「リアリスティックに観察」する著者の態度に敬意
2005/12/02 23:58
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:アラン - この投稿者のレビュー一覧を見る
真珠湾攻撃に至る、日米両国の軍・政府内部や民間人たちの約2週間にわたる動向を、丹念に綴ったドキュメンタリーである。
対英米戦争は、国民が軍に抑圧された状態で起こされたという立場をとらない。国民の多くは、開戦のニュースに接し、むしろ爽快感を味わっていたと言う。「対米英戦争開戦は、明らかにそれまでの中国との鬱陶しい戦いとは違ったものとして、多くの日本人には感じられたのである。・・・日本人の心に闘志と緊張感とをうんだのである。」と言い、数多くの文筆家が同様の記述をしていることを紹介する。
かたや、ルーズベルト陰謀説にも与しない。「この程度の文書(=マッカラムの文書)によって、日本が南進政策を決定し、戦争に引きずり込まれたと結論づけるのは、いささか甘すぎる」と断ずる。確かにルーズベルトは、日本に先制攻撃をさせる意図で、東南アジア方面に当て馬的に船舶を航行させたが、まさか日本本土からかなり距離のあるハワイに攻撃を仕掛けるとは、予想だにしていなかったと分析する。
一方で、そもそも日米両国は国力の差がありすぎるのに、開戦に至った愚かさや、開戦後に宣戦布告するという失態に至らしめた、在米大使館関係者の怠慢への怒りが切々と述べられている。
短期間に起きた出来事を、膨大な資料を整理・駆使して立体的に描きつつ、偏った考えに流されず「リアリスティックに観察」する著者の態度に敬意を表したい。
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結構な読みごたえのある本でした。
真珠湾・マレーへ向かうまでの日本の無謀な動き、アメリカの参戦への強い姿勢が書かれている。でも、スターリンやチャーチルらの動きがあまり書かれていないのが残念。
でも、この本はアメリカなら発禁ものかも知れない。
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アメリカとの戦争を選択せざるを得なかった当時の日本を理解するうえで非常に勉強になった。同氏の「昭和史」を読んだ後だったので、さらに理解しやすかったのかもしれない。
本文より、『将兵は「国のため」、「父や母のため」、「好きな人のため」、あるいは「俺がやらねば」という思いつめた心情のもとに戦い続けた。その国が、戦後、彼らを見捨てた。戦後の日本は、彼らの献身と犠牲の上にはじまりながら、戦争中のすべてのことを悪夢としてしりぞけ、無視し、あるいは愚弄し、忘却のかなたへ追いやってしまった。』
まさに、占領政策下で意図的にしりぞけたものが、戦後60年経った今、無意識に行われており、理解しようともしていない気がする。
この本を通じて一人でも多くの人が、改めて戦争を考えてほしいと思った。あとがきにも書いてあったが、戦争の本質は頭ごなしに否定するのではなく、出来る限り真実を知り、まともに向き合っていく必要があると。
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とにかく読むのが疲れました。なぜならば、出てくる人間が多いので誰が誰だかわからなくなってしまったためです。真珠湾攻撃を日本よりに書いた作品。その時の状況などの図などがあればもっとわかりやすくなってよかったのではないでしょうか。
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太平洋戦争というと、すぐに肯定・否定の意見になるが、それを言う前に最低限読んでおくべき本の一つ。実際には世界恐慌・軍縮条約・中国進出に至る一連の流れも知っておくべきだが。
この本の面白いところは、山本・井上・米内トリオの活躍ではない。それは多くの作者が書いている。
「結果を知ってからの後だし評論」ではなく、西田幾多郎から永井荷風まで、当時も今も日本の最上級のインテリ層に属する人々が、同時代的に開戦前夜の空気をどう捉え、どのような文章を残しているかが書かれている点だ。そこにこの作者・半藤氏の誠意と、日本人への限りない愛情があり、他人の言葉を借りることで、訴えたいことが逆に明らかになってくる。
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2001年に雑誌に掲載との事なんですが、内容は映画「トラトラトラ!」に酷似しています。山本五十六の苦悩、駆逐艦ウォードの艦長、P-40に乗る二人、暗号解読に関わるブラットン大佐、オパナレーダー基地の二人、等映画でお馴染みのシーンが淡々と綴られます。この本に感心するより1970年の「トラトラトラ!」に感心してしまいました。当時の日本の文化人達がどの様に開戦を受け止めたか、時代の空気はどんなものだったか、が新しい視点なんでしょうか。力作でした。
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機中で読み始めたこちらを読了。今さら真珠湾攻撃について読む意味あるかな…?と思いつつ読んだのですが、さすが半藤一利さん、大変な力作です。
運命の日の24時間を中心に、日本の軍部・閣僚はもとより、アメリカ側、また当時の知識人や民衆の様子にもかなりの紙幅を費やして可能な限り多角的に描写しています。
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真珠湾攻撃に至るまでの外交の展開がスリリング。日米間だけでなく、蒋介石の中華民国の絡みなども知らなかったことが多く面白かった。
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戦争に突き進む過程を丁寧に描いていて、何が行われていたか分かりやすい。
日米両国とも、個人の思惑を超えて、なるようにしてなってしまったと思えてならない。