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3世紀の危機を描いている。
元老院は力を失い、軍団から支持されて皇帝になってもすぐに殺され、
蛮族の侵入は激化し、まさに満身創痍といった雰囲気。
拡大期と衰退期では国民性から違ってきてしまうんかなぁ。
今の日本も衰退期にある気がするから、この先心配。
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11巻以降の文庫化は1年に1冊ずつ。待ちきれなくなって禁断の単行本を図書館で借りることにした。
街が放置され山の頂上に移住していく図が印象的。なんとも哀しくなってくる。
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紀元211年、皇帝カラカラから紀元284年、皇帝カリヌスまで。
ローマ帝国「3世紀の危機」次から次へと皇帝が謀殺される危機の時代、筆者の調査力・筆力に感嘆するばかり、「塩野ローマ」に引き込まれている。
「属州民へのローマ市民権・・・人間はタダで得た権利だと大切に思わなくなる」
「人間は所詮、全員平等でいることには耐えられず、何かで差別しなければ生きていけないのかもしれない」
「ローマ市民権・・・誰でも持っているということは、誰も持っていないことと同じ、ブランドは死んだ」
「「人間とは、事実だから信ずるのではなく、事実であって欲しいと思う気持ちさえあれば信じてしまうもの」
「人々を一つの運動に巻き込むには、合理を唱えていては成功は難しいのが人間性の一面でもある。ユダヤ民族は1800年前の自分たちの土地に帰ることに固執したからこそ、国家イスラエルは誕生できた」
「健全な国家と不健全な国家の違いは、その国が持っている軍事力が国の外を対象にしているか、それとも国内を向いていらかを見れば分かる」
「なぜ宗教には金が集まるのかと言う、古今東西普遍の原理」
「宗教は純粋な信仰のみでは組織としては成り立たない。純粋な信仰と冷徹な組織力と言う二つの車輪が不可欠であり、そしてその両輪をまわすのに必要な油も欠くことは許されない」
「ローマ皇帝ペルシャに捕らわる・・・権威失墜の後に訪れるのは、残された者同士の団結ではなく、分裂である場合が圧倒的に多い」
「実力主義化か貴種主義か・・・生まれや育ちが自分とはかけ離れている人に対して、下層の人々が説明のしようのない敬意を感ずるのは、それが非合理だからである。多くの人にとってより素直に胸に入ってくるのは、合理的な理性よりも非合理的な感性のほうなのだ」
「ローマ帝国に対するキリスト教徒の罪とは、何を信じていたかではなく、それを信ずることを通して反国家的な組織を形成している、ということのほうにあった」
キリスト教の台頭の要因
ギボン「ローマ帝国衰亡史」
ドッズ「不安の時代の異教徒とキリ スト教徒」
キリスト教に帰依することが、現 実の生活でも利益をもたらしてい たこと。多くの人がそれなくして は生きることが難しい帰属心を与 えるのに成功した。
「不安の時代にはかえって不寛容な教えのほうが力強く見える」
「ユダヤ教とローマ帝国は正面から激突したが、キリスト教はローマ帝国内にいつのまにか浸透していた。キリスト教会がローマ帝国に歩み寄ったのではないか」
「キリスト教への入信の儀式として洗礼を考えた人は、天才であったと私は思っている」
「人間とは、明確な白から明確な黒に移る場合、ためらいを感じて立ち止まってしまうものだ。中間に広いグレーゾーンを持たせ、変わるといってもたいした変化ではないかと思わせることくらい、善男善女を動かすのに有効な戦術もない」
「キリストの神は人間に、生きる道を示す神である。一方ローマの神々は、生きる道を自分で見つける人間を、かたわらにあって助ける神々である」
���ローマの神々は全力をつくす人間を守護する、繁栄の時代に適した宗教。キリスト教の神は、悲惨な現状も神の与えた試練になり、苦悩も人間の魂の浄化に役立ち、死後の平安も保証してくれる」
「キリスト教徒は、ローマ帝国の打倒は意図していなかった。あえて言えば、乗っ取りを意図していたのだ」
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まさに迷走。なぜ皇帝を殺害するかすらあやふや。立ち直れるんだろうか、と思うが、すでに歴史なので、結末は知っている。それなのになお読ませる塩野さんに拍手。
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ブログにレビューを書きました。
http://yo-shi.cocolog-nifty.com/honyomi/2004/02/12-4dd9.html
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2010/06/14 なんかもう見てられなくなってきた。めまぐるしすぎる時代なのに、明晰な文章で呑み込めることに感服。
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ローマの衰退が書かれる。ただただ衰退していくだけ。ある意味単調だが、ある意味展開がめまぐるしく、記憶には残らなかった。
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皇帝が次々と変わり、滅亡への道をたどる。よそ事とは、感じられない。
阿部政権は、踏みとどまれるかと思いつつ読み終えた。
やはり、ユリウス・カエサルのような英雄の話に比べると、面白味に欠けてしまう。
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3世紀のローマ帝国は文字通り衰退の色の濃い時代でした。優れた軍人皇帝がヴァレリアヌス(ササン朝ペルシャに捕縛)、ゴティクス(病死)、アウレリアヌス(謀殺)、プロブス(工事現場崩壊による謀殺)、カルス(落雷による死)のように何人か出たにも関わらず、其々短命政権に終わり、単なる軍人がトップを占めたことも不運だったと思います。しかし、3世紀初めのカラカラ帝によるローマ市民権の開放という開明策が、逆にローマ市民権の有難さを失わせたという説明は大学進学率の普及がエリートの喪失に繋がっている今の時代にそっくりだと思いますし、経済危機と通貨切下げ(デナリウス銀貨の銀含有量の削減等)の連続による国家信用の失墜という記述も衰退の必然性を説得力を持って語ってくれます。そして内患以上に外憂としてライバル・ササン朝ペルシャの勃興、ゲルマン民族の活動活発化などの要因も重なったという、滅亡へ向かう時代というのはそうなのかも知れません。ディオクレティアヌス、コンスタンティヌスという4世紀の偉大な皇帝の前の時代の知られていない時代ですが、キリスト教にとっては迫害のない平和な時代だったということもその通りかも知れません。世界そのものであったローマの斜陽を痛感させられました。
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(2016.10.09読了)(2016.09.28借入)(2004.02.05・三刷)
紀元211年から284年までの73年間について記してあります。
この間に亡くなった皇帝は、22名です。共同統治期間も含めて一番長い人で15年間、短い人で半月です。14名の方が謀殺で亡くなっています。ほかの方は、自殺、戦死、病死、事故死などです。
ローマ帝国も滅亡に向かっている途中という感じです。
紀元260年に西方にガリア帝国が創設されます。現代のフランス、スペイン、ポルトガル辺りが、ローマ帝国から分離されます。
紀元267年に西方でパルミラ王国が創設されます。現代のシリア、レバノン、ヨルダン、エジプト辺りがローマ帝国から分離されます。
パルミラ王国は、272年に、ガリア帝国は273年に消滅し、元のローマ帝国は復活します。
267年から272年までは、ローマ帝国が三分割された状態になっていました。
統一を取り戻す事が出来た皇帝は、アウレリアヌスです。再統合に成功し、ローマで凱旋式も行い、東方に向かう途中で、謀殺されてしまいました。秘書官をしかりつけたのが原因とか。怖いですね。
【目次】
読者に
第一部 ローマ帝国・三世紀前半
第一章 (紀元二一一年‐二一八年)
第二章 (紀元二一八年‐二三五年)
第三章 (紀元二三五年‐二六〇年)
第二部 ローマ帝国・三世紀後半
第一章 (紀元二六〇年‐二七〇年)
第二章 (紀元二七〇年‐二八四年)
第三章 ローマ帝国とキリスト教
年表
参考文献
●「アントニヌス勅令」(19頁)
「アントニヌス勅令」と呼ばれた法は、ローマ帝国内に住む自由な身の人々全員に、もれなくローマ市民権を与えると定めた法律であった。
「ローマ市民」と「属州民」の差別は撤廃されたのである。
●農耕民族(127頁)
生活水準の向上は、人間を保守的にする。カエサルが征服したガリア人はその後、狩猟民族から農耕民族に転化したが、土地に定着し豊かになったガリア人には、もはやイタリアに攻め込んでくる気持ちも理由もなくなったのだ。ガリアがローマ化の優等生と言われる由縁だが、古代でも生活水準の永続的な向上には、狩猟よりも農耕が適していたことがわかる。
●建国一千年(177頁)
ロムルスによるローマの建国は紀元前753年とされているので、紀元後248年のその年は、建国一千年に当たるのだった。
●キリスト教徒(186頁)
ローマ人はキリスト教徒を、自分たちが信ずる神々とは異なる神を信じているからという理由で、弾圧したのではない。ローマ人は多神教の民である。多神教とは、神の数が多いというよりも、ちがう神を信じている人も認めるとする考え方である。
信じる者同士が他から孤立した集団を作り、その集団が反社会的な行動に出た場合は罪としたのである。
●地震の被害対策(227頁)
一、皇帝公庫からの義援金が、緊急対策として被害者に配布される。
二、災害地から最短距離にある軍団基地から派遣された軍団兵によって、インフラ関係の復旧工事が行われる。
三、元老院内に設置された特別委員会から被害地に調査団が送られ、被害の程度に応じて、収入の一割にあたる属州税��、三年から五年間は免除すると決める。
●東方担当司令官(237頁)
皇帝ガリエヌスはパルミラ人・オデナトゥスを、東方担当司令官に任命した。小アジアとシリアを分かつタウルス山脈からアラビアに至る帝国東方の、防衛の総責任者という意味である。現代ならば、シリア、パレスティーナ、レバノン、ヨルダン、イスラエルを網羅する、中近東全域に該当する。
●ゼノビア(238頁)
ゼノビアはオデナトゥスの二度目の妻だが、殺された夫の後にただちに、いまだ少年ではあったが自らの腹を痛めた息子をすえたのだ。そして、彼女自身は後見人になり、実権を手中にした。パルミラの女ゼノビアの、歴史の世界への登場でもあった。
●キリスト教会(289頁)
キリスト教会では、ローマの司教とアンティオキアの司教のどちらが上位に立つべきか
この問題の採決を求められた皇帝アウレリアヌスは、何を判断の基準にしたのか不明だが、キリスト教会ではローマの司教が最上位にくるという裁決を下したのである。
☆関連図書(既読)
「世界の歴史(2) ギリシアとローマ」村川堅太郎著、中公文庫、1974.11.10
「世界の歴史(5) ローマ帝国とキリスト教」弓削達著、河出文庫、1989.08.04
「ローマの歴史」I.モンタネッリ著、中公文庫、1979.01.10
「古代ローマ帝国の謎」阪本浩著、光文社文庫、1987.10.20
「ローマ散策」河島英昭著、岩波新書、2000.11.20
「隊商都市」ロストフツェフ著・青柳正規訳、新潮選書、1978.10.15
「パルミラ」小玉新次郎著、近藤出版社、1980.04.10
「女王の隊商都市」前嶋信次・加藤久晴著、日本テレビ、1982.04.14
☆塩野七生さんの本(既読)
「神の代理人」塩野七生著、中公文庫、1975.11.10
「黄金のローマ」塩野七生著、朝日文芸文庫、1995.01.01
「ローマ人の物語Ⅰ ローマは一日にして成らず」塩野七生著、新潮社、1992.07.07
「ローマ人の物語Ⅱ ハンニバル戦記」塩野七生著、新潮社、1993.08.07
「ローマ人の物語Ⅲ 勝者の混迷」塩野七生著、新潮社、1994.08.07
「ローマ人の物語Ⅳ ユリウス・カエサルルビコン以前」塩野七生著、新潮社、1995.09.30
「ローマ人の物語Ⅴ ユリウス・カエサルルビコン以後」塩野七生著、新潮社、1996.03.30
「ローマ人の物語Ⅵ パクス・ロマーナ」塩野七生著、新潮社、1997.07.07
「ローマ人の物語Ⅶ 悪名高き皇帝たち」塩野七生著、新潮社、1998.09.30
「ローマ人の物語Ⅷ 危機と克服」塩野七生著、新潮社、1999.09.15
「ローマ人の物語Ⅸ 賢帝の世紀」塩野七生著、新潮社、2000.09.30
「ローマ人の物語(27) すべての道はローマに通ず」 塩野七生著、新潮文庫、2006.10.01
「ローマ人の物語(28) すべての道はローマに通ず」 塩野七生著、新潮文庫、2006.10.01
「ローマ人の物語Ⅺ 終わりの始まり」塩野七生著、新潮社、2002.12.10
「ローマ人への20の質問」塩野七生著、文春新書、2000.01.20
「ローマの街角から」塩野七生著、新潮社、2000.10.30
(2016年10月12日・記)
内容紹介(amazon)
ローマはもはや、危機を糧とし発展しつづける覇者ではなくなっていた。未曾有の国難が帝国を襲い、次々と皇帝が倒される「危機の三世紀」の実相に迫る。
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ユリウス・カエサルが暗殺されてしまった。領土拡張、市民権を与え征服民の人気も獲得、政治改革断行、結果を残したのにも関わらず・・・カエサルを殺害した張本人は内々のローマ市民。既得権益が損なわれる反発からの犯行。カエサルが持っていた先を見据えたアイデアは素晴らしく、一生の中でここまで変化を具現化した/具現化しようとした人物はそうはいないだろう。が覆さるのはお膝元からということが皮肉に感じる。仕事でも家庭でもいいが、足元をしっかりしないと痛い目に合うことを示唆してくれる歴史本。
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ローマ人の物語は、塩野ファンのみならず、どなたにもお勧めしたいシリーズ。ローマの迷走振りは、現在の日本とかぶる?
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著者の文章からなる歴史物語が楽しいのはもちろん、そこに書いていないことにも思いを馳せたくなる。知的刺激を受けるとは、こういうことなんだろうな。読む幸せを感じさせてくれる本だ。
あれこれマーカーをつけたり、抜き書きしたくなる部分があった。
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浴場で有名な(こらこら)カラカラ帝から始まる混乱の時代。なんせ5年ぐらいでどんどん皇帝が死ぬ。ほとんどは暗殺なんだけど、悪政に怒った民衆の声を受けて、とかではなくて、すごくしょうもない理由で殺されるのね。そしてこの間に行われた改革(アントニウス勅令とか)も結果的には衰退に拍車をかけた、と。
社会はある程度格差がある方が健全、というのは奥が深いですな。但し個人の努力で挽回可能である必要があるけど。まあこの「ある程度」を維持するのが難しいのだけど。
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2021/11/4
カラカラ帝はローマ史上最大の公衆浴場であるカラカラ浴場を作り、ローマ市民権を全属州民に与えるアントニウス勅令を出した。パルティア戦役中に不満を持った近衛兵に殺されてしまい、近衛軍団長のマクリアヌスが皇帝になる。
マクリアヌスは北部メソポタミアを放棄することでパルティアと講和するが、セプティミウス・セウェルスの親族であるユリアメサがヘラガバルスを擁立して、カラカラの軍団兵人気を利用して帝位を奪う。ヘラガバルスは太陽神信仰の神官であり、トランスジェンダーであった人物であり民衆に殺され、アレクサンドルセウェルスがそのあとを継ぐ。セウェルスは真摯に職務に取り組んだが、パルティア戦役をなんとか乗り越え、ゲルマン戦役に取り組んだ際に兵士の不満を招き殺されてしまう。
その後は軍人皇帝時代が始まり、数年ずつ皇帝が変わり政情が安定しない上、皇帝ヴァレリアヌスの捕囚という不祥事も起きてしまう。跡を継いだヴァレリアヌスの息子であるガリエヌスは元老院議員の軍司令官への転出を禁止し、シビリアンとミリタリーの隔絶は決定的になる。
皇帝捕囚の後、ガリア帝国、パルミラ王国が独立し帝国は3分される。アウレリアヌスがこれを統合し、北方蛮族にも勝利する。彼はローマに城壁を築き、ダキアを放棄する。そんなアウレリアヌスも部下に謀殺される
その後も皇帝が兵士などに謀殺される例は続き、21年の長き治世を実現するディオクレティアヌス帝の時代に入っていく