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紫式部を探偵役に、その侍女を狂言回しにして、帝御寵愛の猫の失踪の謎を解く第一部、源氏物語の「失われた巻」を追う第二部、そして、エピローグの第三部が語られるんですが、これが私の大好きなシチュエーション、一息に読みきりました。
「源氏物語」を書き始めたばかりの若き日からその死後にいたるまでの、紫式部と彼女をめぐる平安時代の女性たちが、とても魅力的でした。
これまで私は、紫式部って、清少納言と比べると、因循姑息って言うか、いけず、って言うか、そういう人だと思っていたので、この作品の式部像はとても新鮮。知的で緻密で、思いやりと勇気に富んだ式部が、爽やかに描かれていて、なるほど、こんな人が作者なら「失われた巻」は存在するかも、と思わせます。
そして第三部での小さな仕返しが、なかなか、いい気味。
式部のほかにも、中宮定子、彰子ほか、綺羅星のような女性たちから、狂言回しの侍女たちに至るまで、みんな輝いています。唯一いじけていた承香殿元子の変貌振りが私のイチオシ(笑)かな。
これは、胸の中に炎を持った女性たち、の物語だと思いました。
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式部、あてき、いぬき、岩丸、道長、定子、彰子といった登場人物が生き生きと描かれている。各々が抱える心情が魅力的に表現されています。そして、肝心のミステリ部分。歴史上の謎とされる部分の解決も、また素晴らしい。「かかやく日の宮」は誰がどうして葬り去ったのか。「雲隠」の章がタイトルしか無いのはなぜなのか。平安時代にこういったドラマがあったのかも知れない、と思わせる内容でした。歴史物、と躊躇されずに。多少なりとも興味を抱いたならば、ぜひ読んで頂きたい作品。
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平安時代に興味を持った人ならすらすら読めます。ミステリーでもあるので、割と楽しく読めるフィクションです。これはオススメ。
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紫式部を探偵にした半フィクション(?)ミステリ。くだけた現代語なので、古典の知識が飛んじゃってる私にも分かりやすかったです。登場する人物達がなんともキュート。元気いっぱいおてんば娘の「あてき」に、聡明でちょっと茶目っ気のある紫式部、真面目で忠義心厚い「いぬき」。皆生き生きと、まるで現代に生きているようです。あてきの初恋はちょっと昔の少女マンガのように可愛いです。物語の作者として、自分の手を離れた物語がどのように広がっていくのか恐ろしい、というのは著者自身の言葉のように感じました。後半の源氏物語の幻の一帖「かかやく日の宮」についてのミステリは、歴史ミステリでもあります。そこで興味を引かれて、源氏物語をもう一度読んでみたくなりました。
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紫式部に仕える少女の目を通して描かれる真実の歴史?
式部が探偵役の平安ミステリーの形にまとまっていますが、それだけが魅力ではありません。
知的な大人の女性でしっかり者の式部像がさりげなく丁寧に描かれて、好印象です。
時の権力者でパトロンのような道長との関係も、「輝く日の宮」よりもだんぜん、納得がいきます。
もっと書いて欲しい作家さんですね。
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源氏物語を書いた紫式部が探偵、その侍女が助手となって「日常の謎」を解明する系の短編にはじまり、最終的には源氏物語に「かかやく日の宮」と呼ばれる今では失われてしまった部分があったという学説をもとに、その部分が何故失われてしまったかという話になっている・・・のかな。
源氏物語、全然うろ覚えなのでもっとよく内容を覚えていたら話がわかりやすかったかなと思う。
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平安時代を舞台にしたミステリーもの、ですね。
私はあまりミステリーが得意ジャンルではないので、なかなか読むのが大変でした。
でも、舞台背景や、紫式部が探偵のようになり謎を解いていく物語の展開は、なかなか斬新で面白いと思いました。この時代独特の文化や風習などが鮮やかに織り込まれ、無理なく綴られてゆく物語は色々な意味で勉強になりました。
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数ある源氏本のなかでもなかなかよかった。これをキャスティングしようとおもったのだが、最近の若い俳優さんを知らないのでキャスティングできないんでやんの。いとくやし!
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源氏物語読者をうならせ、満足させる一作。
源氏物語の全訳(与謝野版)を読んでいるときに、
いろいろと調べている中でこの本を知った。
失われた一帖「かかやく日の宮」の謎にせまる!
というこの本をすごく読みたくなった。
源氏物語を読んでいて、矛盾というかおかしな点があるのを不思議に思っていたから。
はじめは私が鈍いからかと思ったのだけど、何度読み返しても突然登場する朝顔の君に源氏がどうしてあんなに惹かれているのか分からないし、里に帰っている藤壺と逢瀬を交わしたのは「2度目」のニュアンスが漂っているのに、なぜか肝心の1度目の逢瀬の場面がないことなど不思議で、調べていくうちに失われた一帖があるということを知ったのだった。
失われた一帖の謎にせまる!というキャッチコピー(?)のこの本だけど、実際に読んだらそれ以上の本。
紫式部が源氏物語を書き始めた時代の史実を忠実に
描く中で、登場人物が生き生きと描かれている。
それに、紫式部が源氏物語をどんな気持ちでどんな様子で書いたかをよく描いていて、メイキングレポート風なのも、源氏ファンにはうれしいところ。
豪華な調度の藤壺の局について描写したいけれど、宮中へなど行ったことはないし、そんな豪華な調度も見たことがないのに、どうやって描写しようと悩んだり、作者の手を離れて一人歩きしている物語を心足らず思ったり。
宇治十帖をどんな気持ちで書いたのか、「道長」をモデルにしているとも言われるその訳や、紫式部が巻の名前だけつけて本文を意図的に書かなかったと言われる「雲隠」の帖の話についても面白い。
もちろん「かかやく日の宮」についての話も。
こうした時代小説は、架空の人物を物語りのキーマンにしたりとか、史実とは全然違うストーリーにしても(例えばあのとき死んだはずの人が生きている、とか)それはそれで面白いんだけど、史実に忠実なストーリーにしようというなら、これくらい忠実にしたほうが断然面白い。
まるでその時代に読者が生きているかのように思わせてくれるから。
この作者、そうとう古典好き、歴史好きな方のよう。
随所に古典からの引用が見られる。
中宮定子様の出産の際の里下がりで、大きい御所車が門を通れず、人に顔を見られながら歩いて家に入ったこと、それに猫の命婦のことも枕草紙の中に書かれていたはず。
惹かれるものがあったので検索したところ、水を生んだ元子女御も実在の人物で、一条天皇崩御のあと源氏の中将と恋愛したことも史実だし、「あてき」という女童は紫式部日記に登場していて、あてきもまた実在人物なのだという巧みさ。
3つのお話は、話ごとに時間が進み、登場人物の立場が劇的に変わったり、結婚したり、夫が死んだり、また登場人物が亡くなっていたりしていて、話を語る目線の人物すら変わっているその流れは、源氏物語と似ていて、第二の源氏物語とすら言えるかもしれない。
ああ、本当にすごい。
なんでこんな小説が書けるんだろう?
作者は紫式部の生まれ変わりなのかもしれない。
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枕草子を読んだ後だったので
視点が違うとこんなにも平安の世界が変って見えるのかと
面白く読んだ。
面白く読めたのは
枕草子で平安の世界観や民俗的なことが分かっていたからだと思う。
あまり好きではない紫式部や源氏物語への考え方がちょっと変った。
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【目次】
上にさぶらふ御猫…帝のご寵愛の猫が消えた
かかやく日の宮…源氏物語幻の巻
雲隠…すべての結末
【感想】
上にさぶらふ御猫は、紫式部に使える「あてき」という猫好きの女童の一人称で語られる。紫式部の冴えのある推理がおもしろい。道長とのやりとりもあるので、源氏物語好きには面白いと思う。
かかやく日の宮は、「あてき」の友達「いぬき」という少女の一人称で語られる。源氏物語が宮中で話題になる中、かかやく日の宮の巻だけが何者かによって失われてしまう。そこで再び紫式部の推理が冴える!!
雲隠はすべての事件の真相が犯人に告げられ、紫式部が宮中を去るところから娘の賢子の話まで。
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源氏物語テーマの連作で、どれも日常の謎系統。第一部「上にさぶらふ御猫」は、あまりインパクトなくちんまりと納まっている印象があるのだけれど、実はかなりきっちり練られた論理が感じられる。あとで思い返してみると伏線も多かったしなあ。お見事。
メインは第二部「かかやく日の宮」。これは「源氏物語」研究の上でも謎……なんだっけ? ま、源氏物語をまるで知らないというのなら苦しいだろうけれど、ある程度の知識があれば読むのに苦労しない作品。ただし古典用語が多いのは少しつらいかも。注釈が欲しいなあ。
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源氏物語を知ってれば知ってるほど楽しめると思う。
昔現代語訳を読んだだけのわたしには少し難しかったけど、
紫式部や道長など登場人物たちの人間味がゆたかに描かれていて
なんだかみじかに感じてしまった。
もう一度源氏物語を読んでから、この本を再読したい。
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2004年8月28日読了。以下、過去の日記から抜粋。
『源氏物語』執筆談のようなものです。
私達は、『源氏物語』の矛盾に気づきながらも、
突拍子もない想像のようなものはできません。
これは作家という自由な発想ができる立場の人間だから
書ける作品だと思いました。面白いですよ。
でも、『源氏物語』には幻の巻があるのだということを知らなければ、
何のことかよく分からないかもしれませんが・・・
強引な部分もありましたが、興味深いお話でした。
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帝の猫が消えた。その後、大臣家の猫も消えた。藤原香子につかえる女童のあてきは道長様から暇を出された岩丸への疑いを晴らすため奔走する。
小侍従から源氏物語に関する疑問点を聞かれ、写本の源氏物語に『かかやく日の宮』が足りないことに気づく。そのわけを探っていく。
紫式部があまり好きではなかったのですが、この本を読んでとても印象が変わりました。式部に仕えていたあてきは幸せものだなと思いました。定子も彰子も恵まれた人物かと思っていたのですが、定子はなかなか苦労していたんだなと知りました。道長は思った通りの人柄で、歴史上の人物たちがいきいきと動く姿を読めるのが楽しかったです。
書き上げた物語が自分の手を離れてどうなっていくのか…という部分が印象的でした。思いをこめて書いたものが勝手に変えられてしまうのはひどいことだと思います。いつの時代でもありえることだと思いました。