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「母は無実だったのです―娘の頼みにポアロの心は動いた。事件が起きたのは16年前。若い恋人に走った高名な画家を妻が毒殺、裁判の末に獄中死したのだ。殺人犯を母に持った娘の依頼で再調査に乗り出したポアロは、過去へと時間を遡り、当時の状況を再現してゆく。関係者の錯綜した証言から紡ぎ出された真相とは」(ハヤカワ文庫版)
個人的に、数あるポアロものの中で最も気に入っている作品の1つです。もし『スタイルズ』『アクロイド』『オリエント』辺りの有名どころを読んで次に読むポアロを探しているという方がいれば、僕としては本作をおすすめしたい(※)、というくらい気に入ってます。
(※実力も無いのに通ぶっちゃってすいません。実際は本作も十分有名な部類かと思います)
過去の殺人を事実の記録と当事者達の回想から推理していくわけですが、そうした「心理的」捜査こそポアロの特に得意とするところ。灰色の脳細胞がその実力をあますところなく発揮してくれます。
ここであらすじをなぞることはしませんが、やはり最も重要なのは当事者5人による回想手記でしょう。事件への印象、そして犯人とされた女性に対しそれぞれが抱く彼女の人物像。そこにあらわれる各人の性質や相互の関係性は、同じできごとや人物(特に後者)をまるで違った風にとらえさせているわけです。
現実を見る角度、置き換える場所。これらが少し違うだけで、心の中は大きく変わります。受け取り方ひとつでまるで別物になってしまう。脆弱なものですね。人の中の真実とは。
と、思わず中二病方面に筆が進みそうになってしまいましたが、大変失礼しました。話を進めましょう。
一方でそれが他人に読ませることを前提とした手記であるという点も重要です。人が自分の感情や思考をすべて素直にさらけ出すとは限りません。まして5人の中に真犯人がいるとすれば、当然その記述は自分に都合のよいものとなるでしょう。「心理もの」と言いつつ手記や証言の中にきちんとヒントが隠されている点は、ミステリとしてのフェアさを感じさせてくれます。微妙かつ巧みな心理描写(人間心理に疎い僕が言うのも変ですが)、最後明らかになる真犯人の強烈な印象、などと合わせて本作を名作たらしめている一要因と言えるのではないでしょうか。
以上縷々述べてきましたが、本作はポアロものとして、また推理小説として、大変完成度の高い作品だと思います。僕の文章ではあまり伝わるものが無かったかもしれませんが、未読の方はぜひ一度お読みになられてみてはいかがでしょうか。おすすめ。
(大英堂ファン)
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ロマンチックな作品。ポアロの頭脳が相変わらず素晴らしい。
真犯人が裁かれない?のが、貴族のいる時代だなあと思う。
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久しぶりに再読したが、やはり面白かった。
推理小説としてももちろん面白いが、登場人物の人物像や考え方など、人間観察としても楽しめた。
どの人物にも何かしら共感するところはあり、彼らの話や手記には聞き入ってしまった。
やっぱり、面白いなあ。
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エルキュール・ポアロ・シリーズ
結婚を控えた女性カーラ・ルマンションからの依頼。16年前に父アミアスを殺したという母親カロリンの事件の真相を調べてほしいと。事件当時モデルであるエルサ・グリヤーと浮気中。友人であるフィリップ・ブレイク、フィリップの兄メレディス、夫婦と住んでいたカロリンの妹アンジェラ、アンジェラの家庭教師ウィリアムズの証言。ビールのカップに入れられた毒。メレデイスの研究室から盗難された毒。ビールの瓶にアミアスの指紋を付けていたカロリンとアンジェラに送った手紙の秘密。事件直前口論をしていたというアミアスとカロリン夫妻。裁判で無罪を主張しなかったカロリンの謎。
2011年2月6日読了
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マザーグースかな?の歌に沿って5人の証人から話を聞き、それぞれの違う視点を利用して16年前の殺人事件の真相を探ろうとするポワロの事件簿。
人って自分の興味あることしか見たり聞いたりしないってのは昔から変わらないよね。
同じ場所に居ても、同じ事件に遭遇しても印象に残っているのは全く別のことだったりして。
そういう意味では興味深く読めた。
ただ面白かったとまでは言えないかな〜〜。
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ポアロもので、最初の方に読んだので、古い版で読みました。
本書は、文字も大きくなって、電車の中で読むのには読みやすくてうれしいです。
マザーグースが題材になっているので、マープルものかと思いましたが、
ポアロものなのですね。
結論はわかりませんでしたが、同じ筋でマープルものにしたらどうなっただろうかと感じました。
アガサクリスティは、この題材をなぜマープルで仕立てなかったのだろうかと。
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灰色の脳細胞を誇るポアロの面目躍如の話。過去の殺人事件を5人の人物から語らせるという手法は「一人の人間に対して、これほど違う印象を持つものか」と考えさせてくれる。クリスティの円熟味を心ゆくまで味わえる名作だと思う。ドラマティックではないが、だからこその旨味をじっくりと何度も反芻して味わってほしい。
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肝心な当事者はおらず、残された人たちに語らせることで過去へかえっていく。そういう形で過去と現在を同時に描く作品は多々あるけれどこれは時のまたぎ方が絶妙。中でも過去にかえることによって人物が変化していく過程(特に犯人)は非常に面白い。それは人物の魅せ方がものすごく上手いからできることなんだろうなと思った。
あと、もしもクレイル氏の最後の作品が存在するのなら絶対にみに行くのにと思った。
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過去の事件をさかのぼる話。登場人物の心理描写が面白かった。最後まで犯人が分からず、わくわくしながら読めた。
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クリスティーの傑作のひとつ。
たった今読み終わったばかりですが、終わりが印象的で、余韻が残ります。
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16年前の事件の真相を調べるという構成が面白い。
最後にやっぱり「そうだったのか!」と驚かされる、クリスティーの構成の上手さにやられてしまった。
ちょっとしたきっかけで簡単に狂気に支配されてしまう、人の心の弱さを考えずにはいられない。
リアルな「人間」そのものを描く、おそろしく、悲しいテーマだと思う。
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ポワロ作品
【ストーリー】
イギリスの片田舎で画家崩れの男が殺された。それから十数年後、ポワロに捜査依頼が。
【感想】
会話を読んでいくことで登場人物の性格や当時の状況を感じることができ、話に引き込まれる。女性の逞しさ・嫉妬深さの両面の記述が光る。また、犯人の告白シーンは読んでいて背筋に寒いものを感じた。
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10年以上前の事件を、依頼人の願いで関係者に再度事件詳細を聞いたりして、ポアロが再捜査をし真実を明らかにする。クリスティ女史というのは、人物設定の巧さと物語の筋運びがうまいなぁと思う。女史の作品の中でも、佳作の部類だと思う。ただこの本を真っ先に読め、とは思わない。初期の作品を読んだ後でこの本を読んで、女史の作家としての円熟味を改めて感じるという面白さはあると思う。
しかし、ポアロというのは名探偵ですよね。ちょっとした証言の矛盾や証拠をきちんと追及していく。こういう本格推理を純粋に楽しみたい時にはクリスティとクイーン(国名シリーズ)にかぎりますね。
次は名作と名高い『予告殺人』を読みたいと思います。
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ミステリというより、ポアロがストーリーテラーを務めたラブサスペンス。
ラストシーンで鮮やかに浮かび上がる勝者と敗者の姿が余韻となって長く響く。
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犯人も被害者も既に亡くなった過去の事件、という設定が面白い。同じ事件を何度も何度もさらうので、中間はちょっと助長ぎみに感じました。が、諦めずに読めば細かいヒントがあちこちに散らばっていたことがわかって最後は気持ちいい。がんばれ。