
経営のプロの意識革命
2004/06/13 10:25
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:青木みや - この投稿者のレビュー一覧を見る
福祉は、いままで「措置」つまり「行政による援助」であり、「可哀想な人たちへのほどこし」であった。福祉に携わっている人たち自身もその考えから抜け出せずに、「福祉を一生懸命にやっている私たち」に満足し、障害者が1ヶ月働いた給与が1万円にしかならなくても、痛痒を感じていなかった面がなかったとはいえない。
それに対して、「1ヶ月働いて1万円というのはおかしくないのか」という「当たり前」の疑問を持ち、疑問だけではなく、障害者が働いて稼げる具体的な手法とシステムを提示したのが小倉昌男の偉大さである。
小倉は、1995年にヤマト福祉財団を成立し、考えた。障害者の自立とは、働いて収入を得て生活できるようになることではないか。
「働いて自立すること」は「障害者」をかぶせなければ、大人であれば当たり前のことで、働いて自立しない大人は、ダメ人間と言われるのだ。だが、「障害者」とつくだけで、働けないこと、収入を得られないことは当然のように考えられてきた。もちろん障害の度合いにもよるだろうが、障害者だって、働いて自立したいのだ。そして、小倉は、福祉に携わる人たち向けに「経営パワーアップセミナー」を開催し、経営の基礎を教える。
本書は小倉が、ヤマト運輸で培ってきた経営のノウハウが満載されている。
「売れるモノをつくる」ことはとても大事なことだけど、
「売れる仕組みを考える」ことはもっと大事なことだ、ということです。
(第2章 福祉を変える経済学 116p)
小倉がモデルとして作った「仕組み」がパン屋「スワンベーカリー」だった。「アンデルセン」「リトルマーメイド」などのタカキベーカリーから、冷凍パン生地の技術指導を受け、「スワンベーカリー」でパンを焼いて売るのだ。
小倉は自ら、広島のタカキベーカリー本社研修センターに赴き、冷凍パン生地を使って、パンを焼く。
もちろんそれまでパンなど焼いたことがありません。
ところが見事においしいパンが焼けた。(中略)。
私ができるならば、障害者にだってできる。
(第1章 障害者の自立を目指そう!私の福祉革命 75p)
もちろん障害者だけでは、店は上手くいかない。スワンベーカリーでは健常者を障害者と同程度揃えている、という。それでも、スワンベーカリー銀座店では、障害者がフルに働けると10万円程度の月給になるのだ。ひとり暮らしをするには足りないかもしれないが、食費と自分の欲しいものは買えて、貯金できるくらいのお金だ。
本書を読んでいると、「障害者が作ったんだから」多少高かったりしても買えというのは、「慈善」の押し売りではないか?ということに気付く。
小倉は、「健常者がやってあげている」福祉の世界に、「障害者の力を信じて引き出す」福祉、という意識革命を起こした。一流の経営者はどの世界に行っても、一流なのだ、ということをまざまざと知る。
紙の本
経営を学べってことです。
2016/01/18 09:20
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投稿者:ぶっくま - この投稿者のレビュー一覧を見る
小規模授産施設などはよく知っていますが、確かに「こんなものを作っていてどうするの?」とは思っていました。一部大規模資本は、本にも書いてありますが、クリーニング工場を作ったりしています。この本で取り上げている「スワンベーカリー」は、大手パン屋からタネを買い、コーヒーも高級なものを取り寄せています。人員配置も工夫しているようです。この本を読んで、どうしたら月給一万円から脱出できるかは、もちろん具体的には書いていません。福祉に携わる人の意識改革を訴える内容です。つまり、「経営を学べ」ってことですね。それだけ言われても心にストンとは落ちないでしょう。いまは小倉さんが亡くなって直接講義を受けることはできないため、この本を読んで講義を受けたように感じるのもよいと思います。
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さすが、の一言です。
書いてある内容はホントに、基本中の基本ですので、福祉関係者に読んでほしい本ですね
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格差問題を考える一環で読んだ本。元々は若年層の雇用の非正規化とか、自立するだけの収入が見込めないこととか、そもそも将来に希望が持てないことに問題意識があったのだが、ジャンルは違うものの「障害者」の自立を、「経営」という視点で課題の解決に取り組んだヤマトの創業者の話。その手法や、資本の論理や経営の論理の存在しなかった世界にビジネスマインドを持ち込み、既に成功事例を生み出している点はすばらしいと思うが、本業からの莫大なキャッシュを基にした財団があってこそのマネジメントだと思うので、直接参考にするのはなかなか難しいのかなと。
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自分のために書き留めておかねばならない。
「障害が重い人ほどお金が必要なのであり、それだけにやりがいがある仕事をつくり出さねばならないのです。やりがいがある仕事とは、儲かる仕事です。」
第4章で事例として紹介されている、社会福祉法人はらから福祉会の武田元さんの言葉です。
商売とは、ビジネスとは、本来、社会貢献なのです。
人々に有益な商品、サービスを提供するという意味でも、雇用によって人々の生活を支え、地域の安定と発展に寄与するという意味でも。
それを継続する、という意味でも。
それがどれほど尊いことか。
「最終的に商品を買うのは、売り手側である経営者ではない、買い手側である消費者である。だから、消費者としての厳しい視点で商品を見ることこそが、良い経営のスタート地点となる。
幸い、受講者である障害者就労施設の方々自身が毎日消費者として生活している。そんな自分が消費者の目で考える。これが経営の第一歩であり、それは本来楽しい作業のはずである。つまり、経営は「楽しい仕事である」と言えるはずなのである。」
著者によるあとがきです。
本質ではないでしょうか。
障害者福祉に無関心な方にも、「経営」の、経済の、社会の本質を考える書としてお勧めします。
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この本は実は非常にわかり易い経済を理解する入門書としてつかえます。
経済オンチ?な方にわかりやすく小倉社長の経済の捉え方を説明しています。
僕は子どもが高校に通うころに読ませたい本です。
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とてもかんたんにシンプルに経営の話が書いてある本。
そして、福祉作業所経営の問題点を端的に指摘している本。
小倉さんってすごい人だな。
本当に障害が重度で働けない人は仕方ないとしても、もっと能力を生かせるはずなのに、それができない障害者がたくさんいて、それはそうしたシステムをつくっていない経営が悪いと喝を入れている。
1度スワンベーカリーを見てみたい。
小倉さん自身も取材してみたかった。
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(「MARC」データベースより)
お役所任せじゃ、もうだめだ。障害者も、自分で稼いで社会に出よう! 宅急便の生みの親である著者が、今の福祉政策を徹底的に論破。障害者ビジネスに経営力をつけさせるべく、福祉関係者に「経営」の真髄を伝授する。
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多くの障がい者がはたらく福祉作業所では、一万円、あるいはもっと少ない賃金しかもらえないのが現実である。それは、下請けの仕事や、チャリティーバザーのような儲かりにくい仕事をしているためだ。小倉氏はそのような状況を、経営者の視点をもって解決しようとした。障がい者の自立を持続的に支援していくことに関心をもっていて、かつ経営にあまり詳しくない人にとっては非常に参考になる一冊だと思う。
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ヤマト運輸の小倉さんの著書です。ちょうどカンブリア宮殿でヤマト運輸が特集されていたので、一気に読破しました。採算度外視の傾向がある福祉の世界でいかに経営するかという内容が中心。有名なスワンベーカリーも関連する企業だったのですね。福祉以外に様々な方面で役立つシンプルな原則も有。
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結論、やはり小倉氏の生涯「挑戦心」のあるところが大好きです。
現役を退いてやることがなくった後も、最初はよくわからなかった福祉でもその意識改革から固定概念や先入観を悪とする姿勢は、私も生涯貫いていこうと思います。
全体として、「経営学、経営はロマンだ」あたりを読んでいればあまり新鮮な内容はないですが、後半の事例をまじえて何が成功につながるのかを示したのははじめてみました。
チェック
・大半の共同作業所ただもしくは原材料が安く手に入る、あるいは単純作業。
・二次産業の主役の時代は終わった。
・とにかく「できることからやってみる」それが私の経験則です。
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オススメの一言 『売るための努力をしなければ「売れない」』
この本のタイトル、「福祉を変える経営」を見て、福祉は福祉なのだから、それを変えるなんて一体どういう意味だ?と思いませんか。読めば必ず分かるはずです。今の福祉の現状を、これからの福祉の在り方を、福祉を変えていくという意味をこの本を通して考えてみませんか?
みなさんは障害を持った方たちが、施設にいるのではなく、自立して働いている、又は、働こうと頑張っていることをご存知でしょうか。そもそも自立とは、自分で稼いで、衣食などを充実させることも指すのですが、これを満たすことがいかに大変なことか、しかも障害者ならば尚更大変なことであり、そして、その現状を変えていくことがどれだけ難しいことか、容易に想像がつくでしょう。ここで、著者がどのように福祉の世界を変えていこうと考えたのか少しだけ紹介したいと思います。
著者は手始めに障害者の就労実態を調べ始めました。そして、「共同作業所」という、障害のある子どもたちに実際に手に職をつけさせ、作業所内でさまざまな事業を行い、お金を稼いでいる就労施設があることを知ります。しかし、その施設の中で驚くべき事実があることを著者は知ります。それは、障害のある方たちは「月給一万円」という激安な給与で働いているという事実です。確かに、その障害者の方たちに任せられている仕事というのは、簡易な下請け作業で小学生にもできるような作業です。だからといってさすがに黙っていることはできません。そこで、この問題を著者は、「経営者」という経験から、障害者の力でも、利益を出していけることがないかを模索します。そこで、利益を出すことで、障害者の「自立」を手助けする、という課題に立ち向かっていくのです。
また、「障害者の方たちが商品を売る」ということは、健常者の常識は通用しないことばかりなのです。商品を売るために、障害者には何ができるのか、その過程で試行錯誤することがとても重要なのです。そしてそれは私たちの、生活にも置き換えられます。要するに、良い結果を得るには、過程をサボることはありえないということです。私は、この本を読んだことで、より強くそう思うようになり、資格を取るために、基礎から学びなおすこと、部活で良い成績、良いプレーができるように地道に努力するようになりました。本を読むだけでこんなに考えが変わることはもうないかもしれません。みなさんもぜひ読んでみてはいかがでしょうか。(997文字)
(オススメ人: 浦 謙人
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神田正典さんのお勧めの一冊で挙がっており興味を持ち、福祉についての視点を深めたくて読んだ。
福祉が素晴らしいという現場の意識からの脱却が先ず第一歩であり、如何に市場経済で生き抜ける福祉の仕組みを作れるかが肝ということで本書の解釈は間違いないかな。
虐待支援につながる視点がある気がする。ぼんやりとだけど。
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オススメの一言「やらないということは進歩がないということです」
もし、目の前に1万円があったらどうするだろうか。人によっては飲みに行ったり、食費や交通費に充てたり、あるいは貯金するかもしれない。ただ、たった1万円で生活してみなさい、と言われたらそれは無理だ、と答える人がほとんどだろう。
著者はヤマト運輸に務め、ヤマト福祉財団を立ち上げ、障害者の自立支援にあたっている小倉昌夫さんである。著者は毎年障害者の働く「共同作業所」の経営者を対象とした経営セミナーを行っているが、このセミナーは多くの人に参加して貰うため、交通費や食事代も含め、資料代の5000円以外はヤマト福祉財団が負担している。著書ではセミナーで行っている内容や、セミナーを行うまでの流れ、障害者に対しての思いや、著書の立ち上げた障害者を雇用した「スワンベーカリー」などの事業紹介、そして経営方法などが書かれている。
私は著書を読んで驚いたのだが、共同作業所に務めている障害者の給料は月給1万円だという。著者は確かに障害者には支援金も出るし、親御さんも理解のある人が多いが、もしもの場合には1万円で暮らしていけない、それに障害者でも働きたいという意欲に溢れている人は多く、そんな人達に働く喜びを知ってほしい、と著書で語っている。
読んでいて面白いな、と思ったのは働くようになった障害者の方が、もらった賃金のおかげで趣味を持つようになり生き生きとするようになった、という話である。働くことは生活する為に仕方なくすること、というマイナスイメージを少し持っていた私にとっては目から鱗であった。
著書では主に後半部分に経営方法や経営のノウハウが書かれているのだが、そこを読んでいて良いな、と思ったのが、オススメの一言の「やらないということは進歩がないということです。」だ。この一言は著書の後半部分の、デメリットを克服し、メリットに変えるため、考えることが大事なのだ、と説いている部分で出てくる一言なのだが、著者は考えても出てこないなら出来ることからやってみろ、と言う。
私は時々頭で考えすぎて、実行に移せないことがあるタイプなので、この言葉を読んで取りあえず行動に移してみるしかないか、と背中を押してもらった気分になった。
読んでいて、自分の知らなかった障害者雇用の実態や、経営を行う上で大事にすべきこと、そして背中を押して貰える言葉の書いてある、きっと自分の知らない世界を知ることのできる本なので、是非読んで貰いたい。
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良書。
福祉関係者、福祉に興味ある人ならばぜひ読んでもらいたい一冊である。
そういった方には、少し耳の痛い話が随所に出てくるかもしれないが、
僕自身思い当たる所があるだけにぜひ読んでもらいたい。
重要な部分が何度も繰り返し書いてあるので、きっちり頭に入り、また読みやすい。
ただ、小倉昌男氏自身にかなりの資金力があったからこそ、このような事が出来たのだろうとは思う。