投稿元:
レビューを見る
涙が出そうになった。
そんな詩が、いくつもある。
かならず何度も読み返したい。
そう思った。
こころを打つ言葉たちに感謝。
なによりも、この詩人に感謝。
投稿元:
レビューを見る
心に刺さる詩集。
ケンカしたとき、
パートナーの存在に感謝できなくなるとき、
子どもにどう声をかけていいかわからなくなったとき(まだいないけど)、
読みたくなる一冊。
詩人の吉野弘さんの詩集。結婚、出産、子どもの成長、というように、家族の変化の過程に合わせて、吉野弘さんの詩が順番に編み込まれている。
これを読むと、落ち込んだ時、浮かれている時など、どちらかのメモリに針が振りきれてしまっている状態の心を、ニュートラルな状態に戻してくれる。
詩集は以下の詩から始まる。
「祝婚歌
二人が睦まじくいるためには
愚かでいるほうがいい
立派すぎないほうがいい
立派すぎることは
長持ちしないことだと気付いているほうがいい
完璧をめざさないほうがいい
完璧なんて不自然なことだと
うそぶいているほうがいい
二人のうちどちらかが
ふざけているほうがいい
ずっこけているほうがいい
互いに非難することがあっても
非難できる資格が自分にあったかどうか
あとで
疑わしくなるほうがいい
正しいことを言うときは
少しひかえめにするほうがいい
正しいことを言うときは
相手を傷つけやすいものだと
気付いているほうがいい
立派でありたいとか
正しくありたいとかいう
無理な緊張には
色目を使わず
ゆったり ゆたかに
光を浴びているほうがいい
健康で 風に吹かれながら
生きていることのなつかしさに
ふと 胸が熱くなる
そんな日があってもいい
そして
なぜ胸が熱くなるのか
黙っていても
二人にはわかるのであってほしい」
この詩以外に、「母と船と雨」や「虹の足の中の家」など、印象深かった詩もいくつかあったが、祝婚歌以外では、以下の詩が一番胸に刺さった。
「奈々子
赤い林檎の頬をして
眠っている奈々子。
お前のお母さんの頬の赤さは
そっくり
奈々子の頬にいってしまって
ひところのお母さんの
つややかな頬は少し青ざめた。
お父さんにもちょっと酸っぱい思いがふえた。
唐突だが
奈々子
お父さんはお前に
多くを期待しないだろう。
ひとが
ほかからの期待に応えようとして
どんなに
自分を駄目にしてしまうか。
お父さんははっきり
知ってしまったから。
お父さんが
お前にあげたいものは
健康と
自分を愛する心だ。
ひとが
ひとでなくなるのは
自分を愛することをやめるときだ。
自分を愛することをやめるとき
ひとは
他人を愛することをやめ
世界を見失ってしまう。
自分があるとき
他人があり
世界がある。
お父さんにも
お母さんにも
酸っぱい苦労がふえた。
苦労は
今は
お前にあげられない。
お前にあげたいものは
香りのよい健康と
かちとるにむづかしく
���ぐくむにむづかしい
自分を愛する心だ。」
ふと読んでいる時、自分の父親の顔が頭に浮かんだ。自分もこういう父親になりたいと、心から思った。
結婚したばかりの人や、結婚して幾ばくか経った人で、結婚当時のことを思い出してほっこりしたい人に、おすすめの一冊。
投稿元:
レビューを見る
二人が睦まじくいるためには
愚かであるほうがいい
立派すぎないほうがいい
結婚式でよく読まれる、「祝婚歌」はとても有名ですね。
吉野さんの作品をきちんと読むのは初めてでしたが、詩集に集められた作品は小さな日常を静かに営む家族の視点でした。
(詩人、長田弘の死を悼み)
投稿元:
レビューを見る
祝婚歌、これが一番いい。
早春のバスの中で 新しい生命のために編み物をする人
白い表紙 電車の中で育児書をひらいたまままどろむ女性、
この二歌も好き。
しかし、祝婚歌は谷川俊太郎編「祝婚歌」に収められていたことに
気づかなかった。
何年か前にもらった谷川さんの「祝婚歌」も、もう一度
読んでみた。
投稿元:
レビューを見る
ゆったり ゆたかに
光を浴びているほうがいい
健康で 風にふかれながら
生きていることのなつかしさに
ふと 胸が熱くなる
そんな日があってもいい
……理想の生き方。
人は生きていく中で人を愛し、愛され、穏やかな時、激しい時、出会い、別れを繰返し経験し一生懸命に生きている。
今、この詩を読んだことでほんのちょっとだけひと休みできた気がします…。
特別な人に対する思い、10年後にこの詩を読んで何をどう感じているのだろう。
そう思うとまた、これから暫く生きて行くことがすごく楽しみになってきました。
お気に入りは、「ひとに」「夕焼け」です。
投稿元:
レビューを見る
吉野さんの言葉はとても美しい。
知性のきらめき。慎重に慎重に、選ばれた言葉なんだろうと思う。
美しくて、ちょっと切なくて泣けてくる。
お父さんとしての愛情を随所に感じるせいかもしれない。
読むほどに、とても良い詩集。
傷ついたり悩んだりすることがあれば、必ず力になってくれるだろう。
ありがたい。
恩師に頂いたものです。大切にします。
投稿元:
レビューを見る
「祝婚歌」はこれから結婚生活における大切な教えとして思い出したい。
忘れないように、折に触れて読み返したい、小さな素敵な本。
投稿元:
レビューを見る
2016年、8冊目です。
詩集は、いいね。
中学生から高校生の頃、詩を書いていたことがある。
結構書いたと思うが、あのノートはどこにいったのかな?
吉野弘の「祝婚歌」は、とても素晴らしい。
慈しみに似た想いが、二人の将来に注がれている素晴らしい作品ですね。
これから人生を一緒に歩み始める二人にも、
今までずっと一緒に人生を歩んできた二人にも、
贈ることができる詩だと思います。
もう一つ気に入ったのは「生命は」の詩の一節です。
世界はたぶん
他者の総和
しかし
互いに
欠如を満たすなどとは
知りもせず
知らされずもせず
ばらまかれている者同士
無関心でいられる間柄
ときに
うとましく思うことさえも許されている間柄
そのように
世界がゆるやかに構成されているのは
なぜ?
自分と他者によってこの世界は構成されている。
それはなぜなのか?
他者への寛容も、求められていることの一つだと思うが、
それさえも、何故なのか?
永久に続く問い。
おわり
おわり
投稿元:
レビューを見る
冒頭に「祝婚歌」が置かれた詩集。
結婚祝いに友人からいただきました。
前に別の友達が紹介してくれた詩も載っていた!
染み渡るような、気持ちのいい読後感。
このコンパクトさもよくて、ずっと傍らに置いておきたい一冊。宝物になりました。
投稿元:
レビューを見る
吉野弘の詩から「愛」と「いのち」にかかわるものを集めています。著名なものは収録されています。装丁もきれいで読みやすく、人に差し上げるのに最適です。
投稿元:
レビューを見る
◆きっかけ
『この声をきみに』
◆感想
図書館。冒頭の「祝婚歌」がドラマのなかで読み上げられているのを耳にして、文字で、他の作品と共に読みたいと思って。
以前借りて読んだ『贈るうた』に掲載されていたものも多く含まれていた。
祝婚歌、一言一言が、染み入る。それを心にいつも留めておきたい。購入して手元に置きたい。「愚かでいるほうがいい 立派すぎないほうがいい」「非難できる資格が自分にあったかどうか あとで 疑わしくなるほうがいい」「正しいことを言うときは 相手を傷つけやすいものだ気付いているほうがいい」
「生命は」の「めしべとおしべが揃っているだけでは 不十分で」の部分を読んで、最近読んだ『春の数えかた』で、そのまま分裂して増えていけばいいところを雌花と雄花にわざわざ分かれているのは、世界に異変が起きた時に対応するため、突然変異をして生き残るためだというようなことが書かれていたことを思い出した。
親子、母子の詩も多かった。「奈々子に」は、そっくり、娘への気持ちと重なって響いた。「ひとが ほかからの期待に応えようとして どんなに 自分を駄目にしてしまうか お父さんは はっきり 知ってしまったから。 父さんが お前にあげたいものは 健康と 自分を愛する心だ。」
「創世記」の臍の緒のエピソード、長女の出産を思い出した。助産師さんに取り上げられた娘の、水を含んでパンパンな顔。想像より白かったへその緒。もうすぐ息子が誕生する。どんな出会いになるんだろう。
「虹の足」他人に見えて、自分には見えない幸福…。
「ほぐす」これも、ドラマの中で読まれていた。「結ぶときより、ほぐすとき すこしの辛抱が要るようだと」
「I was born」
巻末の、茨木のり子さんの解説も良かった。祝婚歌についてのあれこれ。銀婚式にも合うねという話。両親の還暦祝いと共に送ろうかと思って、目上の人に送るのもどうかなと思ってやめた。
2018/1/9
文庫の『吉野弘詩集』を購入したのでこちらの購入はやめよう。2018/3月
投稿元:
レビューを見る
ブクログ通信で知った本
「祝婚歌」YouTubeで合唱を聴いてみた
メロディにのせた方が少しは良さがわかったような・・・ この手の詩への感情は人より薄い・・・
好みの詩は
「夕焼け」電車でおとしよりに何度も席をゆずらなくていけないような状況におかれたやさしい心の持主の娘
やさしい心の持主は他人のつらさを自分のつらさのように感じるから。
やさしい心に責められながら・・・
「奈々子に」
作者から娘さんへおくりたいもの
健康と自分を愛する心
「風が吹くと」
風が吹くとお池の水にシワが出来るのね
なにが吹くとおじいさま
おでこやほっぺにシワが出来ちゃうの
~子どもらしいかわいいつぶやき
投稿元:
レビューを見る
すきなものに感想をひとことずつ。
「祝婚歌」
有名な詩ですね。うちの本棚に同名のアンソロジーもあります。結婚式のスピーチで読まれる定番らしいですけど、あまりおよばれしたことがないせいか、実際に聴いたことは、まだありません。
「ひとに」
こんなことを好きな人にいわれたら、最高に嬉しいでしょうね。
「早春のバスの中で」
若い人がうらやましくなります。
「生命は」
私も、誰かの風になったことがあるのかな。
「白い表紙」
幸せな光景です。
「夕焼け」「I was born」
このふたつの詩は教科書で読んだ記憶があります。
「美しい夕焼けも見ないで」という結びが印象的です。
「雪の日に」
毎日、雪ばかりで嫌になったら(北国に住んでいますから)この詩を思い出すといいかもしれないですね。
「奈々子に」
これも、親でなくても、誰かに言われたら、大切にされているのを嬉しく思うでしょうね。
他の詩も素敵なものばかりです。
解説は茨木のり子さんです。
投稿元:
レビューを見る
詩集って、読むのに文学的センスが必要で、少し敷居が高いイメージがあったけれど、この本に載せらせている詩に関しては、しみじみと深みはあるけど、読みやすくて理解しやすいものがほとんどだった。
個人的には特に、
祝婚歌/生命は/一枚の絵/奈々子に/ほぐす
はすーっと心に染み込んで、勇気をもらえた。
いつまでも心に留めておきたい大事な出会いになった。
茨木のり子さんによるあとがき(?)によると、
この「祝婚歌」は知り合いのドイツでの結婚式で、ドイツ語に訳されて聖書の一節とともに読み上げられ、現地の出席者にも大きな感動を与えたらしい。
それを聞いた吉野さんが喜んだことに対して、
「文学畑の人々に読まれ云々されることよりも、一般の社会人に受け入れられることのほうを常に喜びとする、吉野さん…」とのこと…
詞がストンと胸に落ちる理由が分かった気がした。
とは言え、まだ自分の人生経験の浅さゆえ、理解が及ばない詩もあったので、ぜひまたいつか読み直したい。
投稿元:
レビューを見る
優しいまなざしの観察者
母を、子を、神聖なもののように見つめている
奈々子に が特に好き
子に対する、これ以上の愛はないと思う
ひとはほかからの期待に応えようとして、自分を駄目にしてしまう
自分を愛することをやめるとき、ひとは他人を愛することをやめてしまう
自己肯定感が大切という風潮は最近のものだと思っていたけれど、ずっと前からそれを伝えている人がいたなんて