紙の本
夢のまま
2003/12/07 01:58
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:黒塚 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「小説・読書生活」を読んだ。
ページを捲るごとに、そこに書かれている文字は正しく「夢」を綴っていた。
夢には斜め45度に傾いたようなリアリティがあるが、それをそのまま表現できている作品を、私は読んだことがなかった。
夢を模した作品ならいくらでもある。
また夢の不条理さを著そうとした作品もたくさんある。
しかし、この作品は「夢」そのものなのだ。
夢の次元は二次も三次も四次も混線した状態で存在する。
だから無茶苦茶な場面展開や時間の超越も、夢の中では大きな疑問にならない。
そして目が覚めた後に、「変な夢だったなぁ」と思うのだ。
その感覚を「読書生活」では味わえる。
脳内から生み出される喩えようのない感覚を、ここまで文字に写しきっている文学というのは、たぶん、本邦初、いや、世界初といっていいのではないだろうか。
グレゴール・ザムザの体験も、一千一秒の物語も、「小説・読書生活」に比べれば、はるかに現世の律に従っている。
寒天の様に頼りなく、そのくせ崩れない世界がここにはある。
この本が著者関戸克己氏の処女作にして、遺作だという。
最近、既成のジャンルに収まりきれない優れた幻想的作品を多く目にするようになった。
関戸克己氏は確実にその先駆者であり、やがて中心的存在になる才能だったと確信する。
そう思うと、真に哀惜の念に堪えない。
氏のご冥福を心からお祈りするとともに、この作品を私たちに届けてくださった関係者の方々に心からお礼を申し上げたいと思うのである。
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妄想の上塗りの世界が大好きな方は ドウゾ
いや、マジで、一話 なのに、百個ぐらいの話が入っている気がしてなりませぬ。
一行読むのにも体力が必要
あちらの世界に 足を踏み入れています。ちゃんと帰ってこれるか、不安になるぐらい。
でも、好きだ。
この、なんとも言えない世界観。
ぐちゃぐちゃだと思っていたのに、何処か理路整然としていて 最後に 驚く。
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元気なときに読まないと吸い込まれて戻って来れなくなる恐ろしく甘美な一冊。
衝撃でした。
夢の世界をあんなに書ける人がいるなんて。
そしてそんな人がもうこの世にいないなんて。
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京極夏彦さんの妖怪シリーズに出てくる関口先生のモデルとなった方の小説、ということで手に取ってみたのですが、、、
これが、大変に面白く、大いに私のツボにはまってしまいました。大変好き嫌いの分かれる作品であろうし、小説というカテゴリとは言いがたいような感も否めません。しかし個人的にはかなりの衝撃を受けました。こんな面白い作品にまた出会える事があるなんて、人生って面白い!とつくづく思いました。私はかなりすんなりとこの世界観に馴染めましたし、なんだか共感のようなものを得ました。
ただ、この関戸克巳さんは既に急逝されており、もう新作を読む事ができないというのがただただ悔やまれてなりません。
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京極堂シリーズに登場する小説家・関口巽のモデル、関戸克己氏の幻想小説集。「生きている渦巻」が一番好きです。もう新作は作られないのが至極残念。
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関戸氏の独特の世界観が存分に詰まっています。
小説は、それを書く人間は本当に面白いと思わせてくれた一冊です。
飲む小説との事ですが、完全に飲まれました!
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素晴しいです。
なんとも説明しがたい世界観で、ジャンルで分けられるような本じゃないと思います。
こんな世界観を生み出せるなんて本当に凄いなぁと。
これからもたくさんの作品を読みたかったです。お亡くなりになられたことが悔やまれてなりません。
ちなみに私は「生きている渦巻」が特に好きです。
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関戸先生作品はこの一冊だけ。遅筆で推敲を繰り返す人だったよう。
宮沢賢治、夢野久作、稲垣足穂……、幻想的世界を生み出す作家は多くいますが、関戸先生は現実的幻想世界という感じ。
とても現実的なのです。キャラクターの台詞一言一言から、「これは現実なのだよ?」という威圧があります。
装丁もしっかりした表紙の反面、地味で、価格も2800円。しかし先生の作品はこれ一冊。
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この著者の関戸さん、京極夏彦先生の百鬼夜行シリーズに出てる関口巽のモデルだそうです。
悪い夢を見てるような小説なのになぜかどんどん侵食される様な。「飲む小説」とありますが、逆にダム穴にでも飲み込まれるような感覚。
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関口巽のモデルと知って手に取ってみました。シュールなストーリーのないストーリー。なぜかやたら味覚を刺激させられた気がしました;「読書生活」と「生きている渦巻き」が好きです。
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京極夏彦の百鬼夜行シリーズでおなじみ、関口巽のモデルであるとも噂される作者の唯一の作品集。一つ一つの短編に、断片化された無数のエピソードが詰め込まれている。奇妙で不気味なイメージの奔流に翻弄され、甘美な悪夢に魘されるかのような感覚がなぜだか快感。もっとこの世界に浸っていたいのに、もう新作が読めないのが残念。
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生死を超越して彼岸をさまようイリュージョンが広がる。京極夏彦を知らずして出会いはなかったし、そもそも京極夏彦の存在なくして世に紹介されなかった作家なのだろうね。つげ義春の漫画を小説で読むような感覚があった。表題作の途中で放棄しそうになったが『生きている渦巻き』はそれなりにハマった。いや、慣れただけかな。それでも夭逝は惜しい作家だと思う。
生死を超越して彼岸をさまようイリュージョンが広がる。京極夏彦を知らずして出会いはなかったし、そもそも京極夏彦の存在なくして世に紹介されなかった作家なのだろうね。つげ義春の漫画を小説で読むような感覚があった。表題作の途中で放棄しそうになったが『生きている渦巻き』はそれなりにハマった。いや、慣れただけかな。それでも夭逝は惜しい作家だと思う。