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「伸六が八十五銭の喇叭を買えと云うのを排斥されたので怒って縁の下へ這入ってしまった。どうしても出て来ない。あい子が海苔巻を縁の下へ出すと、怒っている伸六も食いたいと見えて、パクリと食うのだそうである。そのかわり口は決して利かない。
純一が怒った時は裸で縁の下へ寝ていてこれまたどうしても出て来ない。そうして人が近寄ると泥をつかんでは投げる。」(479ページ)
大正4年の断片から。
別の箇所読んでたらたまたま眼に入って、すごいおもしろくて思わずメモ。
なんかいいなぁ。子どもたちを微笑ましく眺めている父親って感じ。
「パクリと食うのだそうである。」とか、誰に言ってんの? ってにやにやしてしまう。
「パクリと」って言い回し、地味に嬉しい。
そもそも「排斥されたので」からしておもしろい。排斥したのおまえだろ、って思う。
茶化してる。伸六、茶化された。
あと「人が近寄ると泥をつかんでは投げる。」これ最高。書庫で噴き出してしまった。想像すると凄い。シュール。しかも裸でしょ? ぜったい可笑しいよ。
笑いをこらえながら書き残している漱石先生を勝手に想像してにやにや。ちょっと息抜き。