紙の本
クリスティここにあり!というほどの名作。読まないと損をしますよ。
2009/08/20 09:24
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:あがさ - この投稿者のレビュー一覧を見る
16年前に裁判も終了し、一応の解決をみた殺人事件について再調査して欲しいという依頼を受けたポワロ。
依頼人は、カーラ・ルマルション。毒殺されたのはカーラの父。犯人として裁かれたのはカーラの母だった。夫殺しの犯人として獄中死した母は、無実だったのだとカーラは信じている。
事件の関係者は5人。
殺害されたカーラの父アミアスの親友、メレディス。
アミアスを敬愛していたメレディスの弟、フィリップ。
カーラの母カロリンの異父妹、アンジェラ。
アンジェラの家庭教師、セシリア。
そして、アミアスの愛人、エルサ。
まず、ポワロはこの5人を訪ね、この事件について手記を書いて欲しいと依頼する。既に解決した事件を蒸し返して何の意味があるのかと、誰もが不審に思いながらも、承諾する。
一人の気まぐれな芸術家が愛人を家庭に連れ込み、そして毒殺された。第一発見者である妻が、激しい嫉妬から殺害したものとして逮捕された。この事実を、5人それぞれが違う視点から捉え、振り返っている。
同じ会話を聞いていても、同じ行動を見ていても、受け取り方次第でこんなにも解釈が異なるのかと、驚かされた。
16年前の事件であるから、物的な証拠は何一つと言っていいほど残っていない。頼るべきはただ関係者の証言のみ。しかも、それが真実を述べているのかどうかの確証もない証言だ。
それをもとに、当時の警察も見つけられなかった真実をポワロが見つけ出す。最後に関係者を集めてポワロがいつもの謎解きを始めるのだが、その鮮やかさには、惚れ惚れする。
物的な証拠のみに頼らず、関係者の心理面からの捜査を重視するポワロならではのミステリだ。
もちろん最後には真犯人が明らかになる。
クリスティ作品の中でも、一、二を争うほど、哀しい結末だった。
紙の本
クリスティー中期の心理劇作品群のなかでも、殊に魅力的な傑作
2004/07/02 21:53
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:風(kaze) - この投稿者のレビュー一覧を見る
クリスティーのミステリのなかでも高く買っている本書を、久しぶりに再読しました。本書を初めて読んだのは、数年前、ミステリ好きの方が「これ、いけますよ」と紹介されているのを目にして、「ふーん。なら、いっちょ読んでみっか」と手にしたのでした。読み終えて、「うむ。これは面白いな。大詰めでの驚きもなかなかのものだったし、読後の余韻も印象に残るなあ」と、とても読みごたえを感じた作品でした。
16年前、サウス・デヴォン地方で起きた画家の毒殺事件。犯人とされた人物はすでに亡くなっているのですが、「事件をもう一度調べて欲しい。本当に母が犯人だったのか、はっきりとした真相を知りたいから」と依頼されたエルキュール・ポアロが、事件の関係者たちと会って、過去の事件を再現していきます。
そして、事件関係者の話を聞いたり、彼らの手記を読むうちに、ポアロは今さらのように、「同じものを見ても、人によってその受け止め方や印象は全く違うものだ」と感じるのでした。
心理劇をテーマにしたミステリと言っていいでしょうか。同時期に書かれたクリスティーの作品、『杉の柩』や『ホロー荘の殺人』等とともに、とても贔屓にしているこの作品。殊に、16年前に有罪として裁かれたひとりの女性の姿が、読後、鮮やかに目の前に蘇ってくる印象を受けるところ、そこに惹かれます。
事件関係者の証言とポアロの推理によって、カロリン・クレイルという女性の肖像画の断片が、最後の大詰めですっと寄り集まり、一幅の絵として出来上がったのを見るような味わい。それが、とても魅力的でした。
本書の中に、サマセット・モームの『月と六ペンス』の名前が出てきたのも、なんか嬉しかったな。これも、とても面白かった小説として忘れられません。余談ですが、『月と六ペンス』と、ウォーナー・ロウの短編「世界を騙った男」(『エドガー賞全集(下)』ハヤカワ・ミステリ文庫所収)をセットにして読むのも一興です。
なお、本作品の原題は、英題 Five Little Pigs 米題 Murder in Retrospect(1942年発表)
本文庫の解説を、千街晶之さんが書いておられます。
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これも恋愛心理小説として大好きな作品。当事者にしか分からない男女の愛情、親子の愛情がよく書かれているし、登場人物(とくに殺人犯とされる女性とその夫)の個性が独特。
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ラストが切ない。
今まで読んできたポアロシリーズの中で
私の中で1、2を争うフェイバリット作品。
もう一つのフェイバリット「ひらいたトランプ」が
「楽」の方でナンバー1であるのに対し、
こちらの「五匹の子豚」は「哀」の方でナンバー1。
ポアロが関係者を前に謎解きをする場面、
そしてある人物と会話して別れる場面、
ついに明かされた衝撃的な真相の残酷さ、
そしてそれに対し述べたポアロの厳しくも優しい、
独自の信条、哲学に従った言葉。
構成するもの一つ一つに筆者ならではの丁寧な仕事が光り、
この作品の素晴らしさを大いに楽しむことが出来たが、
読み終えた後、 まるで自分の心の中に冷たい風が
吹いているような「寂しさ」「哀しさ」を感じている。
物語は、大変美しい娘がポアロを訪問する所から始まる。
その女性はとんでもないことをポアロに依頼するのだ。
16年前に起こった自分の両親の事件の真相を探ってほしい。
本当に母親は自分を裏切って
他の女性へと走った父を殺したのかと。
娘の懸命な願いに、ポアロは過去の殺人の真相解明に乗り出す。
裁判に関わった数人の関係者とやり取りした後、
当時夫婦の周りにいた人物(=5匹の子豚)を絞り出し、
ポアロはこの5人に直接会って事件当時の話を聞き出していく。
やはり、嫉妬に狂った夫人が夫を殺したのか。
それとも良心の呵責に悩んだ夫が自ら命を絶ったのか。
それとも夫を殺した真犯人が他にもいるのか?
そこに隠された男と女の愛の真実とは何だったのか?
良質なミステリーとしてだけでなく、
ドラマチックな恋愛小説としても楽しめる作品。
ある一つの同じ出来事を見ても、それを見た人間の数だけ
「視点」があり、時に己の都合の良いように
解釈してしまうということ。
世界にたった一人しかいない、無二の存在であるはずの
人間に対しても、自分の置かれている立場や抱えている利害、
相手との関係次第でその人物がどんな人間であるかといった
印象の切り取り方は違うということ。
たとえ自分にその気はなくても、
人は無意識に真実を歪めてしまうこともあるのだということ。
そして男と女の仲は、他人の目にどう映るか関係なく、
所詮あくまでも当人達にしかわからないのだということ。
著者クリスティーが沢山のメッセージを込めた作品だと思う。
一人でも多くのファンに読んでもらいたい名作。
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母は無実だったのです―娘の頼みにポアロの心は動いた。事件が起きたのは16年前。若い恋人に走った高名な画家を妻が毒殺、裁判の末に獄中死したのだ。殺人犯を母に持った娘の依頼で再調査に乗り出したポアロは、過去へと時間を遡り、当時の状況を再現してゆく。関係者の錯綜した証言から紡ぎ出された真相とは。
【感想】
http://blog.livedoor.jp/nahomaru/archives/50724034.html
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これ最高におもしろかったぁ!
内容としては、過去起こった殺人事件を再びその事件の関係者の証言をもとに、ポアロが検証する、というものなんだけど
これはさすがポアロだぁ!!て感じで!
ちょっとだけ反復されている内容が煩わしいんだけど、それにもきっちり理由があったりして♪
名作の1つに数えてもいいと思います★
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アガサ・クリスティーの作品は好きなんです。何故か。それは全体的にフェアであるように思うからです。犯人が読んでいる我々にもわかるようになっている。でも、わからない!最後の最後に「あ、そっか!」とさせる腕は凄いなぁと思います。そんなクリスティーの作品の中で、今のところ一番フェアだと思う作品が、これです。「あ、そっか」ってなります。なってください。
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母は無実だったのです―娘の頼みにポアロの心は動いた。事件が起きたのは16年前。若い恋人に走った高名な画家を妻が毒殺、裁判の末に獄中死したのだ。殺人犯を母に持った娘の依頼で再調査に乗り出したポアロは、過去へと時間を遡り、当時の状況を再現してゆく。関係者の錯綜した証言から紡ぎ出された真相とは。
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ドラマのポアロを映像で見たのか自分の妄想劇場なのか分からない映像が浮んできて困った。
16,7年たって掘り返される過去の殺人事件。それをポアロが見事に解決。小粒ながらも秀作の部類ではないだろうか。「そして誰も〜」「ゼロ時間へ」などを書いた頃の油ののった時期の作品の一つ。
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タイトルを見て「?」と思って手に取った。
読了後、“完全犯罪”に薄ら恐怖すら感じた。
こんな言い方は陳腐だけど
私はこの作品に『他に類を見ないほどの人間味』を感じている。
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16年前殺人事件、判決も終わっている事件。「母は無実だったのです」と言う娘の頼みにポアロは、この事件に対して、関係者からその時の状況を検証するのです。16年前のこと、若い恋人に走った高名な画家を妻が毒殺し、裁判の末に獄中死したのです。
インタビューと手記から浮かび上がる真実、なかなか面白い設定の作品で、クリスティ再読シリーズの中ではかなり面白かったです。
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面白かったー!相変わらず登場人物が個性豊かで演劇を観ているような気分になるんだけど、今回は嫉妬や愛情の話が絡んでたのでその個性の強さが半端無かったです。芯が強く描かれてるからこそ恐ろしい。クリスティの描く女性たちがとても好きです。
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中期の力作。
妻が画家を殺したといわれる事件の真相は?
遺された娘が大人になってから、ポワロに調査を依頼します。
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「いろいろな大人らしい感情です——人に対する哀れみとか、同情とか、理解の感情です。あなたが知っているのは愛と憎しみだけなのです」
16年前の事件をポアロが紐解く。
しかも、心理的な面から。
うぅーーん、ポアロって名探偵だなぁ、と唸らせる。
しかも、凄い展開。
まさかの展開。
今回もクリスティらしい(?)勧善懲悪。
悪いやつが、犯人なのだ。
それにしても、ポアロってすげー。
外国人の名前にも慣れてきて、あっという間に読めてしまった。
一体誰が犯人なのか、真実はなんなのか、ページを捲る手が止まらないとはまさにこのこと。
一生懸命読みました。
【4/16読了・初読・市立図書館】
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過去の殺人、容疑者を一人一人たずね歩く、ワクワクする構成。
この真相、殺人が行われた現場、そして残った作品。
いいよいいよー、読み終わって大満足の一冊。