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今年は『このミス』と同じく『葉桜の季節に君を想うということ』が1位となり、記念すべき年となった。
それ以外では石持浅海氏の『月の扉』、大倉崇裕氏の『七度狐』、京極夏彦氏の『陰摩羅鬼の瑕』、小野不由美氏の『くらのかみ』、横山秀夫氏の『第三の時効』、東野圭吾の警護死の『ゲームの名は誘拐』が『このミス』と重なっており、有栖川氏、京極氏、島田氏、西澤氏、芦辺氏、貫井氏、二階堂氏といった本格作家の名前がベスト20に見られるのがやはり特徴的。私がこのランキングを好むのは最近の『このミス』に顕著に見られる、新人作家の過大評価とベテラン作家の使い捨て傾向というのがなく、どれも正当に評価していることが素直に嬉しいからだ。ベテランがまだ精力的に魅力ある作品を送り出している事をあまり評価せず、青田買いのように新しい作家を紹介し、そしてやがて3、4年後にはランキングに相手もしないような使い捨て傾向にある『このミス』よりも遥かに良い。しかしこの年にここに『このミス』がまだ大丈夫だというのを確認した。
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今までよりもベスト20内に入った作品の解説がマニアックでなくなり、非常に理解しやすくなってきたのは良い。また海外作品も多く取り上げるようになったのも良い(解説がベスト5までなのがまだ不満)。国内復刊ミステリの動向のレポート、装幀大賞の企画はまだまだ続けて欲しいくらい良いが同人誌・映画・ジュヴナイルなどのレポートはあっても良いがこれほど長くなくてもいいです。出来れば見開き2ページで完結して欲しい。ここら辺がマニアの域を脱しない枷になっている。
でも来年以降も買いたいと思わせる紙面作りになってきたのは純粋に嬉しい。頑張れ、原書房!